2017 Fiscal Year Research-status Report
上衣腫におけるTERT発現機序の解明と新規標的治療の開発に関する研究
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16K10775
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
市村 幸一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40231146)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | TERT / 上衣腫 / RELA / 融合遺伝子 / トランスジェニックマウス / ルシフェラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、TERT promoterの上流を含めた2.5kbの領域のルシフェラーゼ発現ベクターを構築し、rs2853669のSNPとC228T, C250TのTERT promoter mutationの有無で6通りのコンストラクトを作成したところ、C250Tを持つコンストラクトでTERTの発現上昇を認めた。一方rs2853669のvariant T349Cによる発現増強作用は認めなかった。これらは前年度のTERT promoter core region (474bp)のベクターと比較して異なる結果であった。上衣腫の臨床検体において、RELA融合遺伝子を持つ上衣腫にTERT発現の著しい上昇があるという結果(平成28年度)については論文化し、現在投稿中である。 我々はこれまでにRELA融合遺伝子は単独で脳腫瘍を誘導できるがん遺伝子であることをトランスジェニックマウスを使ったモデルを用いて明らかにしてきたが、さらに上衣腫における融合遺伝子とTERTの上衣腫発生機序における役割を検討するため、in vivo lentiviral gene transferシステムを用いて、RELA, YAP1融合遺伝子などの上衣腫関連融合遺伝子をマウス脳内 (Nestin expressing cell of origin) に導入し、その脳腫瘍誘導能の検討を行なっている。平成29年度はトランスジェニックマウスの導入を行い、lentiviral vectorを構築した。またRELA融合遺伝子を持つ上衣腫に対する標的治療開発の目的で、RELA融合遺伝子より誘導された脳腫瘍細胞を用いて薬剤スクリーニングを行った。平成30年度には、本スクリーニングより同定された薬剤の効果を、上記により脳内に上衣腫を誘導したマウスに対して検討する非臨床試験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上衣腫臨床検体については100例以上のコホートの解析が完了し、論文を投稿することができた。上衣腫動物モデルの作成については、平成29年度7月に行われた新研究棟への動物室の移転に伴い約6か月間動物実験が事実上不可能な状況にあったが、平成29年度後半から徐々に稼働が進められ、トランスジェニックマウスの輸入とクリーン化が完了し、トランスジェニックマウスを導入することができた。並行してRELA融合遺伝子を導入するレンチウイルスの作成を進めており、おおむね当初の計画に追い付きつつあると考える。新規治療開発のためのRELA融合遺伝子を持つ細胞株に対するドラッグスクリーニングはその成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、トランスジェニックマウスに対してRELAを含むいくつかの融合遺伝子を導入し、マウスの脳内上衣腫モデルを作成する。RELA融合遺伝子により誘導したマウス上衣腫においてTERTの発現を調べ、TERT発現とRELA融合遺伝子との関わりを探索する。またマウス上衣腫モデルに対してin vivoの抗腫瘍効果を示す薬剤を選定するため、in vitroのドラッグスクリーニングで選定されたRELA融合遺伝子に対する新規治療薬を、RELA融合遺伝子の導入により作成したマウス上衣腫モデルに投与し、腫瘍縮小効果・生存延長効果などを調べる。さらに、in vitro/in vivoの上衣腫モデルに対し、TERT発現解析・RNA sequencing・ヒストン修飾解析などにより、RELA融合遺伝子の発現・エピゲノム調節を介した上衣腫造腫瘍効果および薬剤の抗腫瘍効果の機序を探索する。
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Causes of Carryover |
新研究棟への動物室の移転に伴い動物実験の計画が当初より遅れて開始されたため、平成29年度に予定していた当該支出を平成30年度に繰り越して支出する予定である。半年ほど開始が遅れたものの動物の導入は完了し、平成30年度には平成29年度に予定していた実験も含めて実施できると考える。
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