2016 Fiscal Year Research-status Report
Pro-IGF-IIシグナルを利用した安全性の高い老化筋再生促進治療法の開発
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16K10881
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
上住 円 (池本円) 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70435866)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 老化 / 筋再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を迎えた我が国は世界屈指の長寿大国であるが、平均寿命と健康寿命の間には約10年の乖離があり、健康的に老いることの必要性が高まっている。高齢者において転倒や骨折に伴う筋損傷からの回復の遅れは、要介護状態への進行の主要原因であり、健康寿命延伸のために解決すべき重要課題である。我々は最近、再生筋組織におけるpro-IGF-II (pro-insulin-like growth factor-II) の発現低下が加齢による筋再生能力低下の一因であり、pro-IGF-IIの補充は骨格筋幹細胞の増殖促進や間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制を介して、老化マウスの筋再生能力を改善することを見出した (Stem Cells. 33(8): 2456-68, 2015.)。しかしながら、pro-IGF-IIは癌細胞で発現し、自身の増殖を促進すると考えられているため、臨床応用にはより安全で特異的な治療法が求められる。そこで本研究では、骨格筋幹細胞の増殖促進や間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制効果を発揮するpro-IGF-II下流シグナルパスウェイを探索し、筋再生能力改善に有効な標的分子・パスウェイを明らかにする。本年度は、pro-IGF-IIのヒトへの応用を視野に入れ、初代培養ヒト筋衛星細胞を用いて、増殖や分化に対するpro-IGF-IIの影響を調べた。その結果、マウスで見られた効果と同様、ヒトにおいても、pro-IGF-IIは筋衛星細胞の増殖を促進することが明らかとなり、ヒト細胞を用いたpro-IGF-II下流シグナルパスウェイ探索のための基盤的知見を得ることができた。また、初代培養ヒト間葉系前駆細胞におけるpro-IGF-IIの効果もマウス同様に見られるのかについても今後検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、pro-IGF-IIのヒトへの応用を視野に入れ、初代培養ヒト筋衛星細胞を用いて研究を行い、これまでのマウスと同様の結果を得ることができた。ヒト細胞でデータが得られたことは非常に有益である。しかしながら、当初、pro-IGF-II処理および未処理の細胞を用いてプロテオーム解析を行い、pro-IGF-II処理により発現変動する因子を探索する予定であったが、本年度途中で代表研究者の所属先の移動があり、その項目については当初の予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、pro-IGF-IIの生理的作用のうち、癌細胞の増殖を引き起こすことなく、筋衛星細胞の増殖や間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制効果を発揮できるpro-IGF-II下流シグナルパスウェイを探索し、筋再生能力改善に有効な標的分子・パスウェイを明らかにする。平成29年度は、筋衛星細胞や間葉系前駆細胞においてpro-IGF-II処理により発現変動するたんぱく質をプロテオーム解析によって明らかにし、下流候補シグナルパスウェイを探索する。また、それらの候補シグナルパスウェイに対する阻害剤やアクチベーターを用いてin vitroでシグナルの機能性や癌細胞の増殖に対する影響を調べ、筋再生に有益なシグナルを明らかにする。平成30年度は、その阻害剤やアクチベーターをマウスに投与することによりin vivoでそのシグナルの機能性を確認する。
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Causes of Carryover |
当初、pro-IGF-II処理および未処理の細胞を用いてプロテオーム解析を行い、pro-IGF-II処理により発現変動する因子を探索する予定であったが、本年度途中で代表研究者の所属先の移動があったことから、この項目については当初の予定より遅れている。よって、本年度、プロテオーム解析に使用する予定であった額を次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度未使用額は、当初本年度に実施予定であったプロテオーム解析に用い、pro-IGF-II処理により発現変動する因子を明らかにし、下流候補シグナルパスウェイを探索する。また、次年度分においては、当初の計画通りに使用し、候補シグナルパスウェイに対する阻害剤やアクチベーターを用いてin vitroでシグナルの機能性や癌細胞の増殖に対する影響を調べ、筋再生に有益なシグナルを明らかにする。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Cell surface protein profiling identifies distinctive markers of progenitor cells in human skeletal muscle.2016
Author(s)
Uezumi A, Nakatani M, Ikemoto-Uezumi M, Yamamoto N, Morita M, Yamaguchi A, Yamada H, Kasai T, Masuda S, Narita A, Miyagoe-Suzuki Y, Takeda S, Fukada S, Nishino I, Tsuchida K.
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Journal Title
Stem Cell Reports.
Volume: 7(2)
Pages: 263-78
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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