2017 Fiscal Year Research-status Report
新規肺腺がん細胞株を用いたがん浸潤・転移機構の解析
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16K10689
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 之俊 北里大学, 医学部, 教授 (90321637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 裕康 北里大学, 医学部, 助教 (30769831) [Withdrawn]
内藤 雅仁 北里大学, 医学部, 助教 (50648730)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺癌 / 腺癌 / 転移 / 細胞株 / 網羅的解析 / 遺伝子異常 / タンパク発現 / 微乳頭状 |
Outline of Annual Research Achievements |
微乳頭状構造を有する肺腺癌から新たに樹立した細胞株(Ku-Lu-MPPt3)を用いて、下記のような転移・浸潤機構の解析を行った。
1. マウスにおける肺癌転移モデルの作成と転移巣における微小環境の検索:肺内ならびに肺の所属リンパ節転移モデルを作成するために、細胞株(Ku-Lu-MPPt3)を直接肺実質に移植し、1ヵ月後と2ヵ月後に転移巣の有無を病理学的に検索した。その結果、安定した転移巣形成が観察されなかったため、他の手法として尾静脈からの移植を試みている。 2. がんの浸潤・転移能との関連が示されているWnt5a-Ror2,Ror1シグナルの解析:本細胞株における Wnt5a,Ror2,Ror1の発現レベルの解析については、RT-PCRを用いて検索を行った。 その結果、Wnt5aおよびRor2の発現はポジティブコントロールに比較して低値を示した。これに対し、Ror1では高発現を認めた。さらに、ウェスタンブロッティングを用いたタンパク解析およびヒト組織を用いた免疫組織化学的検討においても同様の結果が得られた。以上から、本細胞株の浸潤にRor1が関与している可能性が示された。 3. 遺伝子およびタンパクの網羅的解析:細胞株(Ku-Lu-MPPt3)から2種類の異なる形態をもつ細胞を単離し、それらから抽出したRNAより合成したcDNAを用いて網羅的マイクロアレイ解析を行った。その結果、発現に差のある遺伝子が135,750個同定され、その増減共に10倍以上の差異を示す遺伝子は595個であった。これらの中からさらにKeyとなる遺伝子の絞り込みを行う予定である。とくに、上皮間葉移行に関連する遺伝子発現の差がみられる傾向が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績概要のごとく,細胞株(Ku-Lu-MPPt3)を用いたWntシグナル解析と遺伝子異常の解析は概ね順調に遂行されている.ただし,肺転移ならびに所属リンパ節転移モデルの作成に時間を要している.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞株(Ku-Lu-MPPt3)ががんの転移・浸潤モデルとして有用であることが証明されたため、次年度は下記の研究を推進する。
1. 安定した肺転移ならびに所属リンパ節転移モデルの作成:増殖に時間を要する細胞株のため,次年度は移植細胞の生着と増殖に必要な環境を整備する. 2.Wntシグナルに関しては,Ror1の活性化が認められたため,MMPsの発現誘導や浸潤能の亢進が想定される.したがって,qRT-PCR法,ELISA法によるMMPsの発現解析やマトリジェル浸潤能アッセイ,semi-3D浸潤能アッセイなどによる浸潤能の測定を行うとともに,Ror1の発現をsiRNAにより阻害し,Ror1シグナルのMMPsの発現誘導や浸潤能における寄与のvalidationを行う. 3. 本細胞株特有の遺伝子異常を絞り込み,転移・浸潤あるいは上皮間葉移行に関連する変化を特定する.それらが証明された場合,遺伝子の阻害等による腫瘍増殖・転移の変化を検索する.
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Causes of Carryover |
肺転移ならびに所属リンパ節転移モデルの作成に時間を要しているため、動物実験に使用する経費を次年度へ繰り越した。
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