2017 Fiscal Year Research-status Report
神経膠腫における免疫逃避機序と遺伝子変異・予後との関係の解明
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16K10776
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
大野 誠 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (70598648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 滋久 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (60402682)
吉田 朗彦 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (80574780)
里見 介史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (10633977)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 悪性神経膠腫 / 免疫逃避機序 / 治療抵抗性 / PD-L1 / チェックポイント分子 / 浸潤リンパ球 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫においてPD-L1 (programmed cell death ligand -1)の発現等を介した免疫逃避機序が抗癌剤に対する治療抵抗性の原因となっている可能性を考え、悪性神経膠腫組織中に発現するチェックポイント分子の発現、浸潤リンパ球、マクロファージの役割を解析することを目的に本研究を開始した。 これまでに行ってきたことは以下の3つである。 ①14種類の悪性神経膠腫細胞株をフローサイトメーターを用いて網羅的に解析し、PD-L1が全ての細胞株に発現していることを確認した。 ②悪性神経膠腫100例の組織マイクロアレイを用いて、PD-L1、CD4, CD8, 制御性T細胞のマーカーであるFOXP3、抑制マクロファージのマーカーであるCD68およびCD204の免疫組織化学的検討を行った。 その結果、悪性神経膠腫100例中、PD-L1陽性21例(21%)、CD4陽性62例(62%)、CD8陽性63例(63%)、FOXP3陽性34例(34%)、CD68陽性93例(93%)、CD204 強陽性33例(33%)であった。PD-L1発現はCD4陽性、CD8陽性、FOXP3陽性、CD204陽性と有意に相関し、膠芽腫67例においてPD-L1陽性例は陰性例より有意に生存期間が延長しており、腫瘍局所における免疫反応と PD-L1 発現の関連が考えられた。 ③抗PD-L1抗体としてE1L3Nを用いて上記の実験を行ったが、肺癌領域で抗PD-L1抗体として、22C3, 28-8, SP142, SP263が治療薬に応じて用いられることから、E1L3Nと3種類の抗PD-L1抗体(22C3, 28-8, SP142)との染色性の比較を行った。その結果、 それぞれの抗体により染色性の違いがあるものの病理学的にはPD-L1陽性・陰性の判定には大きく影響しないものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記③における4種類の抗PD-L1抗体(E1L3N, 22C3, 28-8, SP142)のなかから適切な抗PD-L1 抗体を選定し陽性判定基準の確立するところは今後研究を進める上で重要になることから慎重に検討している。このため達成度がやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在膠芽腫においてMGMT(O-6-methylguanine DNA methyltransferase)プロモーター領域のメチル化別に抗PD-1抗体薬 (Nivolumab)を用いた臨床試験が行われていることから、MGMTプロモーター領域のメチル化別に免疫逃避機序の解明を予定している。 また、グレードIIおよびIII神経膠腫においては、IDH (Isocitrate dehydrogenase)1/2遺伝子変異例は2-HG (2-hydroxyglutarate)によるケモカイン産生抑制によりCD8陽性T cellの組織浸潤が抑制されるという報告 (Kohanbash et al. 2017)があることから、本研究においてもIDH1/2遺伝子変異別に免疫逃避機序の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
現時点では、免疫チェックポイント分子および浸潤リンパ球・マクロファージと悪性神経膠腫の病理学的・遺伝学的・臨床的特徴の検討を主に行なっており、研究計画時点で予定していた悪性神経膠腫患者の手術前の末梢血を用いた免疫担当細胞の解析への予算を使用していないため。 今後はまずPD-L1陽性判定基準を確立し、悪性神経膠腫におけるPD-L1分子の発現、浸潤リンパ球、マクロファージの役割の解析を行うことを目的とする。その結果を用いて患者血液中の免疫担当細胞の解析と治療効果および予後との関係の解析研究に予算を分配する予定にしている。
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Research Products
(2 results)