2016 Fiscal Year Research-status Report
脂肪乳剤を用いた全身麻酔からの覚醒促進および認知機能回復促進
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16K10947
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| Research Institution | Osaka City University |
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Principal Investigator |
森 隆 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (00336786)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 脂肪乳剤 / 全身麻酔 / 覚醒 / 認知機能 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、ラットを用いて脂肪乳剤の全身麻酔薬からの覚醒促進効果および認知機能回復効果を調べ、さらにその機序を受容体レベルで明らかにすることである。全身麻酔からの覚醒過程におけるせん妄や興奮などの認知機能障害は、術後管理に悪影響を与えるだけでなく予後にも影響する可能性がある。そのため発症を防ぐことが大切であるが、現時点では確立した予防・治療法はない。残存する全身麻酔薬による作用が最も重要な原因の１つであるため、覚醒をより速やかにすることが有効な治療になると考えられる。全身麻酔薬は比較的に脂溶性が高いことから、局所麻酔薬中毒の有効な治療法である脂肪乳剤に全身麻酔からの覚醒、認知機能の回復を速める効果が予想されたため、覚醒過程での認知機能障害への対処法として脂肪乳剤の有効性を検討することが本研究の目的である。
まずは脂肪乳剤投与による揮発性麻酔薬セボフルラン全身麻酔からの覚醒促進効果を検討した。セボフルラン２％で全身麻酔したラットを、セボフルランの吸入をやめて脂肪乳剤または生理食塩水を投与すると、脂肪乳剤を投与した場合の方が正向反射回復までの時間が短くなった。正向反射の消失するセボフルラン濃度を調べ、その濃度による全身麻酔中に脂肪乳剤または生理食塩水を投与すると、脂肪乳剤を投与した方が正向反射の回復するラットの数が多かった。そして脳波記録では、セボフルラン２％による全身麻酔中に脂肪乳剤を投与すると、デルタ波の減少を認めた。このように脂肪乳剤がセボフルランによる全身麻酔からの覚醒促進効果を持つことがわかった。
脂肪乳剤にこのような効果を認めたため、最終年度に計画していた機序の検討に関する予備実験として、neuroblastoma-glioma hybrid cell lineを用いてパッチクランプ法により脂肪乳剤の全身麻酔薬の作用に対する影響について検討を開始した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにラットの行動実験および脳波解析から、脂肪乳剤はセボフルラン全身麻酔からの覚醒促進効果を持つことがわかった。これらの脂肪乳剤の効果について濃度（投与量）依存性そして効果発現時間および効果持続時間を引き続き検討するという段階である。脂肪乳剤にセボフルラン麻酔からの覚醒促進効果があることが分かったため、機序を調べる予備実験を開始した。本研究では、全身麻酔からの認知機能回復における脂肪乳剤の有効性について検討することを計画しており、そのため平成28年度にオペラント行動を評価するオペラント学習実験装置を購入・設置し、実験準備を進める予定であった。現在までの研究の進捗状況に少し遅れが生じており、平成28年度中の導入に至らなかった。さらにオペラント行動評価の研究には予想以上の人的支援と研究時間を必要することが分かったので、それらの調整が可能かも含めて研究計画・方法について検討していているため、認知機能を調べる研究の開始が遅れた。
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| Strategy for Future Research Activity |
これまでにラットの行動実験および脳波解析から、脂肪乳剤はセボフルラン全身麻酔からの覚醒促進効果を持つことがわかったため、次の段階として、これらの脂肪乳剤の効果について濃度（投与量）依存性そして効果発現時間および効果持続時間を引き続き検討する。脂肪乳剤にセボフルラン全身麻酔からの覚醒促進効果を認めたため、最終年度に計画していた機序の検討に関する予備実験として、neuroblastoma-glioma hybrid cell lineを用いてパッチクランプ法により脂肪乳剤の全身麻酔薬の作用に対する影響について検討を開始した。予備実験での結果をもとに、今後の神経細胞での実験を計画する。本研究では、全身麻酔からの認知機能回復における脂肪乳剤の有効性を検討することも計画しており、当初の予定では平成28年度にオペラント行動を評価するオペラント学習実験装置を購入・設置し、実験準備を進めることとしていた。しかしオペラント行動評価の研究を遂行するためには予想以上に人的支援と研究時間を必要することが分かったため、できるだけ早期に研究環境の調整および実験方法について熟考して今後の研究計画をたてる予定である。実験方法に関しては、環境の調整を行ってオペラント行動評価の研究を進められるか、より簡便な代替の実験方法（Y字迷路試験もしくは新規物体認識テストなど）に変更するか検討してすみやかに研究を進めたい。
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| Causes of Carryover |
本研究では、全身麻酔からの認知機能回復における脂肪乳剤の有効性について検討することを計画している。その研究を行うための実験機器（オペラント学習実験装置）を、平成28年度に購入・設置して実験準備を進める予定であった。現在までの研究の進捗に少し遅れが生じたことと、オペラント行動評価の研究を行う前に研究環境の調整および研究計画・方法の検討が必要となったことのため、平成28年度中の実験機器の導入に至らなかった。そのため次年度使用額が生じた。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
認知機能を評価する実験方法に関して、環境の調整を行ってオペラント行動評価の研究を進められるか、より簡便な代替の認知機能評価の実験方法（Y字迷路試験もしくは新規物体認識テストなど）を用いるか、早期に検討する。認知機能評価の実験に用いる方法を決定し、使用する機器を購入する予定である。行動実験に使用する試薬や消耗品、そして機序に関する研究に使用する試薬や消耗品を購入する費用としても使用する。
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Research Products
(2 results)
