2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K10858
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 美奈 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50457008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263261)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 理事・副学長 (60191558)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨代謝 / M1/M2型マクロファージ / マウス骨髄由来間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージはその働きによって炎症型(M1型)と抗炎症型(M2型)に分類され、M1型は主に感染防御に、M2型は組織修などに関わることが知られている。平成29年度は、M1/M2型マクロファージの分化過程において骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)が及ぼす影響について検討を行った。マウス骨髄由来マクロファージを、LPSとIFNγの添加によりM1型に、IL4とIL13の添加によりM2a型に、IL10の添加によりM2c型へ分化誘導を行った。M1/M2a/M2cマクロファージは、transwellを用いてBM-MSCと間接的に共培養を行い、RNAを抽出後、qPCR法により、miNos(M1),mTNFα(M1),mAriginase(M2),mYm1(M2),mFizz(M2)等のプライマーを用いて、M1/M2型マーカー遺伝子の発現を確認した。その結果、マクロファージはBM-MSCとの共培養により、M1型からM2型へ機能転換することが明らかになった。また、T細胞の一種であるγδT細胞は主に感染制御に関わるとされており、骨折部位ではIL17を産生し、骨形成への関与が示唆されていることから、IL17Aがマクロファージの分化に与える影響についても検討を行った。その結果、IL17Aの添加により、M1型マーカー遺伝子(miNos,mTNFα)の発現が減少し、M2型のマーカー遺伝子の発現が上昇した。また、BM-MSCとの共培養においてIL17Aの添加によりM1型マーカー遺伝子発現が低下する一方で、M2型マーカー遺伝子の発現が上昇した。以上から、BM-MSCとの共培養によりM1型からM2型への転換が促進され、IL17Aはこの転換を促進することが明らかになった。炎症部位における免疫細胞の機能解明により、M1/M2型の機能活性化の制御が可能になれば、創傷治癒促進への応用につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス骨髄由来間葉系幹細胞を採取し、Ascoribic acid,βglycerophosphate及びDexamethasoneを添加して骨分化を誘導する過程において、マウス骨髄マクロファージが産生するサイトカインが骨分化誘導能に与える影響について検討実験を行う予定にしており、すでに予備検討を始めていることから、in vitroの検討はおおむね順調に進めている。同時に、マウスの骨折モデルを作成し、骨折炎症部位におけるM1/M2型マクロファージの局在について免疫染色等による組織学的評価を行う予定であったが、骨折モデルの作成に時間を要しており、全体としてやや進捗が遅れている。骨剪刀などを使用して大腿骨や脛骨での骨折モデルの作成を試みているが、レントゲンでの確認により、骨折部位の骨のずれなどが生じるため、再現性のある骨折モデルの作成が課題となっている。肋骨の骨折モデルや、固定のためワイヤーを用いた大腿骨骨折モデルの作成を検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を用いた骨分化誘導の過程において、M1/M2型マクロファージおよびそれらが産生するサイトカインがIL17A存在下で与える影響について検討を行う。具体的には、BM-MSCとマクロファージをtranswellを用いて間接的に共培養を行うか、或いは、M1/M2型マクロファージ分化誘導時のConditioned Mediaを添加することにより、BM-MSCの骨分化能についてALPやAlizarinred S などの細胞染色やqPCR法を用いた骨分化マーカー遺伝子(Alp,Runx2,Osteocalcin,Bsp)発現の評価を行う。さらに、M1/M2型にそれぞれ分化させたマクロファージにRanklを添加することにより、破骨細胞の形成能についてTRAP染色などによる評価を行う。M2マクロファージについては、IL4とIL13の添加によりM2a型に、IL10の添加によりM2c型に分化させ、2種類の比較検討を行った結果、M2型分化マーカー遺伝子の発現などから、今後はM2a型に着目した検討を行うことにした。 in vivoの系では骨折モデルを作成し、骨折炎症部位におけるマクロファージの骨修復促進作用やIL17Aの作用について検討する。IL17A存在下、非存在下でM1/M2型マクロファージやを炎症部位への局所投与し、骨代謝促進作用の効果について免疫染色や生化学的手法を用いた組織学的評価による解析を行う。また、ハイドロキシアパタイトやコラーゲンスポンジ等のscaffoldを担体にしてマクロファージとBM-MSCの複合体をIL17A存在下でマウス筋膜下に埋植後、経時的にscaffoldを摘出し、マイクロCTや走査型電子顕微鏡を用いた細胞や基質の微細構造の解析やALP酵素活性評価により骨形成誘導能について検討を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 当該年度は主にin vitroの系で細胞を用いた実験系を中心に行い、M1/M2型マクロファージへの分化誘導に必要なサイトカイン等の試薬を購入し、予定通りの使用額であった。qPCRに必要なRT試薬やプライマーなどは初年度に購入済みの試薬を使用した。また、骨折モデルの作成に時間を要していることから、動物の購入費が想定より少なく、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 本試験では間葉系幹細胞及びマクロファージはセルラインを用いず、マウス骨髄細胞からプライマリで採取するが、マウス骨髄由来間葉系幹細胞は細胞増殖能が非常に低く、継代数も限られていることから、必要細胞数の回収に限度がある。そのため、間葉系幹細胞の採取のために必要な動物数が多くなることが予測される。特に、骨髄細胞からマクロファージの誘導に必要なサイトカインであるマクロファージコロニー形成因子(M-CSF)の使用量が多くなる。また、骨折モデルの作成方法を確立後、主にvivoの系での検討を行う予定であり、動物の購入やM1/M2型マクロファージの分化誘導に必要なサイトカインの購入が増えることが想定される。さらに、scaffoldを用いてマクロファージ及び間葉系幹細胞を動物に移植し、生体内での骨分化誘導能について検討を行う予定であり、組織評価のための抗体関連試薬や組織評価キットなどの購入が必要となる。
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