2017 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖発現解析による腎移植後慢性拒絶反応の新規診断法の開発
Project/Area Number |
16K10420
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高野 恵輔 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (70615038)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腎移植 / リンパ球 / レクチン / 抗体関連型拒絶反応 / 糖鎖 / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は腎移植患者のリンパ球表面の糖鎖発現解析を行い、全く新しい拒絶反応を予測する糖鎖バイオマーカーを同定し、さらに拒絶反応の治療への応用を検討することを目的とする。実験の概要は1. 腎移植患者の末梢血リンパ球単離 2. 高密度レクチンマイクロアレイを用いた網羅的な移植前後における1.で分離したリンパ球の糖鎖修飾解析 3. 個別レクチンの移植腎生検組織における拒絶反応有り無しの糖鎖発現変化の解析 4. 低コストで迅速診断が可能な新しい拒絶反応診断用新規レクチンアレイの開発 5. in vitroでのレクチンアレイによる層別化による免疫抑制薬の治療効果の検討を行う。 1. 腎移植後患者の末梢血からのリンパ球の単離本研究の同意を得た腎移植後で外来通院中の患者および、今後腎移植を予定している患者から末梢血を採取してリンパ球を単離。2. Group1~4 の患者の高密度レクチンマイクロアレイを用いた網羅的な糖鎖修飾解析を行い、データを評価検討し腎移植後の慢性拒絶反応の診断に有用と思われるレクチンを数個に絞り込んだ。3. 移植腎生検組織を用いてレクチン染色を行い、個別の糖鎖発現を組織上で確認した。4. 明らかになった糖鎖修飾の発現プロファイリングから、スクリーニング診断および拒絶反応ハイリスク診断に有用と思われるレクチンを数個に厳選し、低コストでのスクリーニング検査を実現した。5. in vitro で特異的レクチンにより層別化したヒトリンパ球細胞に各種免疫抑制剤の投与を行い、拒絶反応に対しての治療効果を比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に、筑波大学附属病院およびマイクロアレイによる解析で提携している産業総合研究所の倫理委員会の承認を受けることができた。腎移植後患者をGroup1 (腎移植前)、Group2 (腎移植後、腎機能安定)、Group 3 (腎移植後、腎機能安定、腎生検で慢性活動性抗体関連型拒絶なし)、Group 3 (腎移植後、腎機能安定、腎生検で慢性活動性抗体関連型拒絶あり)、Group 4 (腎移植後、腎機能悪化、慢性活動性抗体関連型拒絶あり)に分類した。当院で平成28,29年度に行われた腎移植レシピエントは20名おり、それぞれのレシピエントに対し腎移植前の血液サンプルをGroup1として入手した。現時点では全例、術後腎機能は安定していることからGroup2に相当し、同じく血液サンプルを入手し、保存している。産総研の協力の下、産総研が独自に開発した96 種類のレクチンで糖鎖全体の約80%を網羅的に解析可能な高密度レクチンマイクロアレイを用いて網羅的な糖鎖修飾解析を行い、高密度レクチンマイクロアレイの精度確認を行った。現時点で、拒絶反応を認めた症例がないため、腎移植術後の糖鎖の変化について調べた。高密度レクチンマイクロアレイで得られたデータはデータマイニングソフトウェアであるGeneSpring®を用いて解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28.29年に入手したGroup 1、Group 2のサンプルを高密度レクチンマイクロアレイを用いて網羅的な糖鎖修飾解析を行うことを予定している。この結果を、筑波大学磯田研究室にGeneSpring®を用いて解析する。レクチン染色に関しては96 種類それぞれ確立された染色法はなく、我々が先行研究で行っている手法に基づいて統一して行い、評価する予定である。現時点では拒絶反応を呈した症例がないため、移植前後での糖鎖変化についての解析を行う。引き続き、拒絶反応を呈した症例があった場合には、そのサンプルを元に、高密度レクチンマイクロアレイで明らかとした糖鎖修飾の発現プロファイリングからスクリーニング診断および拒絶反応ハイリスク診断に有用と思われるレクチンを数個に厳選する。これらレクチンの組み合わせたマイクロチップを作成し、スクリーニング検査を確立することを目指す。現時点での問題点として、症例数が少ないために、レクチンマイクロアレイで出てきた結果に対する統計的な有意差をつけることが難しいことが予想される。
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Causes of Carryover |
(理由)平成30年度も腎移植を行う予定であり、今後も症例が増える予定である。さらなる患者検体サンプルは採取および保存をする。高密度レクチンマイクロアレイによる本試験およびこの結果得られるデータの解析を筑波大学磯田研究室にGeneSpring®で行い、糖鎖修飾の発現プロファイリングを検討する。高密度レクチンマイクロアレイおよび試薬により追加の費用が発生する。レクチンによる免疫染色およびマイクロチップの作成に費用が発生する。さらに、免疫抑制剤の効果判定を行うにあたり、免疫抑制剤および新たなマイクロアレイの費用が発生するため。 (使用計画)収集したサンプルを高密度レクチンマイクロアレイを用いて網羅的な糖鎖修飾解析を行い、高密度レクチンマイクロアレイで明らかになった糖鎖修飾の発現プロファイリングからスクリーニング診断および拒絶反応診断に有用と思われるレクチンを厳選し、これらレクチンの組み合わせたマイクロチップを作成しスクリーニング検査を確立することを計画している。
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