2016 Fiscal Year Research-status Report
一般直線2次モデルを用いて不均一な感受性を持つ癌の最適な分割照射を解明する
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16K10405
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
関根 広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40187852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線治療 / 分割照射 / 線量分割時間関係 / LQモデル / コンピューターシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の様々な内因性および外因性因子によって癌化した1個の細胞は、倍加して増殖する。原理的にはモノクローナルな増殖のはずであるが、近年の分子生物学を利用した解析により、癌組織の様々な部位の遺伝子検査を行うと、モノクローナルな増殖でないことが発見された。遺伝子配列の比較から、分裂初期に突然変異を繰り返してサブクローンが発現することが示唆された。ちょうど宇宙の誕生の理論であるBig Bang Modelに類似していると考えて、この様式で癌組織が増殖するとして癌のBig Bang Modelが提唱されている。放射線治療を行った後の再発形式をみると、均等な線量が照射されているにも関わらず、均一な線量が照射された一部から再発することを観察する。このことは、腫瘍を構成している細胞の放射線感受性が不均一なサブクローンから構成されている可能性が高い。そこで、1個の癌細胞が分裂増殖する初期の段階で突然変異を起こして別のサブクローンが発生して増殖するモデルを作成することを試みた。また、原発性の腫瘍が増大すると、形態学的に類球形でなく不定形を作ることから、Big Bang Modelに従い増殖する腫瘍の3次元空間上での広がりを明示的に表すことを試みた。 肉眼的に診断できる大きさまで増殖した腫瘍へ放射線治療(分割照射)を行ったときの線量-分割-時間関係を経時的に示すために、すでに提案している一般化直線2次モデル(平成23年度 基盤研究(C) 23500369)を用いて局所制御の有無を、多数の腫瘍を発生させて検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Big Bang Modelに従って増殖する腫瘍モデルの作成はMathematica ver10とver11を用いて行った。始めに発生した癌細胞がある倍加時間(dt)ごとに増殖するとした。倍加時間は培養細胞の倍加時間ではなく、人癌の経過から類推した倍加時間の報告を集め、妥当な値を平均(40日)とするポアソン分布に従う値をランダムに発生させた。倍加時間に分裂する際に、突然変異を起こすチャンスを与えた。始めのクローンは突然変異を起こすが、突然変異を起こして誕生したサブクローンは変異を起こさないと仮定した。増殖過程では各サブクローンの放射線感受性は既知の実験腫瘍の放射線感受性をサブクローンが発生するときにランダムに付与した。用いた実験腫瘍は7種類でSQ5, SCC13, SCC61, SQ20B, DLD1, DU145, HFIIIIである。 腫瘍の増殖曲線を片対数グラフで表すことを試みた。また、人体内で増殖する腫瘍は、形態学的には必ずしも球形を示すのではなく不定形に広がっていることが多い。そこで、一個の癌細胞の増殖は3次元正規分布を示すと仮定し、突然変異で発生した腫瘍も正規分布を示すと仮定して、3次元空間での腫瘍の増殖の様子を明示的に表すことを試みた。 このプログラムは計算結果の再計算(refresh)をさせると、ランダム関数により新たな腫瘍を発生させることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
分割照射によって一般直線2次モデル(GLQモデル)に従い細胞死を遂げる腫瘍が制御できるか再発するかは、照射後に致死する細胞と致死を免れて増殖する細胞の極小値が1より小さいか大きいかによる。そこで、GLQモデルの関数の極小値を求めて、1未満になれば制御として、1以上では再発として500個の腫瘍を発生させて制御率を求める。分割照射の分割様式を変えて同様の計算をさせて制御率を求めて、標準治療と同等の分割様式を求めることを予定している。 実際の癌細胞が発生してから肉眼的に診断可能な大きさになるまでの時間は推定でしかない。そのため、GLQモデルで照射を開始する時間を、解析では700日とした。これは、検診で発見される場合に前の年の画像では写っていなかったことを散見するため、このように設定した。それでは、画像で写る腫瘍はどのくらいの細胞数で構成されているかも重要であるが、病理の研究で単位体積中の腫瘍細胞数を計測した報告はない。放射線治療では指数的に細胞を死滅させることが、培養細胞の実験では証明されているが、生体内の腫瘍では検証することは困難である。そこで、単位体積当たりの癌細胞数を測定することが必要と考え、今後は病理が標本を用いて、腫瘍細胞数を計測することを試みる。
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Causes of Carryover |
2名の人件費に充てるため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
コンピューターシミュレーションの計算のために1名。病理標本の癌細胞数の計測のために1名。以上2名を通年で雇用。
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Remarks |
本研究に至る発想の経緯と、研究概要を日本語と英語で発表しています。特に、本研究はMathematicaを用いた動的シミュレーションを行っており、紙媒体では説明が難しいことと、直感的に理解するのも困難と考え、ホームページで公開しています。
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Research Products
(2 results)