2016 Fiscal Year Research-status Report
癌の代謝とエピゲノム異常をつなぐDNA脱メチル化酵素TETの神経膠腫における役割
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16K10758
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中原 由紀子 佐賀大学, 医学部, 病院講師 (50380770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 竜也 佐賀大学, 医学部, 教授 (40281216)
若宮 富浩 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (50773769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 悪性脳腫瘍 / 癌の代謝 / TET |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの代謝という側面とエピゲノム異常という側面の両者を橋渡す位置に存在するTET (ten-eleven translocation) という分子に注目した。TETは血液系腫瘍で発見されTET1, 2, 3があることが知られている。TET1, 2, 3のうち、どれが癌化に関与しているかは、それぞれの癌腫により異なる。まず膠芽腫細胞株のTET1,2,3の遺伝子発現を評価した。膠芽腫細胞株の種類およびTETのサブタイプによっても発現量が異なっていることが分かった。低酸素条件下でTETの発現が低下するという報告もあるが、今回我々が行った実験では、有意な変化は指摘できなかった。しかし、がんの微小環境のひとつとして低酸素状態を検討する際、単に低酸素状態に暴露した場合と、低酸素と正常酸素状態に交互に暴露した場合、がん細胞は異なる変化を来すこともほかの癌腫では報告されている。我々は、さまざまな低酸素条件をあたえ、さらに検討していく。 IDH1変異型幹細胞株と、低酸素条件下に培養された膠芽腫細胞株と腫瘍幹細胞株のTET活性、蛋白発現を評価し、TETの発現が低下し機能が抑制された細胞株(低発現株X)を決定する。これらの細胞株にTET遺伝子を導入、強制発現させ、この遺伝子がtumor suppressor geneであることを証明する。さらに、TET遺伝子によりメチル化制御を受けている遺伝子群を同定する。悪性神経膠腫の発生機序に、TETがどのように関与しているか、さらにTETによってエピゲノム調節を受けている遺伝子についても検索する。治療抵抗性を示す原因として考えられている腫瘍幹細胞(glioma stem cells)、さらにはがん微小環境としての低酸素環境でのTETの変化に、着目し研究を進め、代謝異常とエピゲノム異常のつながりを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・正常酸素条件下および低酸素条件下における膠芽腫細胞株のTET1, 2,3 mRNA発現の定量 膠芽腫細胞株(U87MG, T98G, U251MG, U373MG)のTET1, 2, 3それぞれのmRNA発現レベルをリアルタイムq-PCRで定量した。TET1とTET3については、細胞株間で発現量に差があり、最も発現が高い細胞株と低い細胞株を同定した。TET2は細胞株間で差異はなかった。1%O2低酸素状態で24時間、48時間、72時間で培養し、同様にmRNA発現レベルを定量評価した。TET2とTET3は低酸素刺激で発現が変化する傾向があったが、正常酸素濃度条件下と比べて有意差はつかなかった。 ・マウス正常大脳、ヒト臨床摘出標本におけるTET蛋白発現解析 マウス正常大脳およびこれまでのヒト臨床摘出標本に対し、抗TET1抗体およびIDH1R132抗体を用いて免疫染色を行った。TET1蛋白は細胞質に局在する標本と核内に局在する標本のふたつに分かれた。標本より蛋白を抽出しウエスタンブロッティングで蛋白発現を評価した。 ・MGMT遺伝子のメチル化は膠芽腫の治療反応性を規定していることが知られているため、膠芽腫細胞株におけるMGMTメチル化をパイロシークエンス法にて定量化した。TETの発現との相関性を調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
・膠芽腫細胞株、当教室で樹立した腫瘍幹細胞株およびIDH変異株を対象に、低酸素刺激をさまざまな条件下で行う。具体的には低酸素条件下で数時間から数日培養したのち正常酸素状態にもどし、再度、低酸素条件下で培養する。これらの刺激によるTET遺伝子のmRNA発現、蛋白発現を評価する。加えて、TETの酵素活性を直接測定するとともに、基質である5-mCと代謝物である5-hmCを、ELISAを用いて定量する。これらの評価から、低酸素刺激により、TETの発現が低下し、かつ、機能が抑制された細胞株(低発現株X)を同定する。 ・低発現株XにおけるTET遺伝子の不活化機序の解析を行う。ゲノム解析としてパイロシークエンス法をもちいて、TET遺伝子の変異を調べる。エピジェネティクス解析としては、DNAメチル化阻害剤である5-アザ-2’-デオキシシチジン(5-Aza)で細胞株を処理したあと、qRT-PCRを行う。mRNAのtranscript levelが回復すれば、TET遺伝子のプロモーター領域がメチル化され、転写活性が抑制されていることになる。この細胞株XにTET遺伝子を強制発現させ、その細胞増殖能を評価する。また、TETの酵素活性、5-mC, 5-hmCをELISAにて測定する。 IDH1変異型幹細胞株と、低酸素条件下に培養された膠芽腫細胞株と腫瘍幹細胞株のTET活性、蛋白発現を評価し、TETの発現が低下し機能が抑制された細胞株(低発現株X)を決定する。これらの細胞株にTET遺伝子を導入、強制発現させ、この遺伝子がtumor suppressor geneであることを証明する。さらに、TET遺伝子によりメチル化制御を受けている遺伝子群を同定する。
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