2017 Fiscal Year Research-status Report
臓器移植における虚血再灌流障害に関わる免疫細胞の解析とその制御戦略
Project/Area Number |
16K10441
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
奥見 雅由 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (60512978)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 / フラクタルカイン / 拒絶反応 / CX3CR1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦の献腎移植件数は増加しつつあるが、献腎移植には少なからず虚血再灌流障害 (IRI)によるdelayed graft function (DGF)が認められる。IRIにより障害された移植腎内の血管内皮細胞に、細胞傷害性T細胞やnatural killer (NK)細胞が接着して拒絶反応を誘発し、移植腎の長期予後を不良にすると考えられている。また、細胞傷害性メモリーT細胞やNK細胞は、カルシニューリン阻害薬などによる既存の免疫抑制剤では制御が困難である。こうした免疫細胞は様々な接着分子とケモカインにより制御されている。フラクタルカイン (FKN) は活性化内皮細胞に発現し、接着分子としての機能とケモカインとしての細胞遊走誘導能をあわせもつ分子である。 FKNの受容体であるCX3CR1は、細胞傷害活性メモリーT細胞やNK細胞に特異的に発現しており、それらの細胞の炎症組織への浸潤に関与すると考えられている。 本研究では、マウスの異所性心移植モデルを用いて、FKN/CX3CR1シグナルがIRIにより引き起こされる拒絶反応に関与しているか検証している。平成28年度には、6時間の冷阻血処置を加えた心移植では、移植心の生着期間が即時移植群と比較して短縮し、抗FKN抗体により拒絶反応が抑制されることを示した。これらの結果から、冷阻血処置により誘導されたFKNが拒絶反応に関与する可能性が示唆された。 平成29年度は、蛍光抗体法を用いて、冷阻血処置による血管内皮におけるFKN発現について検証した。8時間の冷阻血処置を加えて心移植を施行し、術後3日後に移植心を採取し、抗FKN抗体による染色を行った。その結果、冷阻血処置を加えた群では血管内皮にFKN発現を認めた。一方で、即時移植群ではFKN発現は認められなかった。冷阻血処置によって血管内皮にFKN発現が誘導されている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ドナーマウス心臓を摘出し、8時間の冷阻血後に腹部異所性心移植を行うモデルを確立し、冷阻血処置により血管内皮にFKNが発現することを蛍光抗体法で確認した。FKN/CX3CR1シグナルのIRIが関連する拒絶反応への関与について、順調に検証が進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、野生型マウスをレシピエントとした冷阻血処置後移植心の生着期間は、即時移植群と比較して短縮することを確認した。今後は、CX3CR1ノックアウト(KO)マウスをレシピエントとして冷阻血後の心移植を行い、移植心の生着期間について評価する予定である。本試験において、CX3CR1 KOマウスでの生着期間の延長が確認された場合、IRIが関連する拒絶反応にFKN/CX3CR1シグナルが関与している証拠となる。 そのような結果を得た場合、野生型のマウス骨髄を採取し、マクロファージコロニー刺激因子の刺激下で培養し、その培養細胞からCX3CR1陽性CD115陽性単球を回収し、CX3CR1 KOマウスに移入する。それらのCX3CR1 KOマウスに冷阻血処置を加えた心臓グラフトを移植して、その生着期間について評価する。生着期間の短縮が認められれば、CX3CR1陽性単球がIRIによる拒絶反応のエフェクター細胞と考えられる。
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