2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性痛(脳機能障害性)の中枢メカニズムをMRIで解明する研究
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16K10980
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
荻野 祐一 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (20420094)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中枢機能障害性疼痛 / 痛み / 非器質的疼痛 / 慢性痛 / 抗うつ薬 / MRI / 脳機能 / 脳構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
器質的原因の分からない痛み、画像検査(X線検査やCT、MRI、超音波等)で異常が認められない場合に、従来「心因性」と一括りにされることが多かった。しかし、臨床における慢性痛の機序は、器質的な痛み(侵害受容性から神経障害性)から非器質的な痛み(心因性)が絡み合い、さらに生物・社会・心理・行動要因も大きく影響する。器質的原因のない痛みを、単に「心因性」と十把一絡げに説明するのは適切ではない。また、病態生理や科学的根拠に基づいたものでもない。 本申請研究は、非定型口腔顔面痛に対象疾患を絞り、主観的評価との多変量相関解析により、抑うつや不安、痛みについての破局的思考、生活の質などの認知機能との脳活動相関まで明らかにするところは、特色であり、独創的な点として挙げていた。顎関節症痛のmeta-analysis(PLoS One 2014; Lin CS)では、前頭葉(prefrontal cortex)と基底核(報酬系領域)の萎縮が報告されており、本研究の仮説は「アンケート項目:PCS (Pain Catastrophizing Scale: 痛みの破局化スケール)、FiRST(線維筋痛症迅速検出票)と、脳帯状回、前頭葉、基底核の脳活動相関が強く、前頭葉と基底核の機能的結合低下が見られる」であった。 これまで2年間のdata収集における中間解析として、患者群とコントロール群の比較において、脳MRI画像によるVoxcel-based morphometry (VBM)解析を行ってきた。結果、両者の差は認められなかった。今後、統計閾値を下げて検討を進めると共に、引き続き患者の募集を行っている。また、サブアナリシスとして行った、共感スケール(取得アンケートの一部)に有意差が認められ、これについても検討を行い、我々医療関係者に特異的な共感的態度の脳構造・機能の表出を見出しており、論文投稿中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究デザインは、介入のない縦断的自然観察研究(Longitudinal natural observational experiment without intervention)であるため、Data収集に時間が必要。すなわち、当外来において、患者の自発的な同意を得た上で患者登録を行い、縦断的・観察的に研究を実施する。当放射線部にて、アンケート取得とMRI撮影を実施し(MRI撮影所要時間は30分間、刺激なし)、治療開始後、月単位の時間軸で、脳内神経変性が惹起されると考えられるので、3ヵ月後に同様の過程を実施し、データ集積を行うこととなり、一人の被験者に約半年トラッキングすることになるため。 また、一般に脳内神経変性の解析は、従来の個々領域における変化に加え、大脳皮質神経回路における機能的結合(connectivity)解析の必要性が増しており、本申請研究は、臨床の観察的研究デザインであるものの、縦断的な解析を試みることにより、非定型口腔顔面痛の脳構造機能動態を明らかにしようとするプロジェクトであり、「非定型口腔顔面痛の病態は前頭前野(Prefrontal cortex: PFC)の異常興奮にあり、治療の縦断的観察により、PFCと帯状回の機能的結合性の正常化(鎮静化)が見られる」ことを仮説検証する研究デザインであるため、概ね順調と言えるが、予想したとおりの結果が出るかどうかはData次第である。サブアナリシスとして施行した共感的態度の表出に関わる神経基盤の評価は、医療労働者において、報酬系と右内側前頭~外側前頭領域の間の機能的結合の減弱が見られ、主要な結果については論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究「顎関節症の中枢メカニズムを脳画像解析で調べる研究」(UMIN000017355)は、2015年度から開始し、現在データ解析中であるが、共同研究者は、痛みと脳画像解析と脳神経基盤に関する実績を有し、前々研究「慢性疼痛の多面的評価システムの開発と客観的評価法の確立に対する研究(UMIN000010537)」では、慢性痛患者の脳構造と神経障害性痛性向が相関を示した (Brain morphological alternation in chronic pain patients with neuropathic characteristics. Molecular Pain 2016; 12: 1-7) ので、順調に推進できるものと信じる。さらに発展させた課題として、倫理性の担保および被験者の安全性確保のために、臨床試験審査委員会(倫理委員会)の審査を受け、UMIN登録済みであり、そして(UMIN000029226)、症例登録を開始する段階である研究「口腔顔面領域における非定型痛みの脳画像解析による縦断的観察研究」もスタートする予定である。 痛みは、感覚・感情・認知そして社会的要素を伴った苦悩体験である。脳のもつ可塑性により、長引く痛みは脳構造に影響を与える。脳可塑性は脳磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging: MRI)のVoxel-based morphometry (VBM)解析によって捉えることができる。「痛みの悪循環」に陥った慢性痛の本態は、脳構造の可塑性変化にあると想定される一方、認知行動療法は痛みに対する環境を是正し、認知と行動を再構築することが、その治療機序である。痛みと脳可塑性は、画像解析技術の発展により、今後より詳細に、多角的に解明されていくと考えられる。
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Causes of Carryover |
昨年度の予定していた被験者数に達しなかった影響があり(これは公募によるものであるため、被験者のenrollingには募集環境が多分に影響するものだからと推測される)人件費が予定に達しなかった理由による。今年度が最終年度であり、Data結果の国際学会発表、論文作成費用、英文校正費、交通費が必要になってくる見込みである。従って相応の結果を出すために相応の経費が必要となる予定であるので、次年度使用額が生じてしまったことを反省材料として、今年度は予算に組み込んでいる。
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Research Products
(4 results)