2016 Fiscal Year Research-status Report
肝虚血再灌流障害におけるPAR-1とS1PR1の作用機序の解明
Project/Area Number |
16K10569
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
栗山 直久 三重大学, 医学系研究科, 講師 (80525329)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 肝虚血再灌流障害 / 活性化プロテインC / PAR-1 / S1PR1 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでにActivated protein C (APC) が肝虚血再灌流障害 (IRI) に対し細胞保護があることを報告しているが、近年、APCが細胞内shpingosine-1-phosphateを介してshpingosine-1-phosphate 1 receptor (S1PR1) を活性化するという機序が報告されている。S1PR1は血管や炎症細胞など様々な部位に発現するが、我々はAPC投与マウスのIRI肝にてS1PR1の発現が亢進していることを確認している。S1PR1は肝IRIにおいて新たなターゲットになりうると考え、その選択的作動薬であるSEW2871を使用し、肝IRIにおける効果を検討した。 【方法】C57BL6マウスによる60分間の70%肝IRIモデルを用いて、SEW2871投与群 (S群)とコントロール群 (C群)とに分け、比較検討した。 【結果】S群ではC群と比較し、再灌流後4, 24時間で, 肝酵素の有意の低下を認め肝障害が軽減されており、組織学的にも4時間後での著明なcongestionの改善と, 24時間後の肝組織壊死範囲の減少を認めた。 S群では4時間後の血中リンパ球が有意に減少し, 肝組織でのIFN-γ、IL-6、TNF-α 、VCAM-1 の著明なmRNA発現の低下を認めた。myeloperoxidase活性の低下を認めた。またS群で24時間後の肝組織中のLy6G陽性細胞、MAC1陽性細胞浸潤が有意に減少していた。さらにS群では4時間後のVE-cadherinとp-eNOSの発現が有意に高かった。 【結論】S1PR1作動薬はマウスIRIにおいて、血液中のリンパ球減少、肝でのサイトカイン、接着因子と炎症細胞浸潤を減少させるだけでなく、類洞内皮の安定化による血管抵抗低下によって類洞循環障害を低減し、虚血再灌流障害を改善すると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APCは血管内皮のendothelial PC receptor (EPCR) に結合し、 protease-activated receptor-1 (PAR-1) を活性化する。その刺激によって細胞内のsphingosine kinase1 (SphK1) が活性化され、生成されたsphingosine-1-phosphate (S1P) が細胞外に遊離し、その細胞膜受容体1 (S1PR1) が活性化され、細胞保護効果を発揮することが示唆されている。そこで、この経路の中でPAR-1、S1PR1をターゲットとなり得るため、それぞれ活性化することで、抗凝固活性を有さないどのような細胞保護効果を示すかについて検証を行っており、S1PR1に関してはその細胞保護効果を立証し、現在論文投稿中であり、今年度から予定通りPAR-1について実験を遂行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
APCは血管内皮のendothelial PC receptor (EPCR) に結合し、 protease-activated receptor-1 (PAR-1) を活性化することで細胞保護効果を発揮する言われている。PAR-1の活性化には、APCによるβ-arrestin-2-dependent signaling (cleavage site Arg46) を介する細胞保護 (抗炎症) 作用と、一方トロンビンによるG protein-dependent signaling (cleavage site Arg41) を介する炎症作用が存在することが最近明らかになった。よってclevage site Arg46に対してはMosnierらの報告を参考に新たにpeptide-agonistを作成使用し、細胞保護作用を誘導する。またclevage site Arg46に対してはPAR-1 receptor antagonist (SCH79797) を使用し、炎症作用を阻害する。以上の仮説をマウス肝虚血再灌流障害を用いて立証し、かつその細胞保護効果のメカニズムを解明を行う。
|
Research Products
(3 results)