2017 Fiscal Year Research-status Report
神経幹細胞と腫瘍溶解ウイルスを用いた悪性脳腫瘍に対するウイルス免疫療法の研究
Project/Area Number |
16K10769
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金井 隆一 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (50327532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峯 裕 独立行政法人国立病院機構栃木医療センター(臨床研究部), NHO栃木医療センター, 脳神経外科医師 (10306730)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解ウィルス / 神経幹細胞 / HSV / 悪性脳腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
膠芽腫など悪性脳腫瘍は、脳実質内に広範に浸潤するため全摘出が不可能で、腫瘍自身は化学療法・放射線治療に抵抗性のため、既存の治療法が奏功しない。本研究では広く脳内浸潤した脳腫瘍細胞をも標的とするべく神経幹細胞(NSC)をキャリアとし、薬剤(ドキシサイクリン(Dox))存在下でのみ複製開始する変異型HSVベクターを治療分子とした系の治療効果を検討する。引き続き、平成29年度は以下の研究を行った。 In vitroでは、薬剤存在下に複製調節可能な腫瘍溶解HSVベクターを作成するべく、Dox存在下でICP4を発現する様にデザインしたシャトルプラスミド(pFLSICP4VIrtTA)を作成し、pFLSICP4VIrtTAが、Dox存在下でICP4発現することをウエスタンブロット法で既に確認した。また、ICP4を欠失した複製不能型HSV(d120)が、pFLSICP4VIrtTAをトランスフェクションしたVero細胞でDox存在下にプラーク形成することも確認した。このpFLSICP4VIrtTA とFlip-Flop HSV-BACシステムを用いて、Dox誘導性に複製開始する腫瘍溶解HSVベクターの作成を進めている。更に、種々のHSVベクター(d120等)のヒトiPS由来神経幹細胞(hNSC)への細胞障害効果を確認した。 In vivoでは、ヒト脳腫瘍幹細胞の免疫不全マウスへの脳内移植により、境界不鮮明で浸潤性の高い脳腫瘍を形成すること、腫瘍増大に伴い、脳梁を介して対側半球へ浸潤することを確認した。各種免疫染色での観察でも、右半球では腫瘍細胞の密度が高いが、両半球ともに明らかな腫瘍と正常脳との境界は認めず、非常に浸潤性の高い脳腫瘍モデルであることが確認された。病理学的にもヒト膠芽腫と酷似した像を示すモデルであり、in vivo治療実験に有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に基づき、薬剤存在下に複製調節可能な腫瘍溶解HSVベクターの作成に着手している。Dox存在下でICP4を発現する様にデザインしたシャトルプラスミド(pFLSICP4VIrtTA)を作成しているが、これは、元となるシャトルプラスミドpFLSe-ICP4からLacZ配列を除去し、リバーステトラサイクリン 制御性トランス活性化因子(rtTA)とtetO反復配列を持つテトラサイクリン応答因子(TRE)配列とを挿入し、更にマーカーとしてmVenus配列をPGKプロモーター下流に組み込んだもので、mVenusとrtTAはIRES配列を挟んでPGKプロモーターで発現し、TREの下流でICP4が発現する様デザインしている。このpFLSICP4VIrtTAが、Dox存在下でICP4を実際に発現すること、ICP4を欠失したHSVベクター(d120)が、pFLSICP4VIrtTAをトランスフェクションしたVero細胞でDox存在下にプラークを形成すること等にて、既に機能的にも問題ないことを確認した。pFLSICP4VIrtTAとFlip-Flop HSV-BACシステムを用いたウイルス作成を進めているが、これまでCre-recombinationのステップで予期したHSVベクターが得られず、塩基配列のチェックなどトラブルシューティングを継続している。In vitroでは、各種HSVベクター(hrR3, MG18L, d120)のヒトiPS由来神経幹細胞(hNSC)に対する細胞障害効果を検証した。hNSCを各HSVベクター(hrR3, MG18L, d120)に感染させ4日後にWST-8を用いてcell viabilityを測定した。予想通り、d120は細胞障害効果の少ないHSVベクターであり、IC50=3.66 [MOI]だった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)所定のHSVベクター作成を継続する。Cre-recombinationによりこのexpression cassetteを有するHSV-BAC-shuttle cloneの作成中だが、HSV-BAC(pM24-BAC)側のintegrity はアガロース電気泳動レベルでは問題ないことを確認しており、塩基配列の確認、コントロールプラスミドを用いたrecombination の確認など、綿密なトラブルシューティングを行う。HSV-BAC側に根本的な問題がある場合は、既報に従いpM24-BACを再度作成する。 (2)hNSCに対する各種腫瘍溶解HSVベクターの障害性をin vitroで確認した。本研究では、d120のhNSCに対する障害性評価は重要で、感染4日後のIC50は3.66 MOIだった。これを基にhNSCに(1)で作成したHSVベクターを感染させ、一定時間後のhNSCのcell viability, Dox (+)下でのHSVの複製能を確認する。hNSCは障害せず、Dox下では最大のtiter を生じる至適MOIを算出し、in vivo 治療実験に備える。 (3)(2)と同時に、(1)での所定のHSVベクターが出来次第、in vitroで悪性脳腫瘍細胞に対する障害性の評価をDox存在下/非存在下にて行う。また、このHSVベクターをhNSCに感染させた系でのヒト悪性脳腫瘍に対する殺傷能をDox存在下/非存在下で評価する。 (4)平成30年度前半にこれらの実験を行い、後半は脳腫瘍モデルを用いた治療実験を行う。in vivo研究では、NSCをキャリアとし、TetOn-HSVベクターを用いた系の治療効果を検証することに加え、HSVベクター単独と比較して、NSCを用いた系の優位性を検証することが重要であり、組織学的検討も行う。 (5)以上の実験で得られた結果を基に論文作成する。
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Causes of Carryover |
理由:未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。 使用計画:次年度の物品の購入に使用する予定である。
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