2017 Fiscal Year Research-status Report
肝移植における虚血再灌流障害に対する水素水の効果と細胞動態イメージング評価
Project/Area Number |
16K10432
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
阪本 靖介 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 臓器移植センター, 医長 (00378689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 裕紀洋 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (50193628)
梨井 康 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 移植免疫研究室, 室長 (60321890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝移植 / 水素 / 虚血再灌流障害 / ラット / 2光子励起レーザー顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
1997年の脳死法案施行後より脳死臓器提供数が増加傾向にあるものの、脳死肝移植数はまだ十分とは言えず、生体肝移植に頼らざるを得ないのが現状である。また、脳死肝移植に至らなかった脳死肝臓は14%あまりに達するとの報告もあり、これらの脳死肝臓をより良い状態へと回復し肝臓移植術へと繋げる努力が急務である。なかでも、移植臓器に対する障害の一つである虚血再灌流障害を抑制する新たな手法が開発されれば、より多様なグラフトの選択につながり、脳死・生体肝移植ドナー候補の増加、またさらなる治療成績の向上が期待できると考えられる。本研究では他臓器領域での虚血再灌流障害に対する有効性が示されている水素の効果を肝臓移植領域にも応用できないかと考え、水素含有保存液を用いたラット肝移植モデルでの実験を開始した。 平成28年度は①ラットの肝移植モデル作成の手技確立、②モデルを用いた水素含有保存液使用による虚血再灌流障害に対する効果の検討、の2点に着手した。①に関してはカフ法での顕微鏡下手術手技を確立させ長期生存を得、実験モデルとして使用可能となった。②に関しては正常肝グラフトを用い保存に高濃度水素発生装置を使用した水素使用群とコントロール群での移植後血液検査、免疫組織学素的評価、またPCR分析を加え虚血再灌流障害の比較検討を行った。その結果、水素使用群で有意に虚血再灌流障害が抑制されていることが分かった。 平成29年度は複数の実験者による肝移植モデル作成の手技を確立させることと、脂肪肝疾患モデルでの水素含有保存液の有効性の検討を行った。肝移植モデル作成に関しては、他実験者による顕微鏡下での手術手技を確立させることができた。ラット脂肪肝モデル作製を確立させ、虚血再灌流障害に対する効果の検討を行ったが、水素使用群の優位性を示す結果は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット肝移植モデル作成がスムーズに進行し、また前年度には複数モデル作成者での実験が可能な状況となった。水素含有保存液を使用した実験を開始した。正常肝グラフトを使用した実験においては虚血再潅流障害に対する有効性を示すことができ、国際学会で発表を行った。脂肪肝モデルでは水素保存液の優位性を示す結果は得られず、今後別モデルでの実験を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、複数の実験者で他の疾患モデルや実験モデルでの水素含有保存液の有効性検討を行っていく。また、2光子励起レーザー顕微鏡を用いた虚血再灌流時の血球動態評価をラット肝移植モデルに対して用い、水素の効果を調査するのみでなく、別の側面からの虚血再灌流障害の評価・解析も行い、メカニズムのさらなる病態解明を行う予定である。 また現在までに得られている研究成果を論文化し、国際誌へ発表する予定である。 次年度以降も計画に沿って実験をすすめ、薬剤や用品の購入や、論文発表また海外における学会での発表での予算使用を予定している。
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Causes of Carryover |
当初、当該年度に2光子励起レーザー顕微鏡を用いた虚血再灌流時の血球動態評価をラット肝移植モデルに対して助成金を用いる予定であったが、熊本地震の影響にて熊本大学が所有する2光子励起レーザー顕微鏡が破損したために行うことが不可能となった。翌年度は2光子励起レーザー顕微鏡のみでなく、別の側面からの虚血再灌流障害の評価・解析も行い、メカニズムのさらなる病態解明を行う予定である。 また現在までに得られている研究成果を論文化し、国際誌へ発表する予定である。
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