2021 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア障害が関与する対称性遠位末梢神経障害の治療法の検討
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16K10985
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
下山 恵美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10206253)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 化学療法惹起性末梢神経障害 / パクリタキセル / 表皮内神経線維 / ミトコンドリア障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにマウスのパクリタキセル惹起性末梢神経障害モデルにおけて足底皮膚の表皮内神経線維が減少することを示した。モデルの作成はパクリタキセル20㎎/㎏を1日おきに7回繰り返 し腹腔内投与し、投与開始4週目で皮膚を採取した。同じスケジュールで生理食塩水を投与した対照群と比較した。表皮内神経線維の評価には以前報告したオキ サリプラチン惹起性末梢神経障害モデルマウスと同様に抗PGP9.5抗体を用い、蛍光免疫染色法を用いて評価した。パクリタキセル惹起性末梢神経障害モデルでは オキサリプラチン惹起性末梢神経障害モデルと同様に対照群と比べ表皮内神経線維が有意に減少していた。今回、この表皮内神経線維の減少が、ミトコンドリア障害を予防することが示されているSSペプチドであるSS-20で予防できるかを検討するため、パクリタキセル投与開始前日から浸透圧ポンプによりSS-20もしくは生食を持続的に投与し、投与開始4週目で皮膚を採取した。SS-20を持続投与した動物は生理食塩水を持続投与した動物に比べ、表皮内神経線維の数が多かった。これはSS-20が本モデルにおける足底の表皮内神経線維の減少を予防できることを示し、これまでにSS-20の持続投与が本モデルで惹起されるアロディニアを低減されるという結果と合わせると、SS-20はマウスにおいてパクリタキセル惹起性末梢神経障害を予防できることが示された。このことは、オキサリプラチン惹起性末梢神経障害と同様にパクリタキセル惹起性末梢神経障害にミトコンドリア障害が関与していることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響により実質的な研究活動が大きく制限されたため
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Strategy for Future Research Activity |
がん治療に用いられる化学療法薬による重大な副作用である末梢神経障害の予防法は確立されておらず、その開発が急がれる。SSペプチドはミトコンドリア障害を予防することが多様な動物モデルで示されており、本課題ではこれまでにSS-20がパクリタキセル惹起性末梢神経障害モデルに対し、行動学的検討により末梢神経障害の予防効果があるを示した。今回これを形態学的検討で裏付ける検討をおこなった。今後、形態学的検討をさらに進め、SSペプチドの化学療法惹起性末梢神経障害の予防における有効性を考察する。これらの成果をまとめ、学会報告や論文作成を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により実質的な研究活動が大きく制限されたため、実験計画が遅れた。次年度使用額は、物品費と学会発表・論文作成の費用に用いる予定である。
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