2017 Fiscal Year Research-status Report
胃癌腹腔洗浄液および末梢血中癌細胞の単離と遺伝子解析を用いた補助化学療法薬剤選択
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16K10524
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
伊藤 誠二 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 研究員 (50393129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | CTC / フィルター型デバイス / スライドグラス標本 / CTCマウス / 分子標的治療 / Liquid biopsy / 腹腔洗浄液中がん細胞(PTC) |
Outline of Annual Research Achievements |
1 腹腔洗浄液中および末梢血中循環がん細胞(PTC/CTC)の検出デバイス これまでのCTC検出は蛍光染色パターンの暗視野下での蛍光顕微鏡観察のみで行なわれてきた。しかし、この判定方法では通常の細胞診で行われる明視野、永久標本での客観的な形態学的評価ができず、判定の正確性、再現性に課題を有していた。そこで昨年度は3Dフィルター型CTC分離デバイスで捕捉したCTCを、スライドグラスに転写し、細胞診標本を作成できる様にデバイスの改良を行なった(特許出願中)。本年度はさらに臨床的実用性を向上させるため4検体を同時に自動的にCTC検出できる装置を企業と共同して試作した。これらによりCTCの同定を迅速、正確、客観的に“CTC細胞診”として行うことが可能となった。 一方、腹腔洗浄液中がん細胞(PTC)分離に関しては、今年度は上記改良したCTC分離デバイスを用いて、実際の胃がん患者の腹腔洗浄液中のPTC検出の予備的な検討を行なった。その結果、血中CTCの検出と異なり、腹腔洗浄液中PTCの検出では一部の中皮細胞がフィルター上に残存し、これを除外する必要性があるが、パパニコロウ染色とCEA免疫染色の二重染色により中皮細胞を除外でき、PTCを形態学的に同定することに成功した。 2 CTC, PTCを用いた抗がん剤感受性、抵抗性予測法 上記改良型CTC検出デバイス及び胃がん細胞株CTCマウスモデルを用いて化学療法や分子標的治療のモニタリングが可能なCTCマウスモデルを確立した。このマウス胃がんモデルを用いて抗がん剤及び分子標的薬治療前後の血中CTCの動態を検討し、治療後に一過性にCTC数が増加する傾向があることを見出している。この治療に伴い血中に遊離してきたCTCの形態が原発巣の組織像をよく反映していることから、CTCの一過性増加が原発巣の薬剤感受性と関連している可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 CTC/PTC分離デバイスの改良;3Dフィルター型分離デバイスからのCTC/PTCのスライドグラスへの転写と細胞診染色標本作成法を確立し、”CTC/PTC細胞診”の形態学的な診断基準を提案した。さらに自動検出装置の試作機を作成するなど、実用化に向けた改良、改善を達成した。本改良デバイスを用いて胃がん患者(10例)の末梢血、流出路静脈血及び腹腔洗浄液検体を用いたCTC/PTC検出の予備的検討を行った。その結果、暗視野での蛍光検出に依存する従来法に比べ、本法では簡便、迅速、客観的かつ低コストに通常顕微鏡下での検出が可能であることを明らかにした。 2 CTC/PTCによる抗がん剤感受性、抵抗性予測と遺伝子解析;マウス血液(心採血)から上記デバイスを用いてCTCを再現性よく検出できる胃がんのCTCマウスモデルを作成することに成功した。本CTCマウスモデルを用いて抗がん剤(PTX)や分子標的治療(Trastsuzumab)の前後の血中CTCの動態を検討し、治療後に一過性にCTC数が増加することを見出した。このCTCの形態が原発巣の組織像をよく反映していることから、CTCの継時的モニタリングによる原発巣の薬剤感受性予測の可能性を示唆した。一方、スライドグラス標本からの遺伝子解析法についてはフィルターからのDNA/RNA抽出及びそれから合成したcDNAを用いたRT-PCR法に成功した。しかしながら、CTC数が少ない末梢血の場合、再現性よくDNA/RNA抽出、RT-PCR法による検出には至っておらず、今後の課題として残っている。以上、デバイス及びマウス及び臨床検体測定に関しては基本的に所期の目標を達成したので全体として達成度は70%程度と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30 年度 1 CTC/PTC分離、検出デバイス; 本年度に改良した自動CTC分離デバイスとスライドグラス標本作成法に引き続き改良を加え、マウスモデルや多数例の胃癌患者検体を用いて、本改良型CTC測定法の検出感度、特異性を評価、検証を行い、Liquid biopsy足りうるか否かを検討する。また腹腔洗浄液検体中PTCの検出に関しては従来の洗浄細胞診が検体の一部のみを標本にして測定するのに対して、本デバイスでは検体全量を1枚の標本にして測定するため、高感度が期待され、この点について検証する。 2 CTC/PTCによる抗がん剤感受性、抵抗性予測と遺伝子解析; 上記改良型CTC分離デバイスと上述のマウスCTCモデルを用いてパクリタキセルなどの抗がん剤や抗HER2抗体薬(Trastuzumab)を用いた薬物治療後のCTCの数的変化(増加)を経時的に詳細に検討し、薬剤感受性とCTCの動態の関連を明らかにし、CTCによる薬物治療のモニタリングの可能性を明らかにする。さらにCTCの数的変化のみでなく、遺伝子解析についても検討する。
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Causes of Carryover |
英文校正料が予定より安価であったため。
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Research Products
(8 results)