2017 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌におけるstatinの抗腫瘍効果メカニズムの解明と新規治療法の開発
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16K10544
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石川 晋之 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (80419639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 竜馬 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医員 (20594881)
東 孝暁 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (70594878)
宮本 裕士 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (80551259)
林 洋光 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (80625773)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スタチン / 大腸癌 / 薬剤耐性 / pERK / pAkt |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌における各種薬剤の反応を検討中に、新たな疑問が発生し、この検証を行っている。TCGAのデータを解析し、EGFR関連遺伝子変異の頻度が高い組み合わせに相当する4種類の細胞株を使用し、simvastatin、MEK阻害剤、Akt阻害剤投与での、MEK/ERK経路、PI3K/Akt経路、JAK/STAT経路の分子の動き、増殖抑制効果を検討した。昨年の報告で、simvastatinによるAkt inhibitorとしての可能性に言及したが、やはり、simvastatinにはAkt阻害剤としての機能があると考えられる。しかし、各種薬剤でpERKやpAktが抑制されるにもかかわらず、増殖に影響が出ないという現象が認められた。また、よく言われているようなpERK抑制によるpAktの活性化や、pAkt抑制によるpERKの活性化などの現象にも乏しい。これは、上記3つの経路以外に他の経路が薬剤抵抗性に関与していることを示唆している。この別経路の候補として、いくつかの経路が考えられるが、ある経路が可能性の高い候補として考えられ、研究を継続している。 この経路はいくつかの遺伝子の発現に関わっているが、どれが最も薬剤耐性に寄与している分子なのか。既存の分子なのか、または報告されていない新たな分子なのか。また、この経路が薬剤耐性の原因であるならば、上記薬剤とこの経路の抑制で相乗的な抗腫瘍効果が認められる可能性がある。 海外での臨床試験で、MEK阻害剤は副作用が強く、断念したことなどが報告されているが、低用量での相乗効果が得られれば、新規治療法としての可能性が出てくる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スタチン(simvastatin)を中心とし、MEK阻害剤やAkt阻害剤を使用した大腸癌の薬剤耐性メカニズムの一端が明らかにできる可能性が出てきている。今後の研究計画(下記)は一つの仮説に則って行う予定であるが、この仮説が正しいことが証明されると、新規治療法開発だけでなく、今後の大腸癌に対する薬物療法として、分子の変異に応じて、どこを抑制することが最も効果的であるかという道筋を示すことが可能となる。 また、基礎研究以外にも、臨床データを使用した多施設共同研究も行い、大腸癌Stage III根治術後の再発を予測する簡易スコアリングシステムの開発にも成功し、現在論文投稿中である。この内容は、本年4月の全国学会(第118回 日本外科学会)でも報告予定である。 当初の計画とは内容が変わってきているものの、基礎研究のみならず、臨床研究でも成果を出していることより、進歩状況としては順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
一つの仮説に基づき、今後の研究を進めていく。本報告書ではこの仮説の詳細は控えさせていただく。 仮説中の経路を活性化もしくは抑制し、その経路に関連している分子の動きを、タンパクレベル、mRNAレベルで確認する。 仮説中の経路と、それに関連する候補分子の発現がどのように制御されているかを検討する。プロモーターの解析や、ChIP、luciferase assayなどが必要と考えている。 Simvastatin、MEK阻害剤、Akt阻害剤と、この経路の阻害剤との併用でgrowth assayを行い、相乗効果が得られる組み合わせ(遺伝子プロファイルとの関連を含め)を検討する。その結果に基づき、in vivoでの腫瘍増殖抑制効果も検討する。
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Causes of Carryover |
H30年度はH29年度の結果に基づき、今後の研究を進めていく。研究費はその際の試薬及び器機などの消耗品購入費に充てる他、研究成果発表、情報収集にかかる旅費に充てたいと考える。 また、研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたいと考える。
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