2016 Fiscal Year Research-status Report
くも膜下出血後の早期脳障害における脳細動脈の機能障害の解明と改善
Project/Area Number |
16K10716
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村田 貴弘 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (80533322)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | くも膜下出血 / 早期脳障害 / カリウムチャンネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、くも膜下出血(SAH)後の早期脳障害(early brain injury: EBI)による脳細動脈の血管調節機能の低下、特にカリウムチャンネルの機能低下を調査し、その機能が活性酸素捕捉薬で回復するか解明し、SAH後のEBIに対する有効な治療方法を開発することにある。 脳細動脈の血管調節機能に関与する細胞膜のKCの機能障害がEBIにおいて起きていると推測されるため、ATP依存性カリウムチャンネルの機能障害があるのかどうか、活性酸素捕捉薬がEBIにおける脳細動脈の血管調節機能障害を改善するかどうか、を明らかにするために研究を行っている。 平成28年度は、ラットのSAH群とシャム手術群を作成し、両群においてATP依存性カリウムチャンネル作動薬pinacidilによる脳細動脈の血管拡張を計測し、EBIによる脳細動脈機能低下を調査し検討した。結果、まずSAH群とシャム手術群の頭蓋内圧を比較したところ、基準値は有意差を認めなかった。SAH群では大槽内に自己血を注入した直後に、有意に著明な頭蓋内圧の上昇を確認した。両群より摘出した脳細動脈の生理的内圧負荷後の血管緊張を両群で比較したところ、SAH群においてシャム手術群より有意に血管緊張の亢進を認めた。シャム手術群より摘出した細動脈にpinacidilを投与すると、濃度依存的に血管拡張を認めた。SAH群より摘出した細動脈に、pinacidilを投与すると血管拡張を認めたが、シャム手術群と比較して有意に抑制されていた。 以上から、まずSAH群において生理的内圧負荷後の血管緊張が亢進していたことから、SAHのEBIにおいて脳細動脈の機能障害が行っていることが確認され、その機能障害の一つとしてATP依存性カリウムチャンネルの機能障害が起きていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラットのくも膜下出血群の作成に時間を要しており、若干研究の進捗が遅れているものの、推測通りの結果を得ており、順調である
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は前年度に引き続き、くも膜下出血群、生理食塩水群、シャム手術群のそれぞれにおいてATP依存性カリウムチャンネル作動薬を使用し、脳細動脈の拡張機能を調査し検討する。またくも膜下出血群、生理食塩水群、シャム手術群のそれぞれの細動脈において、活性酸素捕捉薬であるedaravoneを投与し血管反応を測定、その影響を調査する。ここまでの研究成果の学会発表を行い、議論を深め論文作成に繋げる。
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Causes of Carryover |
デジタルで精度の高いリアルタイムの実測値が測定できる頭蓋内圧測定用コンピューターと、データ解析ソフトウェアの購入を予定していたが、PCやOSのアップデートが重なり、ソフトウェアが間違いなく作動するかなどを確認する必要があり、購入を控えたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて、デジタルで精度の高いリアルタイムの実測値が測定できる頭蓋内圧測定用コンピューターと、データ解析ソフトウェアの購入に使用する予定である。
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