2017 Fiscal Year Research-status Report
高付加価値放射線治療を実現する金ナノ粒子増感剤の開発
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16K10413
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三澤 雅樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60358083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布施 拓 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (10712648)
松本 孔貴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70510395)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 放射線治療 / 増感剤 / 活性酸素 / リポソーム / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
陽子線照射で放射化される金ナノ粒子からのガンマ線に対し、Ge検出器の検出効率を求めたところ、1.33MeVから0.276MeVの範囲で、1.7%から9.3%であった。金1mgを含む金コロイド溶液に200MeV、10Gyの陽子線を照射した結果、198Au等の生成同位体ピークは検出限界以下であり、放射能は約1時間でBackgroundレベルに低下することを確認した。X線リニアック装置のスペクトルをEGS5コードで計算した結果、1MeV以下の低エネルギーフォトンと電子成分が大きいことが分かった。 治療用X線および陽子線照射下(ともに10Gy)で、金ナノ粒子の活性酸素発生を調べた結果、X線のほうが陽子線に比べて大きいことがわかった。また、APF、HPF試薬の特異性から、放射線照射ではヒドロキシラジカル、スーパーオキシドの発生が多く、一重項酸素の発生は少ない。X線照射前後で、細胞内の酸化ストレス、スーパーオキシド、NO発生を活性酸素蛍光試薬で測定したところ、細胞質内で酸化ストレス上昇及びNO産生が認められた。また、核近傍でのスーパーオキシド生成も認められた。 金ナノ粒子をリポソームで包含することで、培養液中の分散性や安定性が向上し、細胞取り込みに寄与ことがわかった。また、リポソームに包含された金ナノ粒子の活性酸素発生が低い理由として、溶媒との接触が制限されること、脂質による活性酸素トラップなどが考えられる。 蛍光標識した金ナノ粒子リポソームをHeLa細胞に投与し、レーザー顕微鏡で観察した結果、細胞質内に金ナノ粒子が拡散し、NLSペプチド付加した金ナノ粒子が核近傍に集積していた。また、その一部は核内に移行していると推察される。ICP-MS質量分析で金の質量を定量した結果から、数千個オーダーの金ナノ粒子が取り込まれたと推察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は、1)X線、陽子線ビーム特性の解析、2)細胞内外の活性酸素計測を計画し、これらを遂行することができた。使用予定のリニアック装置不具合のため、別の装置を手配して実験を行い、ビーム特性をシミュレーションで評価した。陽子線照射に先立ち、施設スタッフの協力を得て、検出器校正とスペクトル測定を実施し、安全性を確認できた。ペプチド設計、リポソーム合成、抗体接合、表面修飾等について、参加機関以外の外部専門家から助言を得て実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、腫瘍細胞生存率評価と酸化ストレス測定を中心に実施する。増感治療が特に有効となるびまん性、浸潤性のがん細胞に対する生存率評価と酸化ストレス測定を行う。粒子径、濃度、種類の異なる抗体リポソーム金ナノ粒子複合体を投与し、放射線照射後の生存率と、脂質過酸化等の細胞膜損傷、DNA鎖切断等の核損傷を調べ、動物試験につながるデータを取得する。
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Causes of Carryover |
予定していた外部委託ナノ粒子評価試験を、所内の分析装置を借用して実施したため、残金が生じた。H30年度の実施計画に加えて、抗体リポソームの脂質成分を最適化する試験に使用する。
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Research Products
(8 results)