2016 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を用いた変異型IDH1に基づくグリオーマモデルの作成
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16K10773
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大場 茂生 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (80338061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 雄一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60218849)
八幡 直樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (60450607)
秦 龍二 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (90258153)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / 変異型IDH / 腫瘍化 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の脳腫瘍に対する遺伝子学的解析の成果により、WHO2016の脳腫瘍分類においては分子診断が形態的診断に加えられるようになった。神経膠腫においてはIDHの変異の有無と1p/19q codeletionの有無が診断に大きく関与することとなった。WHO grade 2、3のlower grade gliomaにおいては大部分で変異型IDHを有しており、これらの腫瘍のdriver mutationであると考えられている。更には変異型IDHを有する腫瘍に特異的な変化を標的とした治療法が考えられ始めている。 本来IDH はイソクエン酸をアルファケトグルタル酸に変換するが、変異型IDH はアルファケトグルタル酸を2-ヒドロキシグルタル酸に変換する。結果としてヒストンのメチル化やDNA のメチル化が生じ神経膠腫の発生につながるとされている。 我々は、以前にヒト正常アストロサイト(NHA)にHPV16E6E7を用いてp53 とRb 蛋白を抑制させ、更にはhTERT を過剰発現させることで不死化させた細胞(NHAE6E7hTERT)を作成した。その細胞はsoft agar 培地ではコロニーを形成しない、つまり腫瘍化していないのであるが、この細胞に変異型IDH1 を過剰発現させることで腫瘍化させた。また、不死化していないNHAE6E7 に変異型IDH1 を過剰発現させることで不死化させるだけでなく腫瘍化させることに成功した。これらの細胞を用いてがん代謝に関係している解糖系やTCAサイクルの代謝にいかなる変化が生じているかをまず評価した。 腫瘍化のおける代謝の変化は、治療の標的となりうる可能性は十分あり、今回の解析は不死化や腫瘍化における代謝変化の解析にとどまらず、今後の新規治療法あるいは既存の治療法の効果を高める方法を探索するにあたり非常に有意義なものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
iPS細胞に変異型IDHを導入した後に継代をくりかえしてアストロサイトへと分化させる実験を開始する予定であったが、実験に必要なプラスミドや培地などの準備等に手間がかかってしまったため予定より遅れている。しかしながら、一方では既に作成してあった神経膠腫モデルを用いて代謝に関する解析が開始されており全体としてはやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞を用いて変異型IDH1を導入し、その後薬剤にてセレクションを行い安定株を作成する。ウェスタンブロットにて変異型IDH1 の蛋白発現が上昇していることを確認した後、この安定株を用いて継代をくりかえし、アストロサイトへの分化を誘導する。作成された細胞が永遠と増殖を続けるのか、つまり不死化したかを確認し、次にsoft agar 培地にまいてコロニーを形成するかで腫瘍化したかを評価する。アストロサイトへの分化の確認はアストロサイトのマーカーであるGFAP やGLT1の抗体を用いて細胞免疫反応で確認する。腫瘍化が確認できた場合には、変異型IDHを導入せずにiPS細胞から分化させたアストロサイトと比較することで不死化の機構の解明、腫瘍化に関連した遺伝子の探索、解糖系やTCAサイクルを中心とした代謝解析などを行う予定である。また、マウスの脳内に細胞を移植して脳内腫瘍が形成されるかも検討予定である。 また、平成28年度の研究成果の欄に記載した、ヒト正常アストロサイトに様々な遺伝子導入を行い人工的に作成された神経膠腫モデルを用いて行った代謝解析結果から腫瘍の不死化や腫瘍化における代謝変化の解明、更には新規治療法あるいは既存の治療法の効果を高める方法を探索する予定である。
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