2016 Fiscal Year Research-status Report
自己血液製剤の輸血関連有害反応への関与が想定される分子薬理学的機構の解析
Project/Area Number |
16K10979
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
東 俊晴 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (60284197)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自己血輸血 / 温度感受性受容体 / 白血球 / 単球 / マイクロパーティクル / アポトーシス / 組織因子 / 凝固活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
同種血輸血は周術期患者の生命予後を悪化させると報告されており,血液製剤に含まれる白血球の関与が指摘されている.一方,周術期に使用される自己血液製剤に混入している白血球の有害作用について詳細な検討はなされていない.本研究は「顆粒球や単球・マクロファージなどによる自然免疫を介する炎症性病態が輸血に起因する有害反応を惹起する」との仮説を検証することを目的としている. 研究初年度である平成28年度には,当該仮説の分子薬理学的機構を解析する目的で,単球系細胞株(THP-1)が低温保存の状態から体温まで急速に加温された際に起こる変化をフローサイトメトリーを用いて観察した.輸血用赤血球製剤を保存する温度である低温(4℃)で細胞浮遊液を90分間保温した後,37℃まで急速に加温し,60分間保温を継続した。対照となる細胞浮遊液は,室温(25℃)で90分間保温した後,37℃に加温した。 これらの細胞浮遊液をフローサイトメトリーで解析したところ,低温保存した単球系細胞浮遊液は,対照と比較して,組織因子を発現し凝固活性を有する小胞(procoagulant vesicle, PV)を有意に多く含有していた。また低温保存した細胞浮遊液では,ミトコンドリア膜電位が低下し,早期アポトーシス指示薬(Annexin V)に陽性に染色されるアポトーシス細胞が有意に多く発生していた。 上記の実験から低温保存された血液製剤では,単球系細胞のアポトーシスが進行し,PVが発生することが確認された。通常,自己血を保存する際,白血球除去は行われていない。血液製剤中の白血球アポトーシスの進行が引き起こすその他の変化についても解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,研究初年度において,研究連携施設の総合病院で過去に行われた脊椎手術に際して自己血輸血を受けた患者と輸血されなかった患者の輸血関連有害事象の発生頻度比較を行う予定であった。また,低温保存した血液中で発現が増加する遺伝子について網羅的に解析を行う予定であった。 研究代表者の施設で予期せぬ人事異動が発生し,本研究以外のエフォートが増大したため,倫理審査等の手続きが遅れ,上記の後方視的臨床観察研究や網羅的遺伝子解析などの進行がやや遅れる結果となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に入り,研究代表者の所属する施設の人員不足は解消されている。遅延している上記の後方視的臨床観察研究は倫理審査待ちの状態であり,網羅的遺伝子解析についても準備を進めている。研究事業の期間内にすべての研究計画は終了可能と考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度に代表研究者が所属する施設で予定外の人事異動が発生し,代表研究者の本研究課題以外のエフォートが急増したため,当該年度に計画されていた,保存血液の網羅的遺伝子解析研究の進行が遅延している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は上記施設の人員不足が解消されたため,遅延した研究は平成29年度,30年度に施行可能であると考えている。
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Research Products
(10 results)