2017 Fiscal Year Research-status Report
ホルマリン固定組織へ応用可能な多重遺伝子発現解析に基づく乳癌の再発予測法の開発
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16K10456
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
直居 靖人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30646211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳癌 / マイクロアレイ / 再発予測 / FFPE |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は網羅的遺伝子発現解析用マイクロアレイ(以下、アレイ)を用いた再発予測法「Curebest 95GC」を開発し2013年に実用化した。本研究の目的は、Curebest 95GCをホルマリン固定パラフィン包埋組織検体(以下、FFPE検体)にも応用可能なように改良し、日常診療でより利用し易い簡便な検査法としてその普及を図ることである。前年度までは以下の検討を行った。 ①FFPE検体からのRNA抽出条件の最適化: ホルマリン濃度や浸透時間の調整等によってFFPE自体の制作過程を見直し、更に薄切切片の厚みによる脱パラフィンの条件や、検体破砕方式、カラム抽出時の試薬選択や反応時間等を検討し、FFPE専用に最適化した遺伝子抽出プロトコールを作成し、FFPE検体からRNAを崩壊少なく抽出できる手法を確立した。 ②FFPE検体由来の変性したRNAからの予測モデルの作成: 前述のように我々は、凍結検体を対象とした多重遺伝子診断法としてCurebest 95GC、IRSN23(化学療法効果予測法)、GNI(腋窩リンパ節転移予測法)等を開発してきた。これらの多重遺伝子診断法に使用する数十~数百個程度の遺伝子群の中から、より多くの凍結検体/FFPE検体ペアを互いに比較して、FFPE検体においてRNAが崩壊しやすい遺伝子群を同定し、それらを引いた残りの遺伝子群を用いて改良・再構築を行い、新たにFFPE検体専用の各種多重遺伝子診断法を作成することを試みた。本年度は以下の検討を行った。 ③生物情報学(Bioinformatics)における検討, ④FFPE検体専用のマイクロアレイデータ正規化法refRMAの構築: 詳細は次項に記載。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、5.研究実績の概要における①~④の検討は予定通り進んでいる。本年度は以下の③④を行った。 ③生物情報学(Bioinformatics)における検討: 低品質の遺伝子発現データを除去する数学的フィルタリングや、外れ値を検出する主成分分析図法等の研究開発によって、FFPE検体においても凍結検体の予測結果を忠実に再現できるように、Bioinformaticsの面からも調整を試み、独自のQuality control system を確立した。 ④FFPE検体専用のマイクロアレイデータ正規化法refRMAの構築: データ正規化法refRMAとは、学習用コホートで予め計算した全ての「係数」をファイルとして保存し(refRMAモデル)、学習用コホート以外の新たな1検体にその「係数」をあてはめる手法である。これは新たな1症例を正確に客観的に予測診断する際に必要な計算法である。我々はFFPE保存検体200例程度の学習用コホートおよび50例程度の評価用コホートで発現マイクロアレイ測定を行い、実用化に向けたFFPE検体用正規化法(refRMA)を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降は、 ⑤FFPE検体用に改良した再発予測法(改良型Curebest 95GC)の検証 に進み、FFPE検体用に新たに改良した再発予測法(改良型Curebest 95GC)の臨床的有用性をレトロスぺクティブ研究で検証したいと考えている。 具体的には、ER陽性・リンパ節転移陰性乳癌で術後に補助療法としてホルモン療法のみが実施された症例56例(経過観察期間は約10年)を対象に、新たにマイクロアレイDATAを作成し、原発乳癌組織のFFPE検体からRNAを抽出して上記のFFPE検体専用の再発予測法を適応し、高リスク群と低リスク群に分類する。 1st.end point として、高リスク(H)群と低リスク(L)群の凍結/FFPEペア検体56例における95GC判定一致率が90%以上であること。2nd.end point としてH群とL群のDRFS%(Distant recurrence free survival rate)を検定して統計学的に有意差があり、なおかつ術後10年後のL群のDRFS%が90%以上であることを目標として検討する。
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Causes of Carryover |
計画よりも実験消耗品の購入を少なく抑えることができたため。
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Research Products
(12 results)