2017 Fiscal Year Research-status Report
若年者の性腺被ばくに由来する妊孕性の異常の解析と予防法の開発
Project/Area Number |
16K10386
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宇野 隆 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (30302540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 未歩 (渡辺未歩) 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50568665)
金澤 亜希 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (50738979) [Withdrawn]
齋藤 正好 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任研究員 (80118885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 性腺 / 放射線被ばく / 不妊 / 妊孕性 / 担子菌抽出物 |
Outline of Annual Research Achievements |
低線量放射線被ばくが若年者の性成熟過程、もしくは成長後の妊孕性・出産および新生児の発育成長におよぼす影響について基礎的な解析を実施する目的で計画した。ヒトに対する放射線被ばくの影響は、我が国に投下された原爆被害者の疫学調査や放射線生物学の研究により得られた多くの科学的知見の集積から検討され、線量限度が健康管理に用いられている。 ICRPでは妊娠初期の放射線被ばくによって影響をおよぼす最低線量(しきい線量)は0.1Gyであり、生殖腺に対する確定的影響のしきい線量 (ICRP Publ.60) は男子の永久不妊で3.5-6.0Gy、女子では0.65-1.5Gyとしている。 小児がんの放射線治療で生殖組織(正常組織)が最も被ばくする疾患は血液がんであり、骨髄移植の前処置として全身照射が実施され、総線量が12Gyを超える照射が骨髄移植の前処置として実施されている。 最近ではミニ移植の概念から小児においても免疫抑制と晩期の放射線障害の軽減を目的とした低線量(総線量2-4Gy)照射が実施されている。この骨髄移植前処置としての放射線照射総線量2-4Gyは、男子の一時不妊(0.1Gy以上)から永久不妊(3.5-6.0Gy)を発症する線量である。 本研究では、未成熟マウスの低線量放射線被ばくによる性腺に対する障害について、特に雄マウスの精子造成、妊孕性および出産後の新生児の発育に対する異常の発生について基礎的な研究を実施し、さらに当研究室にて放射線防護作用が研究されている「培養担子菌抽出物質」が抗酸化剤として放射線障害を防御および修復する可能性を検討した。これまでに照射時に性成熟に達した8週齢の雄マウスに対して性腺未成熟4週齢マウスで放射線障害が強く発現され、「培養担子菌抽出物質」添加飼料の給餌により障害の軽減が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、性腺未成熟雄マウスの生殖腺に対する線量を検討する予備実験から実施した。性腺未成熟として生後4週齢の雄マウスを使用し、1.5-4.5Gyの全身照射を実施して照射8週間後に正常雌マウスと10日間の同居を実施して雌マウスの妊娠率、産仔数、妊娠日数について検討した。妊娠率は非照射マウスの100%に対して1.5-4.5Gyでは70-80%と低下し、産仔数では非照射マウス1匹で平均12.5匹の出産数であり、3.0および4.5Gyでは、平均8.6匹の出産数であった。妊娠日数は各群とも22-23日で変化は認められなかった。4週齢雄マウスの正常雌マウスに対する妊孕性に対する障害は4.5Gyの全身照射マウスで明らかに発現した。 平成29年度は、4週齢の雄マウスに対する4.5Gy全身照射による妊孕性の変化を当研究室にて放射線防護効果が研究されている培養担子菌抽出物質(以下:菌抽出物)を含む飼料を給餌して検討した。4.5Gy照射8週後(12週齢)で正常雌と同居させた結果、照射単独群(非投与)に対して菌抽出物投与雌マウス群では妊娠率および新生仔育成率(生存新生仔/子宮の着床痕数)の上昇が認められた。 性成熟した8週齢の雄マウスに4.5Gy全身照射を実施し、照射8週後に正常雌と同居させた結果、照射マウスの妊娠率は100%であり、産仔数は14-15匹で非照射正常マウスと同等の出産数であった。また、照射後菌抽出物添加飼料を給餌した雄マウスでは、同居雌マウスの産仔数が照射単独マウスに対して有意な増加傾向が認められた。 これらの結果は、生後4週齢の性腺未成熟マウスの被ばくが、性成熟に達した8週齢マウスの被ばくより、強い影響(放射線障害)を受ける可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度(最終年度)はこれまでに検討した実験結果をもとにエックス線全身照射を実施した性腺が未成熟な雄マウス(4週齢)と性成熟に達した雄マウス(8週齢)の被ばくによる妊孕性に対する障害を正常雌マウスと比較検討する。 マウスの1世代(分娩後・新生仔から成獣、交尾妊娠、次世代の出産までを11-12週間とする。すなわち交配(8週齢)から分娩までを3週間とし、新生児の授乳と育成に4週間、さらに性成熟に達するまで4週間の育成期間(8週齢)である。 本研究では離乳期直後の生後4週齢を若年期(性腺未成熟期)とし、8週齢を(性的成熟期)として照射を計画している。 平成28-29年度の結果を解析して以下の項目について研究を推進する。 1.若年期から成熟期(4-12週齢)の雄マウスの精子数を精巣上体から算出する。2.若年期の精子数に対する照射の影響とその回復過程に「培養担子菌抽出物質」添加飼料が関与する可能性について検討する。3.照射による精子数の減少と妊孕性について検討する。4.照射雄マウスと正常雌マウスを同居させて出産した新生仔を初代として3世代におよぶ出産仔の発育状態、奇形や行動異常の有無、体重の変動等を正常雄マウスと比較検討する。
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