2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K10540
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 恭一 京都大学, 医学研究科, 医員 (00769424)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発がん / 細胞種 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌の原因として知られているApc遺伝子に変異のある大腸癌マウスモデルを用いて、大腸の腫瘍細胞をiPS細胞技術により初期化し、初期化腫瘍細胞(RTC)を作製した。 作製したRTCの特性を調べ、またRTCを生体内で再び腸管や他の臓器の細胞に分化させることにより各々の臓器に腫瘍が形成されるかどうか検討を行った。 Apc遺伝子の変異によって影響を受ける遺伝子を、マイクロアレイにてRTCおよび腸管の細胞で比較すると重なっておらず、細胞の初期化によってApc遺伝子変異により影響を受ける遺伝子群が変化することが分かった。このことは例え同じ遺伝子変異を有していたとしても細胞種が異なれば、遺伝子変異による細胞への影響も異なることを示唆した。 RTCは多能性を有しておらず、これはApc遺伝子の不活性化によるものと考えられた。変異したApc遺伝子の片アレルを一時的に正常なApc遺伝子に置き換えると、RTCに多能性が与えられマウスの体内でさまざまなタイプの細胞へと分化させることが可能となった。このマウス体内においてRTC由来細胞のApc遺伝子を再不活性化した結果、腸管細胞に分化した細胞では再び腫瘍を形成したが、他の種類の細胞では腫瘍形成は認められなかった。 さらに発生した腫瘍の大部分は腫瘍前段階である顕微鏡的adenomaであった。このことから腫瘍の進展には遺伝子異常だけでは不十分であり何らかのエピジェネティック変化の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RTCのApc遺伝子の片アレルをloxP配列を有したコンストラクトを用いてApc遺伝子のレスキューを行うことによりCreを発現させることで腫瘍細胞の遺伝子の異常を自由に再現できる実験系を確立した。 この樹立した細胞を用いて、生体マウス内でApc遺伝子を再不活性化することにより腸管および他の臓器に腫瘍が再び発生するかどうかを検証した。 また環境要因を排除するためvitroでも樹立した細胞を腸管細胞および他の組織の細胞へと分化させ腫瘍特性が見られるかを検証した。その結果、腸管細胞に分化した細胞では再び腫瘍を形成したが、他の種類の細胞では腫瘍形成は認められなかった。 さらに発生した腫瘍の大部分は腫瘍前段階である顕微鏡的adenomaであった。 以上のことにより、腫瘍の進展には遺伝子異常だけでは不十分であり何らかのエピジェネティック変化の存在が示唆された。 これらの結果をまとめ論文としてPNASにて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回まとめた結果を積極的に学会で発表し、今後さらなるプロジェクトへつなげられないか検討中である。
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Causes of Carryover |
若干の端数が生じた為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて使用予定である。
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Research Products
(2 results)