2017 Fiscal Year Research-status Report
Maspin が乳癌患者の不良予後に関与する分子機構の解明
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16K10458
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
梅北 善久 鳥取大学, 医学部, 教授 (80244226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂部 友彦 鳥取大学, 医学部, 助教 (50639747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞内局在 / 上皮間葉転換 / 細胞浸潤 / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
Maspinはこれまで発癌過程で発現が低下する癌抑制遺伝子であるとされてきた。しかし、我々は癌細胞の細胞質のみにmaspinが発現している乳癌、肺癌患者は有意に予後不良であることを報告してきた。これらの知見から、癌細胞におけるmaspinの機能は細胞内局在によって変化し、細胞質に発現するmaspinは癌の進展に積極的に関与していると推測して解析を行ってきたところ、昨年度までに乳癌細胞株MDA-MB-231において過剰発現させたmaspinが細胞増殖能、細胞浸潤能の亢進を誘導することを本研究で明らかにしてきた。平成29年度は、細胞質局在型maspinが細胞浸潤能を亢進するメカニズムを明らかにする為に、網羅的な遺伝子発現解析を実施した。MDA-MB-231にmaspinを過剰発現させ、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現比較を行った結果、過剰発現細胞で2倍以上発現が増加していた遺伝子として31遺伝子、1/2以下に発現が低下していた遺伝子として14遺伝子が抽出された。また、発現が増加していた遺伝子群には、上皮間葉転換 (EMT)と関連して癌の浸潤を促進することが報告されている遺伝子が複数含まれていた為、maspin過剰発現細胞 (MDA-MB-231-maspin)とコントロール細胞 (MDA-MB-231-green)間で、qPCRによるEMT関連遺伝子の発現解析を行った。その結果、maspin過剰発現によって、上皮マーカーであるE-cadherinの発現低下、間葉マーカーであるN-cadherinの発現増加が認められた。さらに、EMT関連転写因子であるSlug、Twist、ZEB1、ZEB2の発現増加も認められた。これらの結果から、MDA-MB-231細胞におけるmaspinによる浸潤能亢進は、EMT関連転写因子の発現増加によるEMT促進を介した経路によることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞質局在型maspinが、乳癌細胞株における浸潤能を亢進させるメカニズムとして、EMT関連転写因子の発現増加に伴うEMT促進であることを示唆する結果を得ることが出来た。これはこれまでに臨床検体や細胞株で得られた癌進展における細胞質局在型maspinの機能を解明する為の分子メカニズムの一旦であると推測されることから、計画はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
① 細胞質局在型maspinによるEMT促進誘導について、網羅的遺伝子発現解析で抽出された遺伝子も併せてどのようなシグナル経路が関与しているかをより詳細に明らかにする。 ② 細胞質局在型maspinの過剰発現が細胞浸潤、転移を促進するかをin vivoマウスモデルで検証する。 ③ 共免疫沈降、質量分析を用いてmaspin結合タンパク及び核内輸送タンパクを同定し、核移行メカニズムの解明を行う。
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Causes of Carryover |
ウエスタンブロットや遺伝子発現解析などの分子生物学的検討に使用する試薬を購入すると共に、実験的マウス転移モデルでの解析に伴う消耗品、マウス購入/維持費に充てる予定である。また、研究の中間成果報告の為に学会参加費や学術雑誌への投稿料などに使用する。
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Research Products
(3 results)