2017 Fiscal Year Research-status Report
GLP-1製剤による糖尿病患者の冠動脈バイパスグラフト血管攣縮抑制作用の検討
Project/Area Number |
16K10646
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
蒲生 修治 九州保健福祉大学, 薬学部, 准教授 (20273930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 隆一 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (10094111)
芝 達雄 九州保健福祉大学, 薬学部, 助教 (00634958)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 冠動脈バイパス手術 / 血管攣縮 / インクレチン製剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
冠動脈バイパス手術において、糖尿病患者では非糖尿病患者と比較して移植血管の攣縮リスクが高くなることが知られている。本研究は、糖尿病患者における移植血管攣縮の発症を抑制しうる薬物を探索し、手術成績の向上および予後改善に寄与したいと考えている。その薬物の候補として、経口糖尿病薬であるインクレチン製剤の効果を検討することが本研究の主目的である。 この課題を遂行するうえで、糖尿病によって血管にどんな変化が生じるのかを明確にしておくことはとても重要である。そこで平成29年度には、冠動脈バイパス手術において移植血管として最も用いられている内胸動脈で検討を行った。糖尿病患者の内胸動脈サンプルでは、非糖尿病患者のものと比較して、血管平滑筋細胞膜のセロトニン2A(5-HT2A)受容体のタンパクレベルが有意に高く、それに伴ってセロトニン誘発性の血管収縮反応性が有意に増強されることを報告した(Biol Pharm Bull, 41:820-823, 2018)。この結果と、これまでに当研究室が発表してきたデータを合わせると、糖尿病は血管平滑筋細胞の細胞膜アンジオテンシンⅡ受容体1レベルおよび5-HT2A受容体レベルの上昇、ならびにGqタンパク共役型受容体の下流に存在するシグナル分子の量的/質的変化をもたらし、これらの変化を介してアンジオテンシンⅡおよびセロトニンにより誘発される移植血管攣縮の発症リスクを上昇させると考えられた。 現在は、平滑筋収縮実験における収縮アゴニストをアンジオテンシンⅡおよびセロトニンに絞り、インクレチン製剤の効果に関する検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、提携している病院で施行される冠動脈バイパス手術において、移植に使用しなかった血管を患者から書面で同意を得たうえで提供を受け、それをヒト血管サンプルとして実験に供している。しかしながら、提携先病院の人事異動などの影響や、より侵襲の低い経皮的冠動脈インターベンション法などの広がりによって、冠動脈バイパス手術を施行される症例が減り、得られる血管サンプル数が申請時に見込んでいた数よりも大幅に少なくなった。そして得られた僅かな血管サンプルを、本研究と並行して行う予定であった検討(研究実績の概要欄参照)に優先的に使用しなければならなかったため、研究計画に示したインクレチン製剤の血管攣縮抑制効果の検討は予定通りに進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは安定して血管サンプルが得られる環境を整備するために、新たな提携先病院の開拓を行っていく予定である。また、当研究室に届けられるサンプルの状態を向上させる目的で、提携先病院に対してサンプルの保存法や輸送時の注意事項などの伝達を徹底する。 一方、本研究の目的を完遂するためには、ヒト血管サンプルが十分に得られない時の対策も考えておかねばならない。具体的には、代替可能な部分について、ヒト血管サンプルの代わりに動物の血管や培養ヒト血管平滑筋細胞などを使用し、安定してデータを蓄積できる環境を整備していく。
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Causes of Carryover |
ヒト血管サンプルが予定通り入手できず、研究の進捗が予定よりも遅れている。そのため平成29年度に実施するはずだった実験の着手に至らず、結果として購入する予定であった消耗品や試薬類の購入費が予算よりも大幅に少なくなった。 今年度は、現状では入手困難となりつつあるヒト血管サンプルに固執せず、代替して差し支えない範囲のデータについては、動物の血管サンプルや培養ヒト血管平滑筋細胞を用いてデータを収集していく予定である。そのため動物の購入費、飼育費、培養細胞のメディウム等に支出を予定している。さらに、実験補助のアルバイトを雇用し、補助金の一部は人件費として使用したいと考えている。
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Research Products
(2 results)