2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性痛(脳機能障害性)の中枢メカニズムをMRIで解明する研究
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16K10980
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
荻野 祐一 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (20420094)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳 / MRI / fMRI / 痛み / 非定型 / 顎関節症 / 口腔顔面痛 / 麻酔 |
Outline of Annual Research Achievements |
依然、多くの慢性痛における器質的原因は不明である。近年の脳科学研究成果により、脳形態と脳機能ネットワークは、感情や行動、学習、環境から影響を受け常に変化していることが明らかになってきた。慢性痛の病態も、大脳皮質-皮質ネットワーク・皮質-皮質下ネットワークの変容、機能の変容、形態の変性、軸索損傷が関わっている。その病的な可塑的変化を、一言で包括する新概念がcentral dysfunctional pain(脳機能障害性痛:筆者訳)である。 器質的原因が不明の痛みは「特発性」あるいは「非定型的」、「心因性」痛として、臨床では一括りにしてしまうことが多い。実際の臨床において、慢性痛の機序は、侵害受容性から神経障害性、心因性まで複雑に絡み合い、さらに社会的要因も大きく影響するため、その実体を把握することは難しい。 しかし昨今、この三区分(侵害性・神経障害性・心因性)は「器質的原因のない痛み」を説明するのに適切とは言い難くなってきている。それに伴い「中枢機能不全に起因する痛み(central dysfunctional pain: 脳機能障害性痛)は、従来の痛みの三区分を包括する、あるいは、語弊のある「心因性」に替わる新たな概念として確立しつつある。 慢性痛患者には家庭、仕事、収入などの社会的背景が密接に絡み、社会的な繋がり、心のあり方が痛みに大きく関わっていることは間違いない。本年度は、そうした非定型痛みの代表として、非定型顎関節痛、口腔顔面痛患者を対象に、MRI脳機能/構造画像を取得してきた。また年齢-性別-教育歴のマッチした健康被験者群のMRIも同様に取得し、subanalysisとして、看護師の職業特異的な、共感能力のModulationを明らかにし、現在投稿準備中となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調だが、口腔顔面領域の非特異的痛みは、非特異的歯痛を含めて、持続性特発性顔面痛(persistent idiopathic facial pain: PIFP)として分類されている(顔面痛が歯に限局したものが非定型歯痛だという解釈)ことが判明し、計画変更を実施中。こうしたPIFP患者と舌痛症、非特異的咬合不全は、長らく「心因性」として扱われ、患者も多数の医療機関を受診することが多かったが、しかし、近年の脳科学研究の発展により、心因性と言うよりむしろ「脳機能性」と言うべき病態が、強く示唆されているので、線維筋痛症と合わせたFunctional Somatic Syndromeのような、大くくりの病態が見えてきた。従って、それらをbulkとして、MRIを用いて客観視、画像化できるよう、試験の計画の一部を見直している。また、予期せぬ外来担当者の人事異動があり、後任者との意思疎通と研究の意図を説明し、Communicationを密に計っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上に記したように、研究遂行のため、粛々とDataを収集し、科学的呈示を行っていく。同時に、診察経験と治療経験が豊富になるよう、本邦における当分野を代表する臨床的第一人者である医師の指導を仰いでいる。痛みやその抑制・増強の脳神経基盤に関する実績と、高度な脳画像解析と高次脳機能解明についての実績を基盤に、非定型痛の治療の縦断的観察により、mPFCと帯状回の構造と機能的繋がりが正常化し、病態はPFCの機能異常にあること(仮説)を証明していく。
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Research Products
(7 results)