2016 Fiscal Year Research-status Report
膵がん細胞表面に存在する抗原分子の機能解析と早期診断・治療法への応用
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16K10595
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田島 義証 島根大学, 医学部, 教授 (20264228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦野 健 島根大学, 医学部, 教授 (70293701)
西 健 島根大学, 医学部, 助教 (80538893)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膵がん / モノクローナル抗体 / バイオ医薬品開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、バイオ医薬品の開発を目指して、ヒト膵がん細胞株 MIA PaCa-2を免疫源として、がん細胞表面を認識するマウスモノクローナル抗体を産生する3種類のハイブリドーマを樹立した。 モノクローナル抗体 12-13.8 は、1)線維芽細胞株など正常細胞株では発現を認めず、膵がんや肺がんをはじめ多くのがん腫の細胞株の細胞膜表面を認識した。2)12-13.8 抗体を用いたヒト肺がんおよび膵がん組織の免疫組織学的解析したところ、がん組織においてがん細胞を特異的に染色した。さらにその染色強度は肺がんおよび膵がん患者の予後と相関していた。3)島根大学動物実験計画の承認を受け、ヒト膵がん細胞株 MIA PaCa-2 を接種した担がんモデルマウスを作製した。近赤外線を発するインドシアニングリーンで標識した 12-13.8 抗体をマウス尾静脈から静注し、48 時間後に小動物蛍光イメージングシステムを用いて標識抗体の腫瘍部位への集積性を確認した。4)担がんモデルマウスを用いた12-13.8抗体修飾抗がん剤内包リポソームによる腫瘍増殖抑制効果を確認したところ、 抗がん剤(ゲムシタビン)を内包した12-13.8 抗体修飾リポソームは、抗体修飾しなかったものやPBS 投与群などに比べ、明らかな腫瘍抑制効果を示した。 3種類の抗体を用いた免疫沈降産物から質量解析を用いて抗原分子を同定した。モノクローナル抗体 4-6.8 が認識する表面抗原は上皮成長因子受容体(EGFR)であった。 がん細胞における EGFR の意義についてはすでに多くの論文が存在しており、本研究で EGFR が新たに同定できたことで本研究の取った戦略は正しかったことが証明された。分子量の異なる細胞表面タンパク質を認識する他の2種類のモノクローナル抗体 12-13.8 および 10-15.1 については、さらに解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト膵がん細胞株 MIA PaCa-2を免疫源として樹立した、がん細胞表面を認識する3種類のマウスモノクローナル抗体を用いた平成28年度に予定している研究内容、1)膵がん細胞膜表面に存在する抗原分子の質量解析による同定、2)抗原分子の機能解析、3)抗体を用いた免疫組織染色および予後解析、および抗体を用いた担がんモデルマウスを用いた治療実験が研究実績の概要に記載したように、順調に進展しているから。
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Strategy for Future Research Activity |
膵がんの早期診断に向けて、がん組織から血液中に分泌される抗原分子の測定法の開発を行う。膵がん細胞膜表面に出現する抗原分子であれば、膵がん患者の血清中に抗原分子が存在するのではないかと仮定した。血液中の抗原分子を簡便に、かつ高感度で同定するために、サンドイッチ酵素結合免疫吸着法(以下、ELISA)を構築する。そのためにはエピトープの異なる少なくとも2種類の抗体を作製する必要がある。すでに樹立している3種類の抗体の各抗原分子について、分割化した抗原分子の断片を大腸菌で発現させ、まずそれぞれの抗体のエピトープ部位を同定する。次に、エピトープを含まないタンパク質を免疫源として再度ポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を作製する。各抗原分子について、エピトープの異なる抗体の組合せで、サンドイッチELISAを完成させる。血液中の各抗原分子量と病期・予後相関を検討し、早期診断が可能かどうかを検討する。 さらに、抗体を用いた血中循環腫瘍細胞測定法の開発を行う。がんの予後は浸潤・転移に大きく依存しているため、血中循環腫瘍細胞を早期に、かつ確実に検出することができれば、早期診断ばかりではなく治療方針の大きな助けとなる。各抗体は膵がん細胞膜表面を認識するため、血中循環腫瘍細胞を捕捉できる可能性が高い。島根大学医学部医の倫理委員会の承認を受けた上で、転移を有する進行がんや手術操作前後での血中腫瘍細胞測定を行う。各抗体は、Fc 受容体陽性の血球細胞に反応しないように Fab 領域に切断して使用する。保有する抗体の抗原分子陽性、血球マーカー CD45 陰性、DAPI 核内陽性、細胞質サイトケラチン陽性細胞を血中腫瘍細胞候補とし、さらに原発がんと同じ遺伝子変異や原発がんで発現している細胞膜表面タンパク質を有しているかどうかなどで血中腫瘍細胞と判定する。
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Causes of Carryover |
膵がん細胞膜表面に存在する抗原分子の質量解析、抗原分子の機能解析および抗体を用いた免疫組織染色および予後解析に用いている(継続的に購入している)消耗品の購入時期のタイミングが次年度にずれ込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を進めるにあたって必要な膵がん細胞膜表面に存在する抗原分子の質量解析、抗原分子の機能解析および抗体を用いた免疫組織染色および予後解析に用いている消耗品は次年度早々に購入する。
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Research Products
(10 results)