2016 Fiscal Year Research-status Report
高付加価値放射線治療を実現する金ナノ粒子増感剤の開発
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16K10413
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三澤 雅樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (60358083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布施 拓 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (10712648)
松本 孔貴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70510395)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 放射線治療 / 増感剤 / 活性酸素 / リポソーム / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン脂質とコレステロールを用いて、直径150-180nmのリポソームをベンガム法で合成した。抗EGFR抗体のヒンジ部のSS結合還元でSH基を露出させ、NHSエステルとマレイミド基をもつヘテロ架橋剤でリン脂質のアミノ基と還元抗体のSH基を接合した。この抗体リポソームを孔径200nmのエクストルーダで処理し、8000g、10分の遠心で凝集体を除去し、粒径を整えた。なお、IgG共通のSS結合開裂による還元法を使うため、抗EpCAM、抗MUC1抗体等のリポソーム接合も可能である。次に、塩化金水溶液を撹拌沸騰させ、クエン酸還元剤を添加して、直径20-30nmの金ナノ粒子を合成した。この金コロイドをリポソーム被覆フラスコに添加して、リポソーム内に金ナノ粒子を封入した。SEM/TEM観察で、リポソーム1個あたり2-3個の金ナノ粒子が含有されていることを確認した。金ナノ粒子、リポソームの粒子径およびゼータ電位をDLS測定し、平均粒径が各々26nmと182nm、ゼータ電位が-44mVと-3.5mVであることを確認した。細胞内小器官への集積を強化するため、TATペプチドを付加した金ナノ粒子を合成した。TATはエンドソームとリン脂質膜の融合により、エンドソーム脱出を促進すると考えられる。金ナノ粒子にPEG鎖とアジド基を接合し、FITC標識したアルキン鎖ペプチドを結合させた。ペプチドをNLS、MTSに変更することも可能で、最適な標的指向性を選択できる。リポソームにローダミンB、金ナノ粒子にFITCを標識し、培養時間を1~8時間、金コロイド濃度を1.0~3.0mg/mlで変化させ、EGFR発現するHeLa細胞およびNB1RGB正常繊維芽細胞に投与して、細胞内取り込みを蛍光顕微鏡で観察した。HeLa細胞への集積が高く、細胞内小胞にリポソームの集積、細胞質内への金ナノ粒子拡散が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は、1)ペプチド結合金ナノ粒子合成、2)抗体リポソーム合成、3)ナノ粒子特性評価、4)腫瘍細胞への送達評価を計画し、ほぼ全ての項目を達成することができた。今回ペプチドとしてTATを使用し合成方法を確認した。塩基数の多いNLS、MTS配列についても適用可能な技術となる。抗体リポソームもIgG共通の部位を結合に利用したので、他の抗体にも適用可能である。物理化学特性として、DLSによる粒子サイズ分布、ゼータ電位のほか、質量濃度と金ナノ粒子特有の表面プラズモン吸光度を評価した。また、還元抗体の抗原親和性は、水晶マイクロバランスで評価した。細胞内のリポソームおよび金ナノ粒子は、レーザー共焦点顕微鏡で局在を確認した。これらの分析や合成は、外部の大学の専門家の助言を得て実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、H28で合成した金ナノ粒子含有抗体リポソームを用いて、実施計画に沿ってリニアックX線および陽子線ビームを照射し、活性酸素発生を評価する。また、細胞内外の活性酸素種と発生量に対する溶存酸素、pH環境の影響について評価する。金ナノ粒子は、高エネルギー陽子線で198Au等の放射化物が生成するので、ガンマ線線量も考慮に入れた評価を行う。これによって、X線治療と陽子線治療における金ナノ粒子増感剤の効果に関する新たな知見が得られると期待する。
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Causes of Carryover |
X線照射実験部品の自作および予定していたナノ粒子特性委託試験を、所内の分析機器利用で賄ったため、残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度の実施計画に加えて、H28年度確立した方法により、異なるペプチド結合金ナノ粒子および異なる抗体リポソームを合成し、合成技術の適用範囲拡大を確認する試験に使用する。
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Research Products
(7 results)