2016 Fiscal Year Research-status Report
非ウイルス的遺伝子導入法による自殺遺伝子幹細胞療法の開発とグリオーマ治療への応用
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16K10752
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
鮫島 哲朗 浜松医科大学, 医学部, 講師 (00295213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60198405)
山崎 友裕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (40781050)
小泉 慎一郎 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (10456577)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳腫瘍学 / 自殺遺伝子療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性グリオーマに対する単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSVtk)/ガンシクロビルシステム (GCV)による自殺遺伝子療法の遺伝子産物の輸送体として、腫瘍指向性を有する幹細胞を用いた自殺遺伝子幹細胞療法の検証を行ってきており、本研究ではHSVtk遺伝子を挿入したエピソーマルベクターを作製し、電気穿孔法で幹細胞に導入し、遺伝子挿入のない安全なTK幹細胞療法の開発と遺伝子産物の新規デリバリーシステムの構築を目的とした。そこでpreliminaryな実験としてプラスミドベクターを用いて条件検討を行った。作成したプラスミドベクターはゲノムサイズが約7.5kbでCAGプロモーター制御下でHSVtk遺伝子を発現し、HSVtk遺伝子のレポーターとしてEGFP遺伝子を配列した。幹細胞源としてアデノウイルスベクターにより多能性誘導因子を体細胞内に一過性に発現させることで樹立されたマウスiPS細胞を使用し、レチノイン酸を添加することで神経幹細胞に分化誘導後に電気穿孔法を用いて、宿主ゲノムに外来遺伝子の挿入のない治療細胞の作成を行った。電気穿孔法による遺伝子導入においては様々な条件検討を重ね、40%程の導入効率を得た。腫瘍細胞の培養上清への治療細胞の遊走能に与えるエレクトロポレーションの影響を観察するため、Matrigel invasion chamberを用いた実験を行った。結果はエレクトロポレーションを実施後day5の時点において繊維芽細胞と比較して有意な遊走能を認め、またエレクトロポレーション未実施の場合と同等の遊走能を認めた。次いでバイスタンダー効果の検証を行った。エレクトロポレーションを実施後day5に各割合で治療細胞とGL261細胞を混合し、ガンシクロビルを投与したところガンシクロビル非投与の場合と比較して1/16程度の治療細胞で有意に殺細胞効果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト間葉系幹細胞にHSVtk遺伝子を配列したエピソーマルベクターを導入した治療細胞の作成を目指して、現在までpreliminaryなin vtro実験を実施でき良好な結果を得ている。エレクトロポレーションによる遺伝子導入が幹細胞に与える影響についてのデータが集積されてきており、速やかにエピソーマルベクターによる遺伝子導入実験に移行できると予想される。ただ、使用したプラスミドベクターと比較して計画しているエピソーマルベクターのゲノムサイズが大きいため、遺伝子導入効率が低下する可能性がある。プラスミドベクターと比較して遺伝子導入効率が極端に低くなる場合は、自己増殖するエピソーマルベクターの特性を生かし、薬剤選択を行って治療細胞の発現効率を高める必要があるかもしれない。このため作成するエピソーマルベクターには薬剤耐性遺伝子を配列することとする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様、比較的容易に作成でき、構成遺伝子もシンプルなプラスミドベクターによる治療細胞を用いた実験を先行させながら実験を進めて行く。現在までにプラスミドベクターによる治療細胞を用いたin vitro実験は概ね終了しており、本治療法の有効性について期待できる結果を得ている。一方で、導入効率は40%に留まり、よりゲノムサイズの大きいエピソーマルベクターを使用した場合の導入効率はより低くなることが予想される。このため作成するエピソーマルベクターには薬剤耐性遺伝子を配列し薬剤選択を行えるようにしておく。 さらに、エピソーマルベクターによる治療細胞実験に先行して、プラスミドベクターによる治療細胞を用いたin vivo実験を進める。腫瘍形成抑制実験(in vivo バイスタンダー 効果の評価)ではGL261-luc細胞(ルシフェラーゼ遺伝子が導入されており、バイオルミネッセンス法にて腫瘍細胞数を発光強度で推定できる)に対し、治療細胞の比率を徐々に下げて混合した細胞液(1/4~1/64)をマウス脳内に共移植し、その後GCVまたはPBSを10日間腹腔内投与し、発光強度、生存期間を比較し、腫瘍形成抑制に必要な最小の治療細胞の比率を検証する。またin vivo 遊走能の確認のためマウス右脳にGL261-luc細胞を移植1 週間後に対側の左脳に色素で蛍光した治療細胞移植し、その1週間または2週間後に脳の凍結切片を作製し蛍光免疫組織学的検査を行う。さらに腫瘍縮小実験治療実験)のためGL261-luc 細胞のマウス脳内移植1週間後に治療細胞を腫瘍内に移植し、10日間GCVまたはPBSを腹腔内投与し、既存腫瘍の大きさを経時的にIVIS200にて観察する。さらに生存期間を観察する。このデータをもとにエピソーマルベクターによる治療細胞を用いたin vivo実験を進めて行く。
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Causes of Carryover |
これまで概ね研究計画に沿った実験が行われており、実験遂行者の中で大学院生の実験手技のrunning curveの上昇に伴い、ピペットやmediumの使用量が当初の計画より減少したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
さらに実験手技のブラッシュアップを行いながら実験を進めて行くことに変わりはない。今後動物実験を実施することとなるが、麻酔法としてよりマウスの侵襲を低減できる三種混合麻酔を本実験で導入する予定であり、麻酔薬の購入費用に充当することとする。
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