2016 Fiscal Year Research-status Report
肝-筋-骨ネットワークを介した骨代謝異常と糖・脂質代謝異常の相互増幅機構の解明
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16K10924
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
田村 行識 神戸学院大学, 栄養学部, 講師 (40580262)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 筋骨格系異常 / 筋-骨連携 / ビタミンD / 臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、糖・脂質代謝異常と筋骨格系異常の罹患者が共に急増しており、これらの疾患の双方向の関連性が注目されている。本研究では、これらの疾患の相互関連性における筋肉、骨、肝臓などを中心とする臓器ネットワークの破綻を介した新たな分子機序の解明を目的としている。本年度は、糖尿病病態に伴う筋萎縮と骨粗鬆症における筋-骨連携の破綻の役割と、その破綻におけるビタミンD欠乏の関与についてストレプトゾトシン誘導性糖尿病モデルマウスを用いて検討した。糖尿病マウスでは、健常マウスに比較して筋量が減少したが、ビタミンD欠乏によりその減少が増強された。糖尿病マウスの腓腹筋における筋分解マーカー(MuRF-1, Atrogin1)の増加が、ビタミンD欠乏によって増強したことから、筋分解の亢進がビタミンD欠乏による筋量減少を増強する機序として考えられた。また以前、ビタミンD欠乏が糖尿病に伴う骨量減少を増強することを報告した(Bone. 61:102-108, 2014)。本研究において糖尿病マウスの腓腹筋では、健常マウスの腓腹筋と比較して、筋由来骨形成促進因子(IGF-1、FGF-2、TGF-β、Irisin)のmRNA量が減少しており、さらに、ビタミンD欠乏によって糖尿病に伴うIGF-1およびFGF-2の mRNA量の減少が増強された。このことから、糖尿病病態において、筋と骨の臓器連携の破綻を介して骨粗鬆症が引き起こされる可能性と、ビタミンD欠乏が糖尿病に伴う筋-骨連携の破綻を増強することが示唆された。本年度の研究成果より、糖尿病病態における筋骨格系異常に筋と骨の臓器連携の破綻が関与しており、さらにビタミンDが筋-骨連携の維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験材料の入手などの関係で、当初の実験計画から一部前後して実験を実施した部分があるが、研究全体としては順調に進んでおり、糖尿病病態に伴う筋骨格系の異常における筋-骨連携の破綻の存在とその病態機序の一端を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病病態における筋-骨連携の破綻の詳細な分子機序について、培養細胞などを用いて、さらに追究していく予定である。また、糖代謝異常および筋骨格系異常を同時に引き起こすステロイド投与マウスモデルを用いて、異なる病態からも両代謝異常の相互関連性およびその分子機序について検討していきたい。
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