2018 Fiscal Year Research-status Report
一般直線2次モデルを用いて不均一な感受性を持つ癌の最適な分割照射を解明する
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16K10405
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
関根 広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40187852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射線治療 / 分割照射 / LQモデル / 腫瘍のビッグバンモデル / 放射線感受性 / 局所制御率 / Total Cell Kill |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍が単クローン性に増殖した場合、我々が用いてきた7種類の培養細胞に60Gy/30回/6週の照射を行うと、最も放射線感受性の高いHFLIIIの場合生残率は1.42x10^(-17)%であり、最も放射線抵抗性のSQ20Bの場合7.10x10^(-3)%である。 近年、腫瘍の増殖はビッグバンモデルに従い発生の初期に突然変異を繰り返し遺伝子的にヘテロクローンとなることが分かってきた。そこで、ビッグバンモデルに従い増殖するシミュレーションモデルを作成した。新たなサブクローンに対して、我々が用いてきた7種類の培養細胞の放射線感受性を自動的にランダムに付与するようにした。 前治療無く切除された乳癌組織の単位体積当たりの腫瘍細胞数を測定することを行った。72症例の測定を行い最低値113,321個で最大値1.2x10^6、平均値は457,029個であった。後の研究では1mm^3中の腫瘍細胞数をこの平均値を用いた。腫瘍が球状に増殖したと仮定して、ある大きさに達した時に60Gy/30回/6週を開始してGLQ modelに従って細胞死を遂げた時の局所制御率を5000個の腫瘍で検討した。その結果、腫瘍径が1cm以下、1cm~2cm以下、2cm~3cm以下、3cm~4cm以下、4cm~5cm以下、5cmより大で、各々17.5%, 18.62%, 9.50%, 5.31%, 4.04%, 4.28%と全体に低い局所制御率であった。そこで、1,000個未満になれば局所制御が得られるとして同様の解析を行ったところ、それぞれ66.43%, 67.96%, 63.42%, 43.43%, 32.0%, 26.1%と臨床での局所制御率に近い値が得られた。以上の結果から、放射線治療の局所制御にはTotal Cell Killが必要条件ではない可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌の初期発生でのビッグバンモデルと放射線感受性の不均一性を結合させたシミュレーションモデルを完成させた。このモデルに従って増殖する腫瘍に対して分割照射をしたときの線量生存率関係から、実際に局所制御が得られるかは、照射時の腫瘍細胞数(腫瘍の大きさ)に依存することがわかる。放射線治療を行う患者ではその時の腫瘍細胞数は分からない。 そこで、本研究では、前治療無く手術単独で切除された乳癌症例を材料として、単位体積当たりの腫瘍細胞数を計測した。72例の症例で測定できた。最小値と最大値で10倍の開きがあったが、平均値を用いて、後のシミュレーションに用いることにした。 乳癌は放射線感受性が中等度であるが、照射が効きやすい場合と、効きにくい場合があるため、ビッグバンモデルでの腫瘍細胞の出現頻度は我々の用いた7種類の培養細胞が均等に割り振られるようなランダム関数を用いて行った。 その結果、想像していたように、放射線治療にTotal cell killが必要と仮定すると、余りに低い局所制御率となることが推定できた。そこで、どの程度の生残細胞でも局所制御できるかについて同様のシミュレーションを行い検討したところ、1,000細胞程度の残存でも局所制御が得られる可能性があることがわかった。近年注目されている局所の腫瘍免疫寛容性が放射線治療により解除されていることも考えられる結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、放射線感受性の中等度の乳癌を対象に検討してきたが、放射線治療の高感受性である悪性リンパ腫と放射線抵抗性である脳腫瘍(悪性膠芽腫)について、検討する予定である。 腫瘍細胞の発生確率を、乳癌の場合は均等分布のランダム関数で発生させたが、悪性リンパ腫および悪性膠芽腫では初期に発生するクローンの放射線感受性に重み付けをして、正規分布又はガンマ関数となるランダム関数を用いて発生させる。 実際の腫瘍細胞数は、腫瘍によって異なると考えられるので、悪性リンパ腫および悪性膠芽腫の組織標本を材料として単位体積当たりの腫瘍細胞数を測定する。測定値の中央値または平均値を用いて分割照射のGLQモデルを用いて局所制御率を計算する。 一連の手法はすでに確立しているので、本年度中に不均一な放射線感受性を持つ腫瘍の分割照射の線量効果関係を明らかにできると考えている。
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Causes of Carryover |
研究代表者は昨年度病気療養のため、数ヶ月研究のできない期間が生じた。 いくつかの実際の腫瘍細胞の計測と、その結果得られた結果に基づき、シミュレーションモデルを作成して、研究補助者に腫瘍を発生させてもらうことができた。5,000個の腫瘍を発生させて、GLQモデルで線量効果関係を計算させるが、最小値を求めるプルグラムは収束できない場合もあるため、同時に5,000個を発生させることができず、1個ずつ行う作業である。これを3セット、合計15,000個の腫瘍について行ってもらった。 このために人件費の支出と、用いているソフトウエアの定期的なバージョンアップが研究費の主な支出で、病気療養のため予定の学会出張を取りやめたため、次年度の繰越金が発生した。 放射線感受性の異なる腫瘍を用いて同様の検討を行うことで、網羅的に放射線感受性の不均一な腫瘍に対する分割照射の線量効果関係を明らかにすることができると考えて、次年度も研究を行うこととしている。
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Remarks |
本研究は国外でのグループが主流となっている。そのため、このHPの国外からのアクセスを期待して英文のページも作成した。タイトルは"To clarify the optimum fractionated radiotherapy of cancer with non-uniform radiosensitivity using the general linear quadratic model".
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