2017 Fiscal Year Research-status Report
乳癌転移巣ER遺伝子変異とCDK4/6阻害剤の相関検討と効果予測法の確立
Project/Area Number |
16K10474
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 麻衣子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50348661)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 朋子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70528900)
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80327543)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 乳がん / エストロゲン受容体 / 内分泌療法 / CDK4/6阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はCDK4/6阻害剤がERの下流を効率的に阻害する効果があり、ERの遺伝子変異を同定することで、薬剤の効果を予測可能であるとの仮説を立て、これを検証することが目的である。 まず、複数のER陽性/HER2陰性細胞株のER遺伝子に既知の遺伝子変異を作成し、E2非存在下でのER活性が報告通り亢進するか否かの検証を行うために、MCF7細胞に3種類のER変異プラスミドを導入し、クローン化した。変異部位は、すでに文献上報告されている 1) Leu536Arg, 2) Tyr537Ser, 3) Asp538Glyのアミノ酸であり、この3種類についてそれぞれのクローンを作成した。これらに対して、増殖能力、タモキシフェン・フルベストラントへの増殖抑制効果に対する感受性、Estrogen Responsive Element (ERE) luciferase法によるエストロゲン受容体活性の評価、上記薬剤によるERE luciferase活性への影響を評価、ERの標的遺伝子であるcyclinD1の発現検討を行い、タモキシフェン存在下においてこれら変異ERクローン株では増殖が阻害されないことを示した。一方で、予測ではcyclinD1の発現亢進が認められると考えていたが、こちらについては変化を認めず、その下流のRBタンパク質のリン酸化に正常ER株と比較して差異が認められた。さらに、1)タモキシフェン単剤、2)フルベストラント単剤、3)フルベストラント+CDK4/6阻害薬、の3種類の薬剤の組み合わせにおいて、ER変異クローンでは1)に対して薬剤抵抗性を認めたが、一方で2)および3)については良好な殺細胞効果が認められた。さらに、3)については薬剤の相乗効果を認め、RBリン酸化の効率的な阻害効果と、E2F1蛋白の発現低下が誘導された。これら知見をもとに、CDK4/6阻害薬の薬剤抵抗メカニズムの解明を今後目指していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに研究に必要なクローンの作成を終えており、これらの検討から分子生物学的な複数の知見が得られているなど、研究の土台は確立されている。また、ER変異細胞株について、cyclinD1, CDK4/6の発現解析。さらにRB蛋白とそのリン酸化の状態、遊離E2F1の増減についての検証が進められており、タモキシフェンのみなならずフルベストラントおよびCDK4/6阻害薬の併用など、様々な薬剤の組み合わせで添加した状態で、薬剤感受性とこれに関わる因子の発現やシグナル伝達等についての解明が進んでいる。 さらに、慶應義塾大学病院において蓄積された再発巣生検検体約60例を対象として、ERのAF-2ドメインに対するディープシーケンスを行い、日本人において特有の遺伝子変異が認められるか否かの検証を行った。これは、AF-2ドメインを構成するER遺伝子のexon4からexon8までのプライマーデザインを設定し、針生検検体のパラフィン包埋切片から抽出したgDNAをテンプレートとして、シーケンスライブラリーの作成を行い、次世代シーケンサーによる解析を施行した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は上記次世代シーケンサーによる解析結果と臨床病理学的因子に相関が認められるかどうかについて検討を進めていく。解析に使用するサンプルを採取した患者の臨床データは全て揃っており、変異の有無と病勢についての統合解析を行う。特に、ホルモン治療・化学療法の前治療数・検体採取直前の治療薬とその病勢・採取直後の治療薬とその効果判定、について注目して解析を行い、ER遺伝子変異の有無と相関が認められるかを検証していく。
|
Causes of Carryover |
(理由) 適正な使用を行った結果端数が発生した (使用計画) 消耗品費として適正に使用する予定である
|