2016 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイント阻害薬の新規バイオマーカーの抽出とその臨床応用
Project/Area Number |
16K10687
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 弘行 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30322340)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん免疫療法 / 免疫チェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
非小細胞肺癌を中心に免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が実臨床で広く使用されるようになるにつれ、ICIの効果を予測するバイオマーカーの抽出が重要と考えられるようになった。腫瘍におけるPD-L1分子の発現は有力なバイオマーカーとされ、すでにコンパニオン診断薬として承認され臨床で用いられている。しかしながら、PD-L1の発現のみでは十分でないことが明らかにされつつある。ごく最近では、ICIの効果予測因子として腫瘍の遺伝子変異(TMB)の多寡が重要であるとする報告がなされている。ただし、TMBの解析には次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析が必要であり、実臨床で用いるのは、少なくとも現時点では現実的ではない。そこで我々は肺癌における遺伝子変異の多寡と治療効果との関連を、すでに確立している全エキソーム解析等を用いて網羅的に解析し,肺癌における有用性を再確認するとともに,実臨床でも応用可能な,より簡便な評価手法の開発を試みた。 本年度はTMBの解析を終了した100例について、個別の代表的な遺伝子のsomatic mutationや網羅的遺伝子発現に加え、PD-L1の発現、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの 免疫学的パラメータとの関連について詳細に検討した。その結果、TMBのsurrogate markerとなる遺伝子異常を明らかにしており、国際学会等で発表した。さらに、追加症例についても解析中である。 また、個々の症例から採取した末梢血単核球(PBMC)を用いて、in vitroの解析も開始した。ごく最近の研究でTMBはバイオマーカーとしてPD-L1に匹敵、或いはそれを上回る有用性があることが示されたばかりであるが、この結果は我々のこれらの解析結果を支持するもので、今後、実臨床への応用を検討した場合に非常に重要となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず、肺癌臨床検体を用いた全エキソーム解析と各種パラメータの関連性を解析し、TMBと関連する分子群の抽出を行うこととしていた。上述したように我々はすでに、100例を超える肺癌検体のTMB解析を行い、TMBの多寡と有意に関連する遺伝子として新たにEGFRとP53を抽出、同定し報告した。またミスマッチ修復遺伝子との関連についても予定どおり検討を行っているが、ミスマッチ修復遺伝子に異常がある肺癌は頻度が少なく、実用性に乏しいと判断し、これ以上の検討は行わないこととした。 さらに、TMBはPD-L1やTILといった主要な免疫学的パラメータとは関連しないことを明らかにしており、この結果から、ICIの効果予測バイオマーカーとしてはそれぞれ単独でみるよりこれらの因子を総合的に判断することが重要であることを提唱している。我々は、TMBのsurrogate markerであるP53に加え、PD-L1およびTILを加えた3つの因子を組みあせたものをimmuno-active score (iSCORE) として用いるべきことを報告した。現在は当科でICIを用いた治療を行っている症例を対象にこのスコアの効果予測因子としての重要性を後ろ向きに解析中である。今後前向き検討も予定している。 本年度は上記に加え、肺癌臨床検体を用いた In Vitro解析も行うこととしていたが、こちらについてもすでに肺癌症例のPBMCを用いて、T細胞の活性化能の解析を行っている。本検討により、症例ごとに活性化能が明らかに異なっていることを明らかにしており、今後はこれらの活性化能が腫瘍のTMBやPD-L1の発現等との関連を検討しているところである。上述のとおり本年度は予定した検討課題について解析を進めており、新たな知見も得るなど、概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、研究は概ね順調に進行していると考えているが、今後さらに研究を推進していくため、以下の項目を検討している。 1)本研究に特化した研究スタッフの配置:本年度前半に本研究に中心的に関わるスタッフを配置できる予定である。 2)他領域との連携:化学領域の研究者と連携し、T細胞レセプター の解析についても進めている。またTMBに関連していわゆるNeo-Antigenの解析や、複雑な免疫パラメータを用いたバイオマーカー解析の目的として、Artificial Intelligence (AI)を用いた技術の開発を海外研究者とともに進める予定である。 3)学内研究体制のさらなる充実:本研究に関与する研究者を2017年度から増員しており、さらに本研究を充実させる予定である。
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Causes of Carryover |
予定の研究はすべて行ったが、効率的な執行に努め、また、急を要さない物品の購入を控えたため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
さらなる研究の推進のため、解析費用や、実験用消耗品などの物品費として使用予定である。
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Research Products
(34 results)
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[Journal Article] Expression of Notch1 and Numb in small cell lung cancer.2017
Author(s)
Kikuchi H, Sakakibara-Konishi J, Furuta M, Yokouchi H, Nishihara H, Yamazaki S, Uramoto H, Tanaka F, Harada M, Akie K, Sugaya F, Fujita Y, Takamura K, Kojima T, Harada T, Higuchi M, Honjo O, Minami Y, Watanabe N, Oizumi S, Suzuki H, Ishida T, Dosaka-Akita H, Isobe H, Munakata M, Nishimura M.
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Journal Title
Oncotarget
Volume: 8
Pages: 10348~10358
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Immunohistochemical profiling of receptor tyrosine kinases, MED12, and TGF-βRII of surgically resected small cell lung cancer, and the potential of c-kit as a prognostic marker.2017
Author(s)
Yokouchi H, Nishihara H, Harada T, Ishida T, Yamazaki S, Kikuchi H, Oizumi S, Uramoto H, Tanaka F, Harada M, Akie K, Sugaya F, Fujita Y, Takamura K, Kojima T, Higuchi M, Honjo O, Minami Y, Watanabe N, Goto A, Suzuki H, Dosaka-Akita H, Isobe H, Nishimura M, Munakata M.
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Journal Title
Oncotarget
Volume: 8
Pages: 39711~39726
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Analysis of chromosome and chromosomal translocation after a single CT scan in adults.2016
Author(s)
Abe Y, Miura T, Yoshida A M, Ujiie R, Kurosu Y, Kato N, Katafuchi A, Tsuyama N, Kawamura F, Ohba T, Inamasu T, Shishido F, Noji H, Ogawa K, Yokouchi H, Kanazawa K, Ishida T, Ohsugi J, Suzuki H, Ishikawa T, Kamiya K, Sakai A.
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Journal Title
Journal of Radiation Research,
Volume: 57
Pages: 220-226
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] 福島県における非小細胞肺癌の遺伝子検査の現状 ALK陽性肺癌における診断と治療に関するアンケート結果から.2016
Author(s)
峯村浩之, 横内 浩, 金沢賢也, 石田 卓, 藤生浩一, 長谷衣佐乃, 安藤真弘, 大杉純, 樋口光徳, 鈴木弘行, 山縣俊介, 松村輔二, 米地 敦, 高瀬裕子, 勝浦 豊, 大石明雄, 棟方 充.
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Journal Title
福島医学雑誌
Volume: 66
Pages: 76-83
Peer Reviewed
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[Presentation] Comprehensive genomic analysis with immunological parameters to obtain the biomarkers for immune checkpoint inhibitors (ICIs) in Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC)2017
Author(s)
Yuki Owada, Satoshi Muto, Hironori Takagi, Takuya Inoue, Yuzuru Watanabe, Takumi Yamaura, Mitsuro Fukuhara, Naoyuki Okabe, Yuki Matsumura, Takeo Hasegawa, Daisuke Tanaka, Emi Ito, Hideaki Nanamiya, Jun-ichi Imai, Takao Isogai, Shinya Watanabe, Hiroyuki Suzuki
Organizer
ASCO-SITC Clinical Immuno-Oncology Symposium
Place of Presentation
Orlando, FL (USA)
Year and Date
2017-02-23 – 2017-02-25
Int'l Joint Research
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[Presentation] 肺腺癌におけるFAM83Bの機能解析2016
Author(s)
山浦 匠, 岡部直行, 大和田有紀, 井上卓哉, 渡邊 譲, 福原光朗, 長谷川剛生, 樋口光徳, 江崎淳二, 和栗 聡, 磯貝隆夫, 渡辺慎哉, 鈴木弘行.
Organizer
第57 回日本肺癌学会学術集会
Place of Presentation
福岡国際会議場(福岡県福岡市)
Year and Date
2016-12-19 – 2016-12-21
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[Presentation] 小細胞肺癌におけるNotch1、Numbに関する検討2016
Author(s)
菊池 創, 榊原 純, 横内 浩, 西原広史, 浦本秀隆, 原田眞雄, 山崎成夫, 秋江研志, 菅谷文子, 藤田結花, 荻 喬博, 小島哲弥, 原田敏之, 樋口光徳, 本庄 統, 南 幸範, 渡部直己, 鈴木弘行, 棟方 充, 西村正治, 北海道肺癌臨床研究会
Organizer
第57 回日本肺癌学会学術集会
Place of Presentation
福岡国際会議場(福岡県福岡市)
Year and Date
2016-12-19 – 2016-12-21
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[Presentation] NSCLCにおける分子免疫プロファイル解析:免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカー抽出の可能性2016
Author(s)
大和田有紀, 井上卓哉, 渡邊 譲, 福原光朗, 山浦 匠, 武藤哲史, 松村勇輝, 長谷川剛生, 樋口光徳, 七宮英晃, 磯貝隆夫, 渡辺慎哉, 鈴木弘行.
Organizer
第57 回日本肺癌学会学術集会
Place of Presentation
福岡国際会議場(福岡県福岡市)
Year and Date
2016-12-19 – 2016-12-21
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[Presentation] 免疫療法の基礎を学ぶ 従来型免疫療法と免疫チェックポイント阻害薬 肺がんに対するがんワクチン療法の現状と展望2016
Author(s)
鈴木弘行, 大和田有紀, 井上卓哉, 渡邊 譲, 福原 朗, 山浦 匠, 武藤哲史, 松村勇輝, 長谷川剛生, 大杉 純, 星野実加, 樋口光徳.
Organizer
第57 回日本肺癌学会学術集会
Place of Presentation
福岡国際会議場(福岡県福岡市)
Year and Date
2016-12-19 – 2016-12-21
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[Presentation] 肺がんのバイオマーカー探求 非小細胞肺癌における免疫チェックポイント阻害薬の新たなバイオマーカー抽出の可能性2016
Author(s)
大和田有紀, 井上卓哉, 渡邊 譲, 福原光朗, 山浦 匠, 武藤哲史, 松村勇輝, 長谷川剛生, 樋口光徳, 七宮英晃, 今井順一, 磯貝隆夫, 渡辺慎哉, 和栗 聡, 鈴木弘行.
Organizer
第54回日本癌治療学会学術集会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
Year and Date
2016-10-20 – 2016-10-22
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[Presentation] 肺腺癌におけるFAM83Bが増殖シグナルに及ぼす影響についての検討2016
Author(s)
山浦 匠, 岡部直行, 高木玄教, 大和田有紀, 井上卓哉, 渡邊 譲, 福原光朗, 武藤哲史, 松村勇輝, 長谷川剛生, 米地 敦, 星野実加, 大杉 純, 樋口光徳, 江崎淳二, 和栗 聡, 鈴木弘行
Organizer
第33回日本呼吸器外科学会総会
Place of Presentation
国立京都国際会館(京都府京都市)
Year and Date
2016-05-12 – 2016-05-13
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[Presentation] 高齢者肺癌に対する外科治療成績と臨床的特徴の検討―福島県多施設共同後向き調査試験―2016
Author(s)
大和田有紀, 山浦 匠, 福原光朗, 武藤哲史, 松村勇輝, 大杉 純, 星野実加, 樋口光徳, 高木玄教, 長谷川剛生, 藤生浩一, 渡邊 譲, 米地 敦, 岡部直行, 塩 豊, 井上卓哉, 管野隆三, 鈴木弘行.
Organizer
第33回日本呼吸器外科学会総会
Place of Presentation
国立京都国際会館(京都府京都市)
Year and Date
2016-05-12 – 2016-05-13
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[Presentation] Functional analysis of family with sequence similarity 83, member B in lung adenocarcinoma.2016
Author(s)
Takumi Yamaura, Naoyuki Okabe, Hironori Takagi, Yuki Owada, Takuya Inoue, Yuzuru Watanabe, Mitsuro Fukuhara, Satoshi Muto, Yuki Matsumura, Takeo Hasegawa, Atsushi Yonechi, Mika Hoshino, Jun Osugi, Mitsunori Higuchi, Junji Ezaki,Sathoshi Waguri, Hiroyuki Suzuki.
Organizer
AACR Annual Meeting 2016
Place of Presentation
New Orleans, Louisiana (USA)
Year and Date
2016-04-16 – 2016-04-20
Int'l Joint Research
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[Presentation] 高齢者肺癌切除例の他病死も含む予後予測因子としてのGlasgow prognostic scoreの有用性の検討2016
Author(s)
大杉 純, 大和田有紀, 渡辺 譲, 井上卓哉, 山浦 匠, 福原光朗, 武藤哲史, 岡部直行, 松村勇輝, 長谷川剛生, 米地 敦, 星野実加, 樋口光徳, 塩 豊, 鈴木弘行.
Organizer
第116回日本外科学会定期学術集会
Place of Presentation
大阪国際会議場(大阪府大阪市)
Year and Date
2016-04-14 – 2016-04-16
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[Presentation] 福島県立医大における肺癌ゲノム解析プロジェクト2016
Author(s)
大和田有紀, 松村勇輝, 山浦 匠, 武藤哲史, 大杉 純, 星野実加, 樋口光徳, 田中大輔, 七宮英晃, 今井順一, 伊藤恵美, 和栗 聡, 渡辺慎哉, 磯貝隆夫, 竹之下誠一, 鈴木弘行, 後藤満一.
Organizer
第116回日本外科学会定期学術集会
Place of Presentation
大阪国際会議場(大阪府大阪市)
Year and Date
2016-04-14 – 2016-04-16
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[Presentation] 肺腺癌におけるFAM83Bが増殖シグナルに及ぼす影響についての検討2016
Author(s)
山浦 匠, 岡部直行, 大和田有紀, 武藤哲史, 松村勇輝, 大杉 純, 星野実加, 樋口光徳, 江崎淳二, 和栗 聡, 鈴木弘行.
Organizer
第116回日本外科学会定期学術集会
Place of Presentation
大阪国際会議場(大阪府大阪市)
Year and Date
2016-04-14 – 2016-04-16
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[Presentation] 術中胸腔洗浄細胞診陽性肺癌の臨床的検討2016
Author(s)
星野実加, 大和田有紀, 山浦 匠, 松村勇輝, 大杉 純, 樋口光徳, 鈴木弘行.
Organizer
第116回日本外科学会定期学術集会
Place of Presentation
大阪国際会議場(大阪府大阪市)
Year and Date
2016-04-14 – 2016-04-16
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[Presentation] 胸腺上皮性腫瘍手術症例の臨床的特徴と術後成績2016
Author(s)
樋口光徳, 大和田有紀, 福原光朗, 山浦 匠, 武藤哲史, 松村勇輝, 大杉 純, 星野実加, 鈴木弘行.
Organizer
第116回日本外科学会定期学術集会
Place of Presentation
大阪国際会議場(大阪府大阪市)
Year and Date
2016-04-14 – 2016-04-16