2016 Fiscal Year Research-status Report
直腸癌術前化学放射線療法の効果予測マーカーとしての血清中microRNA解析
Project/Area Number |
16K10557
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
日吉 幸晴 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医員 (30573612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋吉 高志 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 副医長 (50625598)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 直腸癌 / CRT / microRNA / 血清 / 効果予測 / microarray / PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
直腸癌術前化学放射線療法(CRT)の効果予測マーカーとしての血清中microRNA(miRNA)の有用性を検討するため、まず、血清サンプルの集積を行った。がん研有明病院で術前CRT後に手術を行った下部直腸癌症例94例から、CRT前の血清サンプルを回収し、-20℃で保存した。 対象94例の切除検体で、直腸癌の病理学的評価によるCRT効果判定を行った。12例で腫瘍細胞の消失(pathological complete response: pCR)を、9例でわずかな腫瘍細胞の遺残(near-pCR)を得た。この21例(22%)を効果良好群、残りの73例を効果不良群とした。 次に、保存した血清サンプルからtotal RNAを抽出した。この際、合成small RNAであるcel-miR-39を加え、のちのmiRNA解析でノーマライゼーションに用いた。NanoDropでRNA濃度を測定し、-80℃で保存した。 次に、miRNAのmicroarray解析を行った(Affymetrix miRNA 3.0 Array)。解析には、効果良好群の13例と効果不良群12例のRNAサンプルを用いた。効果良好群と効果不良群で血清レベルに有意な差を認めるものとして、12種類のmiRNA(let-7b, miR-122, miR-1246, miR-20a, miR-423-5r, miR-425, miR-4281, miR-4429, miR-4484, miR-4487, miR-4505, miR-4507)を同定した。いずれのmiRNAも、効果良好群と比較して効果不良群で血清レベルが有意に高値であった。 現在、TaqMan real-time PCRにより、microarray解析で同定したmiRNAのvalidationを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成28年度は、血清サンプルの回収・集積、血清からのRNA抽出、RNA中のmiRNA解析を予定していた。 サンプル回収については、94例の下部直腸癌患者から研究同意を得た後に血清を採取することができ、RNA抽出まで行うことができた。過去に同様の解析を行っている報告が少数あるが、その報告と比較しても94例のサンプル数は多いものであり、今後の有意義な解析が期待できる。 切除検体を用いた病理学的なCRT効果判定においては、当院病理部の協力のもと正確な判定を行い、効果良好群と効果不良群に分けることができた。 抽出したRNAからのmiRNA解析では、CRTの効果を予測する血清miRNAを網羅的に探索するため、microarray解析を行い、12種類の候補を同定した。今後、real-time PCRでvalidationを行い、直腸癌術前CRTの効果予測マーカーとしての血清miRNAを同定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、概ね計画どおりに研究を進行できている。 平成29年度以降は、microarray解析で同定した候補miRNAのvalidationを94例全例のRNAサンプルを用いてreal-time PCRで行い、再現性を確認する。 次に、同定されたmiRNAの血清レベルと様々な臨床病理学的因子との相関を検討する。また、miRNAの標的遺伝子をtarget scanなどのonline siteで検索し、CRT効果に影響を及ぼすメカニズムについて検討する。 今回の対象症例の中には、以前に腫瘍組織中のmiRNAをmicroarrayで解析している症例も含まれている。そこで、血清中と腫瘍組織中のmiRNAレベルを比較し、相関関係の有無を解析する。
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