2016 Fiscal Year Research-status Report
人工赤血球が持つ肺虚血再還流障害抑制効果の臨床応用を目指した、臓器保護の研究
Project/Area Number |
16K10686
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
宮崎 拓郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00584749)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 智史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30437884)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
畑地 豪 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (80437889)
酒井 宏水 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70318830)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 肺移植 / 臓器保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回我々は、通常廃棄される有効期限の過ぎた献血より作成される人工赤血球(ヘモグロビン小胞体)が、小粒子径でありながら高い酸素運搬能力があることに注目した。人工赤血球を肺移植の分野に応用すれば、移植肺の虚血再還流障害を予防し肺移植の成績が向上できる可能性が高い。さらに良好な機能を有したまま、長時間の臓器保存が可能となれば、ゆくゆくは心臓死ドナーへの応用も期待できる。 虚血時間を考慮すると臓器搬送に地理的に不利とされる地方の病院でも安全な肺移植が施行できる可能性がある。そのために我々は人工赤血球(ヘモグロビン小胞体;HbV)を臨床肺移植において臓器保護に応用するために バイオリアクターを用いたex vivo lung perfusion systemで基礎研究を行った。 具体的には摘出したラット生体肺に培養液のみを灌流する群(Control群)と人工赤血球と培養液を1:9で配合した液を灌流する群(HbV群)に分けて、ex vivo lung perfusion systemを用いて48時間灌流した。 人工赤血球を配合した灌流液の方が肺保護に有用であることを証明するために、HE染色およびTUNEL染色による病理組織学的所見から比較検討を行い、その後アポトーシス関連遺伝子のreal-time PCR法を行い、Hb群でアポトーシスが抑制されることを証明した。この結果は人工赤血球を用いた新しい灌流システムが肺移植においてドナー肺保護につながる可能性の第一歩と考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初にex vivo lung perfusion systemの最適な灌流条件を検討した。具体的には灌流圧の測定、灌流液のpH調整、FBS混和による膠質浸透圧の調整、培養液と人工赤血球の配合比率等である。次に培養液のみを灌流する群(Control群)、人工赤血球と培養液を1:9で配合した液を灌流する群(Hb群)に分けて、摘出したラット生体肺をバイオリアクターを用いたex vivo lung perfusion systemで48時間灌流した。病理組織学的検討を行い、HE染色では両群に明らかな差は認めなかった。TUNEL染色ではControl群よりもHbVのほうがアポトーシスを抑制できることがわかった。灌流後のラット肺組織からRNA抽出してcDNA合成し、real-time PCR法を用いてアポトーシス関連遺伝子発現(AIF, Bax)の解析を行った(n=3)。AIFではControl群のほうがHbV群よりもRNA発現が多い傾向にあった。BaxではRNA発現に両群で差は認めなかった。低酸素刺激によって発現が誘導される膜貫通型タンパクであるCarbonic Anhydrase Ⅸ (CA9)を用いてWestern blot法や免疫染色で両群を比較した。Western blotでは肺組織でのCA9の発現自体が少ないのかControl群、HbV群ともに目的としたバンドが検出できなかった。一方でCA9の免疫染色では、人工赤血球群で人工赤血球そのものに強い発現が認められた。
|
Strategy for Future Research Activity |
人工赤血球が低酸素誘導蛋白CA9の発現に関与するのかしないのか、ex vivo lung perfusion systemを使用したモデルでさらに検討を行う。また、高酸素運搬能を有する人工赤血球を配合した灌流液を用いることが肺保護につながることを検証する実験を継続する。
|
Causes of Carryover |
実験の遅れによって器財購入が少なくなったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な人工赤血球、器財、ラットの購入等に充てる予定。
|