2017 Fiscal Year Research-status Report
Pro-IGF-IIシグナルを利用した安全性の高い老化筋再生促進治療法の開発
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16K10881
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
上住 円 (池本円) 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70435866)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 老化 / 骨格筋 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者において転倒や骨折に伴う筋損傷からの回復の遅れは、要介護状態への進行の主要原因であり、健康寿命延伸のために解決すべき重要課題である。我々は、再生過程筋組織におけるpro-IGF-IIの発現低下が、加齢による筋再生能力低下の一因であり、pro-IGF-IIの補充は骨格筋幹細胞の増殖促進や間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制を介して、老化マウスの筋再生能力を改善することを見出した (Stem Cells, 2015)。本研究では、pro-IGF-IIによる筋再生促進メカニズムを解明するために、骨格筋幹細胞と間葉系前駆細胞におけるpro-IGF-II下流シグナルの解析を行う。細胞内シグナルを詳細に解析するには、ある程度の細胞数が必要になる。そのため、マウス由来骨格筋幹細胞と間葉系前駆細胞をin vitroで増幅し、実験系の確立を試みた。しかし、マウス由来細胞はin vitroでの継代・培養による性質の変化が大きく、細胞の増幅が困難であった。そこで、ヒトへの臨床応用も視野に入れ、ヒト由来細胞を用いた実験系の構築に取り組んだ。その結果、ヒト骨格筋から高精度に骨格筋幹細胞と間葉系前駆細胞を単離する方法、及び、単離された細胞を継代・培養しin vitroで増幅できる条件の確立に成功した(Stem Cell Reports, 2016)。本技術により、細胞内シグナルを網羅的に調べるなど詳細な解析が可能になると考えられる。そこでまず、ヒト骨格筋幹細胞と間葉系前駆細胞を用いて、増殖・分化に対するpro-IGF-IIの影響を調べた。その結果、マウスで見られた効果と同様、ヒト細胞においても、pro-IGF-IIは骨格筋幹細胞の増殖を促進した。また、濃度依存的に間葉系前駆細胞の脂肪分化を抑制し、その効果は、mature IGF-IIでは全く見られず、pro-IGF-IIに特異的な効果であることを見出した。今後、ヒト細胞を用いた実験系でpro-IGF-II下流シグナルの解析に取り組み、pro-IGF-IIによる筋再生促進メカニズムを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績で述べた通り、マウス細胞を用いて研究を進展させることは困難であるという問題に直面したが、ヒト細胞を用いた実験系の構築に取り組み、その問題を解決することができた。ヒト骨格筋由来の高品質な骨格筋幹細胞と間葉系前駆細胞を大量に得ることが可能となり、ヒト細胞でもマウス同様にpro-IGF-IIの効果が確認されたことから、今後、ヒト細胞を用いてpro-IGF-IIの作用機序の解明に取り組むことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ヒトへの臨床応用も視野に入れ、ヒト細胞を用いてpro-IGF-IIの作用機序の解明に取り組む。まず、pro-IGF-IIが骨格筋幹細胞の増殖を促進する時、および、間葉系前駆細胞の脂肪分化を抑制する時の細胞内下流シグナルを明らかにするため、抗体アレイを用いて細胞内シグナルを網羅的に解析する。網羅的解析で同定された細胞内下流シグナルについて、阻害剤やRNAiによる阻害・抑制実験で、骨格筋幹細胞に対する増殖促進、および、間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制における寄与を明らかにする。また、間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制はpro-IGF-IIに特異的で、mature IGF-IIでは見られない。mature IGF-IIはpro-IGF-IIがプロセッシングを受けたフォームであるため、pro-IGF-IIはmatureタイプにはないアミノ酸配列を有し、その部分が糖鎖修飾を受けることが知られている。そこで、pro-IGF-II特異的な間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制メカニズムの解明を目指して、糖鎖修飾の有無によりpro-IGF-IIの脂肪分化抑制効果が影響を受けるか調べる。
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Causes of Carryover |
本年度、ヒト細胞を用いた実験系を確立し、ヒト細胞でもマウス同様にpro-IGF-IIの効果が確認できた。さらに、このヒト細胞を用いてpro-IGF-IIの作用機序を明らかにするため、次年度に、抗体アレイを用いて細胞内下流シグナルを網羅的に解析する予定であるが、その抗体アレイの購入にかかる費用として次年度使用額に持ち越した。翌年度分として請求した助成金は、計画通り、網羅的解析で同定された細胞内下流シグナルについて、阻害剤やRNAiによる阻害・抑制実験に使用し、骨格筋幹細胞に対する増殖促進、および、間葉系前駆細胞の脂肪分化抑制における寄与を明らかにする。
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Research Products
(6 results)