2018 Fiscal Year Research-status Report
麻酔薬応答能の個人差に関する新規薬力学的アプローチ:生体膜構成脂質の機能
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16K10931
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
溝上 真樹 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (10231614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 博紀 朝日大学, その他部局等, 名誉教授 (30131113)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 麻酔薬 / 生体膜相互作用 / 個人差 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身ならびに局所麻酔薬を生体モデル膜に作用後、膜脂質-タンパク作用機序に基づく鎮静、鎮痛、筋弛緩、交感神経抑制、心毒性、抗酸化作用などの麻酔作用と関連した膜流動性を解析する。この実験系を使い、エイジング、食生活、および生活習慣病による膜脂質組成の変化が各麻酔作用にどう影響するかを検証する。得られた結果を臨床効果に外挿して、後天的な変動要因による影響度の定量化を試みる。 28年度に確立された生体膜の調整および定量法に基づき、29年度は各種細胞膜と麻酔薬の相互作用がその鎮静・鎮痛効果ばかりでなく、心毒性などの副作用にも影響することが示唆された。これは麻酔薬が惹起する膜流動性変化とタンパクコンホメーション変化を組み合わせた膜脂質-タンパク作用機序に符合し、特にコレステロールの対リン脂質比率が麻酔薬との相互作用に強く関係することを明らかにした。 以上に続き本年度は、細胞膜中のコレステロールの存在が薬物のキラルな活性を決定する可能性、ならびにその責任不斉炭素原子を同定した。一方で麻酔薬の鎮痛効果に着目し、薬物-膜相互作用をみた結果、オピオイドに代わる周術期マルチモーダル鎮痛法の適応薬候補であるアセトアミノフェンやNSAIDsの膜作用にも臨床効果との強い相関を認め報告した。ただし、NSAIDsはCOX阻害との関連から形質膜よりも核膜の脂質組成が関連すると考えられ、ここにコレステロール以外のリン脂質、食生活や生活習慣病で後天的に増減しやすいものを想定し研究を進めている。 また、臨床効果への外挿目的と関連し、鎮痛評価法や心毒性について臨床報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験施設の断続的工事により若干の遅れは生じたが、おおむね順調に進展している。また、麻酔薬の鎮痛効果にフォーカスした薬物-膜相互作用において機序的新事実が発見されたため、こちらへの派生研究にも手を広げた。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢、食生活、ならびに生活習慣病等により変化するコレステロールや不飽和脂肪酸を中心とした膜脂質組成を想定し、その膜脂質-タンパク相互作用機序に基づく薬理学的背景への影響を理論的に構築する。 研究結果を臨床効果に外挿し、個人に応じたオーダーメイド的麻酔薬の選択法についてその可能性を探る。
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Causes of Carryover |
(理由)29年度使用の試薬や器具の一部共有が可能であったため。断続的な実験施設の工事により、進行に若干の遅れが生じたため。 (使用計画)令和元年度の追加実験、ならびに最終研究成果の世界への発信等に関し、研究費配分の再検討を行う。
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Research Products
(6 results)