2018 Fiscal Year Research-status Report
視覚応答を利用したコミュニケーション支援BMIの開発
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16K10801
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
松尾 健 東京医療保健大学, 医療保健学部, 講師 (10733941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 謙介 自治医科大学, 医学部, 教授 (70260924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BMI / 視覚認知 / 想起 / imagery / visual recognition / decoding / 復号化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Brain Machine Interface(BMI)は失われた運動機能を補完する手段の1つとして注目されている。運動麻痺などに対する運動支援型BMIは一部実用化も果たしているが、視覚障害や言語障害に対するコミュニケーション支援型BMIは開発途上である。コミュニケ-ションツールとして”文字”は汎用性が高いが、現時点で実際のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者に提供されているシステムはマウスカーソルを移動させて任意のキーボードボタンを押す、というものが大半である。しかしこれらのシステムは非常に時間を要するのが問題と考えられる。より実用的に即時的に意思や感情を表出するためには、直接的に意思表示できるようにすることがブレークスルーになると考える。 自身が行った皮質脳波を用いた予備実験では、ヒトが物体イメージを視認もしくは想起したときの脳活動の復号化は可能であったが、意味を持たない単一文字を視認もしくは想起した時の脳活動からその文字を復号化することは困難であった。つまり、文字列を任意に書き出すことは容易ではない。そこで、本研究では文字と物体イメージを関連付けし、入力を「物体イメージを想起したときの脳活動」、出力を「物体イメージに関連付けされている文字」とすることで、タイムラグが少なく、復号化率の高いBMIの実現を目指している。 高次の視覚情報は主に側頭葉腹側面で処理されていることから、この部位に慢性頭蓋内電極を留置したてんかん患者の協力を得て、物体視認時、物体イメージ想起時の皮質脳波を計測している。視認時の応答から物体イメージ特異的な応答が、皮質脳波の高ガンマ帯域に強く表現されていることが確認されたことから、主にこのデータを使用して想起時の脳活動の復号化を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で用いている皮質脳波の計測には、てんかんの焦点診断目的に慢性頭蓋内電極を留置した患者の協力が不可欠である。進捗が遅れている最大の要因は、対象となる患者の不足、それに伴うテータの不足である。これにより統計的な有意性が出にくくなっていると考えられる。本年6月から8月の3ヶ月で4名の慢性頭蓋内電極留置手術を行う予定であり、このうち3名が研究対象となりうる。このデータを追加することで統計的有意性が高まることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始当初は皮質脳波のデコーダー(復号器)にはSVM(support vector machine)を採用し復号化を行っていたが、データ量に制限があることから、復号化の成績は実用レベルには至らなかった。そこで昨年度、デコーダーをSLR(sparse rogistic regression)に変更した。さらにデコーダーへの入力に周波数帯別のデータを加え、異なる周波数帯間の相関を追加したところ、一定の成績向上が得られた。近々に計測する新たなデータを追加することでさらなる復号化率の向上が期待される。 一方、解析PCにリアルタイムデータ解析用のシステムを組み込み、テスト作動は確認済みである。今後、健常被検者の協力者で模擬解析を行い、実際の被検者での解析を試みる予定である。 これまでの研究内容を、2019年10月の日本脳神経外科学会第78回学術総会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度に本研究の対象となる患者が少なかったことから、電極の購入を行わなかった。データ解析に関しては追加の支出は必要なく、既存のソフトウェアを用いている。また、学会発表を行うまでのデータが揃わなかったことから、旅費の支出を行わなかった。 (使用計画)6-8月で3名の対象被検者が想定されており、それらの患者で使用する電極購入費に充てる。また、日本脳神経外科学会等で発表を行うため、その旅費の支出に使用する。
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