2018 Fiscal Year Research-status Report
術後痛に対する全身麻酔薬およびTRPチャネルの関与の検討
Project/Area Number |
16K10964
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辛島 裕士 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80380434)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩川 浩輝 九州大学, 大学病院, 助教 (30572490) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | TRPA1 / 麻酔薬 / 痛み |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPA1は一次求心性侵害受容線維終末だけでなく中枢にも発現がみられ、痛みおよび炎症に関係するチャネルとして注目されている。TRPA1の特徴は、多様な外因性の刺激物質に反応するだけでなく、内因性の物質、特に炎症に関係する物質によっても活性化または修飾されることである。そして、これらの特徴によりTRPA1は炎症性疼痛に関係すると考えられている。 手術侵襲は大なり小なり生体に対して影響を与え、痛みだけでなく炎症を惹起する。そして多くの症例では手術からの回復に向かって痛みは収束していく。しかし、一部の症例では痛みが慢性化することが知られている。 手術侵襲に対する防御の一つは麻酔である。全身麻酔では、患者は麻酔薬により鎮静状態におかれ、術中には痛みのない状態が作られる。しかし近年、防御の一部である麻酔薬も術後の痛みに関連する可能性が考えられるようになった。そこで、本研究では、術後痛、特にヒトでの術後慢性痛に関係するTRPチャネル、特にTRPA1の影響を検討するのが目的である。しかし、平成29年度までに、本研究で使用予定の吸入麻酔薬イソフルランおよび静脈麻酔薬プロポフォールがいずれもヒトと齧歯類のTRPA1では反応が異なることを明らかになった。また、もう一つの候補であった吸入麻酔薬セボフルランの反応は非常に小さいものであることが分かった。そこで、平成30年度は、これ以外の麻酔関連薬で検討を行うこととした。しかし、TRPA1を介する術後痛に関係すると考えられる反応が得られるものはなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的はあくまでヒトを対象とした麻酔関連薬剤のTRPA1に対する影響を考えた研究デザインであった。しかし、上記の通り、本研究で使用予定の吸入麻酔薬イソフルランおよび静脈麻酔薬プロポフォールではTRPA1に関しては齧歯類とヒトとでは反応が異なることにより方向転換をさぜるを得なくなった。これら以外の麻酔関連薬剤に関してもTRPA1の反応は得られていないため研究方針変更している。
|
Strategy for Future Research Activity |
TRPV1はカプサイシンレセプターとして発見され、TRPチャネル研究発展のきっかけとなったチャネルである。TRPV1はTRPA1同様に一次求心性侵害受容線維終末だけでなく中枢にも発現がみられ、痛みおよび炎症に関係するチャネルとして注目されている。そして、その発現はTRPA1よりも多い。麻酔薬とTRPV1の関連に関する報告もあるが、急性痛から慢性痛への移行に関して検討を行った報告はない。静脈麻酔薬プロポフォールがTRPV1を濃度依存性に活性化することを確認したので、この組み合わせで今後を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
平成30年度は当麻酔・蘇生学教室の教授が平成29年度末を退任した関係上、准教授である申請者が教室運営を任されることになった。新しい教授の赴任が平成31年度4月であったため、その間、臨床業務やそれ以外の教授代行としての業務のため、研究に十分な時間を割くことが不可能であった。
|