2018 Fiscal Year Research-status Report
開心術後心房細動:機序解明に向けた多角的アプローチと新たな予防法の研究
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16K10643
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
井村 肇 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40281422)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心房細動 / 開心術 / 心筋保護 / マグネシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
日本で開心術は年間5-6万件あるが、術後心房細動(POAF: postoperative atrial fibrillation)は20‐60%にみられる重大な合併症である。POAFは手術半年後の死亡率にまで影響するとされ、その医療費増大額は1人約120万円と試算されている。現在までPOAF発生機序解明は不十分であり満足すべき予防法はない。我々はterminal warm blood cardioplegia(TWBCP)の虚血再還流障害抑性効果及びTWBCPに含まれるマグネシウムの抗不整脈効果に注目し、TWBCPがPOAFを予防するか臨床研究しそのメカニズムの解明に取り組む。平成29年度までにTWBCPを使用した開心術合計22人の心房電位連続記録を行うことができた。このうちPOAFを発症したのは3例で全て大動脈弁置換術後の患者であった。平成30年度は新たに大動脈弁置換術8人の患者からデータ採取を行った。術後心房細動を発症したのは2人であった。これまで分かったことは以下の通りである。 (1) TWBCPを使用した開心術ではPOAFの発生頻度は現在まで16.7%であり従来の報告(40-50%)に比較して著明に少ない。 (2) POAFの発生は5例すべて左側左房での記録が最も早く、POAFの発生する場所には類似性が存在する可能性がある。これは大動脈弁患者でも僧帽弁患者でも同様であった。 (3) POAFは僧帽弁手術よりも大動脈弁置換術で多い。大動脈弁手術患者においても高齢者で多い傾向がある。 (4) TWBCPを使用した手術後では血中マグネシウム濃度が有意に上昇しており術後2-3日目に漸く術前レベルに低下する。マグネシウムの上昇が心房細動発生に抑制的に働いている可能性が考えられるが、マグネシウム変化と心房細動の発症にどのような関係があるか解明するにはさらにデータの蓄積が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当科における開心術後心房細動の発生頻度が予想以上に低いことからデータの蓄積に時間がかかっている。又、心電図解析ではより正確性・精密性を確保する必要があると判断され、これまでの心電図記録紙上での計測ではなく、実際の心電図をコンピューターに画像として取り込み、十分拡大して画面上で各数値を計測することとした。未だ技術的な問題もあり、なかなか測定が思うように進んでいない。さらに、30年度では使用していた心電図モニターとその送信器(病院所有のもの)が修理を繰り返す状況で、遂には修理不能の事態となった。このため症例数が予想以上に少なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初、開心術後心房細動(POAF)の発生頻度が30-40%以上とされることを基本に、TWBCP、プロポフォール、エラスポールといった薬剤のPOAF予防効果を検討することが目的であった。しかしながら29年度の研究結果から、TWBCP及び持続的逆行性心筋保護液注入という我々の行っている独自の心筋保護法がPOAF発生を抑制していることを科学的に検証することが大切であるという判断に至った。昨年に引き続きこれを今年度の方針とし、POAFの発生、左右心房電位、伝導速度の変化と心筋保護液の量、電解質濃度などを中心に測定し記録していく。症例は昨年度と同様大動脈弁置換術を中心に僧帽弁手術を含めて合計30例の記録・解析を目標とする。
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Causes of Carryover |
本研究は当初terminal warm blood cardioplegia(TWBCP), propofol, sivelestatの3種類の心房細動抑制方法を各々100例、計300例で研究する予定であったが、予算の都合等から平成29年度からはTWBCPの効果を集中的に評価することとした。昨年度までに100例のデータ収集を終了する予定であったが、モニターの故障や倫理委員会の手続き更新に時間を要し(介入を伴う臨床研究に対する委員会の方針変更があった為)、現在まで40例(内有効データは30例)となっている。この為未使用予算が発生している。本年度はデータ解析と論文作成に集中する予定であったが引き続きデータ収集を続けることとし、新たに60例を目標にしている。又、モニターにも費用が必要となる。本年度はこうした経費とデータ解析、学会、論文作成に未使用分を含めた予算が必要となる見込みである。
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