2017 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来神経細胞移植後の運動皮質再構築の分子メカニズムの解析と治療応用
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16K10744
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
上田 裕司 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (00223470)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生医学 / 神経細胞移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における脳卒中の患者数は現在約150万人といわれ、毎年25万人以上が新たに発症する。 「寝たきりになる原因」の3割近くが脳血管疾患であり、全医療費の1割近くが脳卒中診療に使われている。脳卒中の患者は2020年には300万人を超すと予想されている。 我々は片麻痺モデルに対してヒトiPS細胞由来神経細胞移植を行ってきた。そこでは神経細胞移植が運動機能を著明に改善させた。リーリンは神経細胞の移動と運動皮質の層構造形成の制御を補助する巨大蛋白質として同定され、現在では神経の機能発現に重要に関わることが知られている。最近になり統合失調症、自閉症をはじめとした種々の中枢神経系の関わる疾患で異常を示す事が示されてきた。我々の片麻痺モデルマウスに神経細胞移植を行う実験系においても、炎症細胞と移植細胞はリーリンを産生していた。この産生されたリーリンはオートクリンとパラクリンの両者のメカニズムで神経組織修復をもたらした。 移植細胞はリーリンの受容体であるApoE受容体とVLDL受容体を充分量発現しており、リーリンを受け取ることで細胞内刺激伝達系でその下流に位置するDisabled1のリン酸化を引き起こした。リン酸化Disabled1はその下流に位置するGSKベータのリン酸化も誘導した。 その後の事象として神経細胞の遊走に重要に関わる接着因子であるインテグリンとNカドヘリンの発現を誘導した。移植細胞はリーリンに暴露後、損傷部皮質まで遊走した。そののち損傷部皮質で神経ネットワークを再構築した。損傷部皮質まで移動した神経幹/前駆細胞は移動の過程で皮質運動神経への分化を伴いFetzf2やCTIP2などの一次運動神経マーカーを発現した。これらの成績は、片麻痺モデル動物への神経幹/前駆細胞移植ではリーリンがその組織学的な修復と機能回復に重要に関わることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は非常に良好な形で進行している。 これまでの上記の成績を論文として投稿する準備もほぼ出来ており、最終確認後に投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの実験結果をin vivoで確認する。そのためにリーリン経路に遺伝子レベルで異常を持つKOマウスあるいは遺伝子異常マウスを使用して、この知見の裏をとる予定である。
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Causes of Carryover |
研究は順調な形で進行している。 研究経費の使用額は当初より少ないが、想定の範囲内である。 次年度には遺伝子改変動物を用いた実験を予定しており、それにも使用するが、研究計画そのものに大きな変更はない。 また得られるであろう知見も大きな変更はない。
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Research Products
(1 results)