2017 Fiscal Year Research-status Report
腱・腱鞘再建の治療成績改善を目指して:生体工学的研究
Project/Area Number |
16K10876
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
西田 淳 東京医科大学, 医学部, 教授 (20198469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立岩 俊之 東京医科大学, 医学部, 講師 (00424630)
鎌滝 章央 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60360004)
東儀 季功 東京医科大学, 医学部, 助教 (60532322)
三又 義訓 岩手医科大学, 医学部, 助教 (40740717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腱・腱鞘間滑走抵抗 / 腱損傷 / 腱鞘損傷 / 腱再建 / 腱鞘再建 / 腱鞘炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
屈筋腱腱鞘炎における屈筋腱の肥厚と腱鞘との関係に関して評価した。屈筋腱腱鞘炎でA1 腱鞘切開術が行われるた後も疼痛、患指の可動域制限が残存する例が時に経験される。そのような例は罹病期間が長く、術前PIP関節の完全伸展が不可能で、A1 腱鞘部より遠位まで圧痛があることが多い。このような完全伸展が得られない例に対し研究代表者らはFDSの部分切除術を行い、比較的良好な成績を得ており、手術例の治療成績について検討を加えた。 手術例14例の術前術後のMP関節中間位におけるPIP関節自動伸展角度とDASH functional score (以下DASH)を対比検討した。また術前CTにて基節骨近位1/3部における屈筋腱と基節骨の横径を計測してその比を算出し、罹患手の環指でも同様に横径比を算出して対比した。また切除したFDSの組織学的所見を評価した。術後経過観察期間は平均11か月で、術後評価は最終経過観察時に行った。得られたデータはStudent t-testにより検定し、P<0.05 を有意とした。 手関節、MP関節中間位におけるPIP関節の自動伸展は術前平均-26.2度、DASH は術前平均38.5点であった。CTにおける基節骨近位1/3部における屈筋腱と基節骨の横径の比は、罹患指平均87.4%、罹患手の環指平均67.5 % であり、罹患指で有意に高値であった(p < 0.05)。術後PIP関節の伸展は平均-9.1度、術後のDASH は平均8.9点で、いずれも術前との差は有意であった(p < 0.05)。組織学的には腱内での膠原線維の連続性の途絶像や膠原線維内での裂隙形成像が全例で観察された。8例ではリンパ球の軽度の浸潤がみられた。3例で血管増生像が、2例では粘液変性がみられた。1例で軟骨化性が、1例では軟骨様硝子化像がみられた。滑膜組織内での軽度のリンパ球浸潤が2例で観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに得られたデータはSICOT(国際整形外科学会)とアジア太平洋手外科学会にて報告した。前年度は、老朽化が進んでいた滑走抵抗計測装置をMayo Clinicに製作を依頼し更新して、滑走抵抗計測装置の周辺環境が整備された。キャリブレーションを行い、データ解析用のコンピューターの整備も実施し、新たな環境下で腱・腱鞘間の滑走抵抗の評価が可能となっている。また、新たな研究テーマも模索し、PIP関節の完全伸展が不可能な、重度屈筋腱腱鞘炎の臨床的、画像的、組織学的評価を行いデータが得られた。 問題点は滑膜細胞の培養実験が実施可能か否かである。最終的に培養実験が実施困難である場合、75%程の進捗となると考えている。滑膜細胞の培養実験に関してはいかにして実現できるかを検討し、実施したい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的には滑膜細胞培養の実施を目指しているが、鎌滝章央研究分担者に一昨年転勤があり、研究環境に大きな変化があったため、具体的な実施に至っていない。滑膜細胞培養の研究は、徐々に環境を整えながら実施を進めていく考えである。 今年度は研究環境の変化に対応して、新たに加えた重度屈筋腱腱腱鞘炎に関しての研究を実施した。これまでに得られた重度屈筋腱腱鞘炎の臨床的、画像的、組織学的評価結果に関しては早急に論文作成を行う予定である。重度屈筋腱腱鞘炎における屈筋腱の肥厚については、CTを用いて更に評価を加え、重症屈筋腱腱鞘炎の病態を解明し、臨床で実感される浅指屈筋腱の尺側半腱切除の効果の、基礎的裏付けをしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
腱縫合の際使用する拡大鏡を購入予定であったが、今年度は腱縫合の実験を実施できなかった。このため拡大鏡は平成30年度に購入する予定である。
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