2017 Fiscal Year Research-status Report
分化誘導剤コチレニンAと癌分子標的薬による固形癌細胞の増殖抑制とその分子基盤解析
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16K10459
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
粕壁 隆 島根大学, 医学部, 特任教授 (50152658)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / 薬剤反応 / 活性化酸素 / フェロトーシス / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、白血病細胞の分化誘導剤コチレニンAを遺伝子発現修飾物質と捉え固形癌細胞の増殖制御に応用出来るか否かを検討してきた。これまでの我々の研究から、コチレニンAと活性酸素(ROS)誘導剤との併用処理が、効果的な抗癌作用を示す可能性あることが判明してきた。昨年度では活性酸素(ROS)誘導剤として植物由来で癌化学予防剤としても期待されているphenethy isothiocyanate (PEITC)を用い、コチレニンAとの併用効果を難治性固形癌である膵臓癌細胞に対する効果を検討した。その結果、コチレニンAとPEITCとの併用処理はヒト膵臓癌細胞の増殖を相乗的に抑制した。さらに、この細胞死誘導のメカニズムにはフェロトーシス(non-apoptotic, iron-dependent, oxidative cell death)が関与していることを明らかにした。 そこで本年度では、活性酸素(ROS)誘導剤として知られているPEITC以外の植物成分とコチレニンAとの併用効果を膵臓癌細胞(PANC-1、MIAPaCa-2、BxPC-3、CFPAC-3)に対して検討した。その結果、コチレニンAとインドナガコショウ由来のpiperlongumine (PL)との併用処理で、膵臓癌細胞の増殖が相乗的に抑制された。また、コチレニンAとPEITCとの併用処理で誘導されたフェロトーシスによる細胞死誘導がこのコチレニンAとPL併用処理での効果に含まれることを様々な細胞死誘導の阻害剤を用いて明らかにした。また、比較的高濃度のPLは単独でもフェロトーシスを誘導することを見出し、PLによる癌細胞死誘導の新しい作用メカニズムを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度では、白血病細胞の分化誘導剤コチレニンAと活性酸素(ROS)誘導剤として知られているPLが難治性固形癌である膵臓癌細胞の増殖を相乗的に抑制できることを見出すことができた。さらに、これらの増殖抑制効果に重要な分子基盤についても解明を試み、アポトーシス誘導ではなく、最近新しく報告されてきた活性化酸素と鉄依存性の細胞死フェロトーシス誘導が大きく関与していることを明らかにできた。さらに、PL単独でもある程度フェロトーシス誘導による細胞死を誘導できることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得られた結果を基にして、さらに、遺伝子強制発現実験、抗体アレイを用いた細胞死誘導因子の同定実験、フローサイトメトリーを用いたROS測定、定量PCRおよび、ウェスタンブロッティング実験を行い、コチレニンAとpiperlongumine (PL)による増殖抑制効果の分子基盤をさらに詳細に明らかにし、これらの処理の最も重要な分子標的遺伝子を同定する。また、in vivo実験に向けて新規のコチレニンA誘導体を作成し、固形癌細胞に対する増殖抑制効果がコチレニンAと同等あるいはそれ以上の誘導体を検索する。
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Research Products
(5 results)