2016 Fiscal Year Research-status Report
術後QOLから見た超高齢者大動脈手術の適応限界に関する研究
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16K10650
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山本 浩史 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10270795)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大動脈疾患 / 外科的治療 / 術後遠隔成績 / 術後QOL / 緊急手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】高齢者大動脈疾患では開胸による従来型手術またはステントグラフトが主たる治療法である。緊急例では充分な術前リスク評価が困難であり、80歳以上の超高齢者では術後成績への影響が懸念される。非手術観察例を含めたアンケートによる意識調査の内容を構築するために、大動脈手術の遠隔成績を後方視的に評価した。 【方法】2001年1月から2010年3月までの大動脈手術325例を79歳以下の若年(Y)262例と80歳以上の超高齢(O)63例に分類し、各々の胸部大動脈手術(T)と腹部大動脈手術(A)における待期(EL)群と緊急(EM)群の病院死亡、心大動脈関連死亡回避率(Kaplan-Meier法)を比較した。術後QOL分析はSF-36の結果をYとOの各々についてEL群とEM群を比較した。 【成績】病院死亡はY-T-EL群0例(0%)、Y-T-EM群0例(0%)、Y-A-EL群1例(0.8%)、Y-A-EM群6例(23.1%)、O-T-EL群0例(0%)、O-T-EM群1例(5.8%)、O-A-EL群2例(7.4%)、O-A-EM群1例(9.1%)であった。術後5年の心大動脈関連死亡回避率は全群でEL群とEM群間に差はなかったが、O-T-EM群はO-T-EL群より低い傾向があった。SF-36のスコアをY-EL群、Y-EM群、O-EL群、O-EM群で比較すると身体機能は各々31.4±19.8、26.3±20.9、31.6±17.4、-2.6±8.1で超高齢緊急例で有意に低く、心の健康は各々49.0±11.1、48.7±9.2、50.8±9.8、40.1±10.1で全群が国民標準に近かった。 【結論】80歳以上の高齢者緊急手術では術後の顕著な身体機能低下がQOLに影響を与えているる。 上記の概要より、現在、非手術症例の遠隔期予後とQOLアンケートを行なう準備をしている。すでに研究実施計画書を倫理委員会に提出しており、研究内容の審査結果を待っている状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去データを参考にして意識調査アンケートを作成した。現在、非手術症例の遠隔期予後とQOLアンケートを行なう準備をしている。すでに研究実施計画書を倫理委員会に提出しており、研究内容の審査結果を待っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の内容で進める方策となっている。 1.大動脈瘤有病率調査:県内の循環器を扱う全病院に文書による問い合わせ。①対象:未手術大動脈瘤患者、②調査票を作成し、年齢、性別、現病歴、既往歴、併存疾患とその治療状況、内服薬などのチェック項目を設ける。③血液生化学検査、レントゲン写真、心臓超音波検査、④CTまたはMRによる瘤の病態把握(最大瘤径、範囲)と他の動脈硬化性疾患の有無 2.大動脈瘤疾患の治療に関する患者本人と家族の意識調査。①対象:未手術大動脈瘤患者、②方法:患者および家族に、アンケートまたは個別訪問によって、患者の病態と手術のリスクを説明し、本人と家族の意見を聞く。③非手術(または手術前)患者のQOLの定期的調査(年1回)を行う。④解析方法:生存分析(カプランマイヤー法)とSF-36®による調査および解析 3.手術症例の予後調査。①対象:秋田大学心臓血管外科および関連施設において手術を受けた患者、②方法:患者および家族に、アンケートまたは個別訪問によって、生存の有無、合併症の有無、併存疾患(悪性腫瘍など)の有無、患者や家族の術後の意見を聞く。③術後患者のQOLの定期的調査(年1回)を行う。④解析方法:生存分析(カプランマイヤー法)とSF-36®による調査および解析
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Causes of Carryover |
高齢者大動脈疾患の状況を把握するため、アメリカ胸部外科学会に参加するための費用が必要であった。そのため次年度費用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会出張の費用が生じても今後の研究活動には差支えないよう研究計画が進む見込みである。
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