2017 Fiscal Year Research-status Report
徐放性ハイドロゲル製剤を用いた新規消化管縫合不全予防製剤の開発
Project/Area Number |
16K10489
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久倉 勝治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60550168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 孝史 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (20633192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 縫合不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイドロゲルとは「高分子が三次元網目構造に架橋され、水などの液体に不溶化した高分子物質およびその膨潤体」と定義され、医療応用されている。われわれは、東京理科大学薬学部薬学科医療デザイン学(臨床製剤設計額)研究室と共同研究を行い、ポリビニルアルコール系の物質を用いて新規ハイドロゲル製剤の作製を試みた。ハイドロゲル製剤の体腔内での使用報告は少ないが、経皮的な使用では安全性が確立された物質である。ハイドロゲルの作製方法として、物理的架橋法である凍結融解法を用いることで、高い柔軟性、高い引張強度、低い膨潤性、低い弾力性という特徴を有する新規ハイドロゲル製剤の作製に成功した。ラットの直腸で縫合不全モデルを作製し、動物実験を行った。ラットの直腸間膜を切離し、直動脈を離断することで血流を低下させ、等間隔に3針の腸管吻合を行うことで縫合不全を来すモデルを開発した。腸管縫合不全モデルの縫合部位にハイドロゲルを貼付し、その予防効果を検証した。ハイドロゲルによる縫合部の補強を期待したが、ハイドロゲルの性質として癒着防止剤としての機能も生じたことから、組織癒着による縫合不全部位の自己組織によるパッキング効果が減弱され、縫合不全を防止するに至らなかった。物理的架橋法である凍結融解法を用いて作製する本ハイドロゲル製剤は、物質濃度や凍結融解の回数を変更することでその性質を変化させることができるため、腸管の縫合不全部位に貼付した際に、補強効果を最大限発揮できるような性質を持つように調整していく予定である。さらに、本ハイドロゲル製剤は薬剤の封入が可能であり、薬剤が徐放されるという特徴も有する。創傷治癒効果を持った薬剤を浸透させたハイドロゲルも作製し、縫合不全の予防効果の上乗せも検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ポリビニルアルコールを用いた新規ハイドロゲル製剤の作製に成功した。実際にラットを用いた動物実験で使用したが、縫合不全に対する予防効果に乏しく、再度ハイドロゲル調製における条件検討が必要と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り進めていく。ハイドロゲルを調製する際には物理的架橋法である凍結融解法を用いるが、物質の濃度および凍結融解の回数を変更し、腸管への貼付により適した性質へ近づける。また、予備実験としてハイドロゲルに薬剤(ナファモスタットメシル酸塩)を含有させることに成功した。その他の薬剤を含有させることも十分可能であるため、血小板やヒアルロン酸等、創傷治癒に関わる物質を含有させたハイドロゲルでも併せて動物実験を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新規ハイドロゲル製剤を開発し、動物実験を開始した。現在のところ、縫合不全の予防として十分な結果が出ておらず、再度条件検討が必要と考える。ハイドロゲルの性質を変化させるための条件検討と、その上でのラットを用いた動物実験が必要であることから次年度へ使用額が生じることとなった。 次年度は、ハイドロゲルを調製するためのポリビニルアルコール、ハイドロゲル調製後に動物実験を施行するラットに対して主に使用することを考えている。また、ハイドロゲルに含有させる血小板やヒアルロン酸等の薬剤への使用も検討している。
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