2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K10668
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清水 良子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30348643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
槇野 香奈子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10772402)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 血管 / 炎症 / 大動脈解離 / 子宮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、急性大動脈解離の危険因子の一つに年齢が挙げられることを踏まえ、急性大動脈解離の発症に血管中膜の細胞老化が与える影響をヒト手術検体とマウス実験モデルの両面から明らかにし、細胞老化阻害薬剤による急性大動脈解離の薬物治療の可能性を模索することである。今年度はマウス飼育施設に感染の問題が生じたことから新たなマウスを使っての大動脈解離モデル作成ができなかったため、動物実験の進捗に遅れが生じている。当施設での動物実験を進めることが困難であったことから、ヒト大動脈解離患者の患部血管標本および血液の収集を行った。このヒト大動脈解離患者血液データの解析から、細胞老化によって誘導される炎症性表現型の代表的な因子としてMMP2,MMP9,IL-6の上昇を見出した。また大動脈解離マウスモデルの血液と血管標本を用いて再度検討を行い、大動脈解離患部で細胞老化マーカーであるSA-β-gal活性の上昇を見出した。さらに東京大学との共同研究を促進し、細胞老化が生体に与える影響の探索の一環として、マウス分娩後子宮における細胞老化の存在と、そのクリアランス機構を新たに見出した。マウス子宮の細胞老化のクリアランス異常が次回の妊娠・分娩の異常と関連することを見出し、生殖組織における老化細胞の生理的・病理的意義を明らかにすることができ、今後はこの子宮で得られた細胞老化クリアランスの知見をさらに大動脈解離をはじめとする血管系にも応用していく予定である。2018年度はマウス飼育施設の感染の問題が解決したため、マウスの大動脈解離モデルの作成を予定通り進める。また細胞老化の鍵因子であるp53ノックアウトマウスの飼育を進める。ヒト大動脈解離血管の凍結切片を作成とSA-β-gal活性検討を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス飼育施設に細菌感染がおこり施設が一時閉鎖されたため、マウス飼育が本年度できなかった。そのため、動物実験の進行が遅れたため、2017年度予定の研究費の使用が遅れた。2018年度は飼育施設の感染問題が解決しマウス飼育が再開されたため、2017年度に予定された動物実験を精力的に行い研究の進捗を予定通りに修正することが可能であると考えている。一方で、共同研究により、生殖組織における細胞老化の生理学的・病理学的意義を新たに見出しており、この知見を今後大動脈解離をはじめとする血管系に応用できることが可能となったため、動物実験の遅れによる研究の遅延を別途埋め合わせることが可能であった。ヒト大動脈解離手術検体については引き続き収集継続し、血管の解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの飼育施設の細菌感染がおこりマウスの飼育が本年度できなかったため、動物実験の進行が遅れた。2018年度はマウス飼育が再開できており、動物実験を精力的に行って実験の進捗の遅れを取り戻す予定である。野生型マウスで大動脈解離モデルを作成し、患部血管の組織学的解析から細胞老化現象および細胞老化の鍵因子であるp53,p21,p16の動きを確認する。また細胞老化に伴う炎症性表現型誘導についての検討を行う。同時に血管平滑筋細胞特異的なp53ノックアウトマウスを作成し、解析を行う。引き続きヒト大動脈解離手術検体の収集と解析を行う。共同研究で進捗が認められる知見はさらに発展させ、生殖組織において見られた細胞老化のクリアランスによる生理学的・病理学的知見が血管系で得られるかどうかを検討していく。
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Causes of Carryover |
マウス飼育施設に細菌感染がおこり施設が閉鎖されたため、マウス飼育が本年度できなかった。ヒト大動脈解離手術検体収集が患者の同意が予定通り得られなかったために、ヒト検体での解析にも遅れが認められた。動物実験とヒト臨床検体を用いた研究の進行が遅れたため、2017年度予定の研究費の使用が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2018年度は飼育施設の感染問題が解決しマウス飼育が再開されたため、2017年度に予定された動物実験を精力的に行い研究の進捗を予定通りに修正することに次年度使用額を用いる計画である。ヒト検体についても、引き続き収集を継続し、血管の解析を進めていくことに次年度使用額を用いる予定である。2017年度は共同研究により、生殖組織のおける細胞老化の生理学的・病理学的意義と細胞老化クリアランスシステムを新たに見出しており、2018年度はこの知見を血管系に応用するため、次年度使用額を用いて、飼育再開可能となったマウスで精力的に大動脈解離モデルを作成し、細胞老化に加えてそのクリアランスシステムも検討することで予定通りの成果を得ることが可能であると考えている。
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Research Products
(1 results)