2017 Fiscal Year Research-status Report
脾臓由来M1型及びM2型単球系細胞を介した神経障害性疼痛発症のメカニズム解明
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16K10984
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
柴崎 雅志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20405319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天谷 文昌 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60347466)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / マイクログリア / M1型単球系細胞 / M2型単球系細胞 / 脾臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛のメカニズムに脾臓由来単球系細胞が関与しているかどうかを神経障害性疼痛の動物モデルのSNI(Spared Nerve Injury)モデルに脾臓摘出術の有無を加え、検討した。von Frey Filamentを用いた機械的刺激に対する痛覚閾値の検討では、SNIモデル単独群ではモデル作成後、1日目より痛覚閾値の有意な低下が認められた。この痛覚閾値の低下は傷害側、非傷害側ともに認められるが、非傷害側に対し、傷害側の方が痛覚閾値の低下が著しい。SNIモデルに脾臓摘出術を加えた群でも傷害側、非傷害側ともに痛覚閾値の低下を認めるが、SNIモデル単独群の非傷害側に比べ、SNIモデルに脾臓摘出を加えた群での非傷害側の痛覚閾値が有意に低下している。免疫組織染色では、SNIモデル単独群ではモデル作成後2-3日目より神経損傷部位に一致して、脊髄にIba-1陽性細胞の集積が認められる。一方、SNIモデルに脾臓摘出術を加えた群ではSNIモデル単独群よりやや遅れたモデル作成後4-5日目より神経損傷部位に一致して、脊髄にIba-1陽性細胞の集積が認められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SNIモデルに脾臓摘出術を加えた群では、SNIモデル単独群に比べ、傷害側の痛覚閾値の低下が抑制されると予想していた。しかしながら、仮説に反し、SNIモデル単独群と脾臓摘出術を加えた群では傷害側の痛覚閾値に有意な差はなかった。一方で、非傷害側の痛覚閾値について検討した結果、SNIモデル単独群よりSNIモデルに脾臓摘出術を加えた群では有意に痛覚閾値の低下が認められた。そのメカニズムがどのようになっているのかを調査するため、当初の計画を変更する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSNIモデルに脾臓摘出術を加えた群の非傷害側の痛覚閾値の低下についてのメカニズムを解明するため、非傷害側の坐骨神経にtrans-synaptic tracerを用いた実験を行い、脊髄内での介在ニューロンを介した伝導経路について調査する。非傷害側からの伝導経路と傷害側の神経障害部位に一致した領域のIba-1陽性細胞が集積している脊髄の領域との位置関係を調査する。 またアストロサイトなどの他のグリア細胞の表面抗原の脊髄内での発現を調査し、神経損傷後の脊髄内での単球系細胞の役割について調査する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では神経障害性疼痛モデルに脾臓摘出術を加えた群では神経障害性疼痛モデル単独群と比較し、機械刺激に対する痛覚過敏が抑制されると予想していた。しかしながら、神経障害性疼痛モデルに脾臓摘出術を加えた群と神経障害性疼痛モデル単独群では傷害側の機械刺激に対する痛覚閾値に差はなく、非傷害側において神経障害性疼痛モデルに脾臓摘出術を加えた群で有意に痛覚閾値の低下を認めた。そのため、本年度は非傷害側の痛覚伝導路が傷害側脊髄内での通過する部位を特定する実験を予定している。具体的には非傷害側の坐骨神経内にtrans synaptic tracerを注入し、脊髄内での通過部位を免疫組織染色法により経時的に調査し、tracerの部位が傷害側の神経傷害部位に一致するか否かを調査する予定である。また脾臓摘出術を加えることで脊髄内での興奮性介在ニューロンや抑制性介在ニューロンに変化が生じるか否かも検討する予定である。
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