2016 Fiscal Year Research-status Report
術中輸液による循環血液量増量および血行動態改善効果に関する予測モデルの確立
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16K10949
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小竹 良文 東邦大学, 医学部, 教授 (70195733)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 裕一 東邦大学, 医学部, 助教 (50349916)
豊田 大介 東邦大学, 医学部, 助教 (80408822)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 全身麻酔 / 目標指向型輸液管理 / 晶質液 / 膠質液 / 血行動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は患者37症例を対象として前向きにデータを収集し、細胞外液、人工膠質液および天然の膠質液であるアルブミンの負荷前と負荷30分後の循環血液量、全身血行動態の変化を比較することによってこれらの輸液製剤の容量効果、血行動態改善効果を比較した。解析可能な輸液負荷計126回で評価した結果、細胞外液による負荷は30分後には容量効果、血行動態のいずれも負荷前と有意差が認められなかったのに対して、人工膠質液およびアルブミンでは負荷30分後も有意な容量効果、血行動態改善効果が認められた。人工膠質液とアルブミンの間には有意差が認められなかった。この結果から手術中では膠質液が細胞外液より有意に大きな循環血液増加作用および循環動態改善作用を示すことが示唆された。これらの結果は、平成28年度米国麻酔科学会年次学術集会で発表し、さらに症例数を増やした上で、平成29年度日本麻酔科学会学術集会でも発表を予定している。また英文論文として投稿準備中である。 また上記研究のサブ解析として輸液負荷によって生じる一回心拍出量増加がいかに血圧に反映されるかについて検討を加えた。15%以上の一回深拍出量増加をみとめた50回の輸液負荷を対象として検討した結果、同時に平均血圧が10%以上増加した症例は68%であった。一回心拍出量と同時に平均血圧が増加した症例では負荷直前の一回心拍出量と脈圧の呼吸性変動の割合で示される動的動脈エラスタンスが有意に高値をとることが明らかとなった。この結果から輸液負荷前の動的動脈エラスタンスによって負荷後の血圧の反応も予測することが可能であることが示唆された。この結果は平成30年度の日本麻酔科学会学術集会で発表を予定しており、また英文論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、申請者所属施設において腹腔内悪性腫瘍根治術を受ける患者のうち心拍出量測定による血行動態看視の適応を有する患者37症例を対象として前向きにデータを収集し、輸液剤の差に由来する循環血液量、全身血行動態の変化を比較した。また、上記患者のうち動脈圧波形を記録した症例31症例において、硬膜外ブロックに由来する血圧低下の治療として用いられる輸液負荷の効果を一回心拍出量および観血的動脈圧の呼吸性変動から予測しうるかどうかに関しても検討を加えた。一方、血漿中cadherinおよびsyndecan-1濃度の定量による血管内皮細胞透過性の重要な調節因子である血管内皮細胞糖衣構成成分の評価に関しては測定用検体を集積中であり、研究期間後半において実際の定量を行う予定とした。これらの状況から本研究の進捗に関して「概ね順調に経過している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画のうち、細胞外液、人工膠質液、アルブミンを投与した際の循環血液増加効果の比較、輸液負荷による循環血液量増加効果,血行動態改善効果に関する説明因子の解析に関しては予定通り研究を推進する。一方、最近の報告では、本研究で対象としている患者群とほぼ同一の患者群において、過剰な交感神経活性化を回避しつつ血行動態目標を達成することが、予後改善に寄与しうることが報告されている(Ackland GL et al. Lancet Respir Dis 2015;3:33)。血行動態管理に用いる薬剤の多くが交感神経刺激作用を有することから、本研究の課題においては交感神経活性化の評価も重要な意義を有することが示唆される。このような背景に基づき、周術期に生じる血管透過性変化と血管内皮細胞糖衣の変化の関係の解析に先行して、交感神経活性化の定量化を含めた循環血液量増加効果,血行動態改善効果に関する説明因子の解析を行うのが妥当であると判断した。
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Causes of Carryover |
交感神経活性化の定量化を含めた循環血液量増加効果,血行動態改善効果に関する説明因子の解析を実施するに当たって、既報と同様に心拍変動解析によって交感神経活性化の定量を行うのが妥当と考えた。心拍変動解析に用いるプログラムおよびデータ記録用装置を購入するために、本年度支出予定であった研究費の一部を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記備品購入および血管透過性変化と血管内皮細胞糖衣の変化の関係の解析に関する研究の準備のため、次年度使用額、本年度使用額に加えて次年度予算の前倒しが必要であり、すでに請求を済ませた。
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Research Products
(3 results)