2016 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後疼痛の発症機序における HMGB1-RAGE 系の関与
Project/Area Number |
16K10988
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
徳山 尚吾 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70225358)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中本 賀寿夫 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30432636)
原田 慎一 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (60633443)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 脳虚血 / 疼痛 / HMGB1 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中後疼痛 (central post-stroke pain: CPSP) は脳卒中後に生じる難治性の合併症として知られている。最近、核内 DNA タンパク質である high mobility group box-1 (HMGB1) が神経障害性疼痛の発症に関わる因子であることが報告されてきている。そこで我々は、CPSP の発症機序に対する HMGB1 の関与について検討した。5 週齢の ddY 系雄性マウスを用いて、全脳虚血モデル (bilateral carotid artery occulusion: BCAO) を作製した。また、BCAO 3 日後のマウスの後肢の機械的刺激に対する逃避行動回数の変化をvon Frey test を用い、TLR4 阻害剤の脊髄腔内投与または、抗 HMGB1 抗体静脈内投与後、疼痛評価を行った。抗 HMGB1 抗体静脈内投与または、TLR4 阻害剤の脊髄腔内投与後のグリア細胞の変化は、免疫染色法を用いて検討した。BCAO 3 日後における有意な逃避行動回数の増加は、TLR4 阻害剤の脊髄腔内投与または抗 HMGB1 抗体の静脈内投与によって有意に減少した。一方、BCAO 後の脊髄において、TLR4 の発現変化は認められなかった。BCAO 後に脊髄グリア細胞の活性化が認められたものの、抗 HMGB1 抗体静脈内投与によってミクログリアは抑制され、アストロサイトに影響は見られなかった。さらに、TLR4 阻害剤の脊髄腔内投与によってミクログリアは抑制された。以上の結果から脊髄の HMGB1 によって活性化されるミクログリアと TLR4 シグナルの連動が、CPSP の発症機序の一部に関与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画通り、おおむね順調に研究が進み、現在その内容を論文投稿中である。また、脳卒中後疼痛に対するHMGB1-RAGEシグナルの関与に関する論文は、Brain Res. 誌に受理された。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.網羅的タンパク質発現解析によるCPSPの発現関連因子の探索:脳虚血モデルマウスにおいて、脳、脊髄レベルでの NMDA 受容体、AMPA 受容体、ATP受容体、カルシウムイオンチャネルおよびナトリウムイオンチャネルなどの興奮性神経入力に関連する各種分子あるいはGABA受容体、グリシン受容体、オピオイド受容体、クロライドイオンチャネル、カリウムイオンチャネルなどの抑制性神経入力関連する各種分子の発現変化について、疼痛発症過程における脳・脊髄・末梢組織のタンパク質発現の網羅的プロテオーム解析を行う。 2.標的分子の欠損が疼痛発症に及ぼす影響(in vivo 解析):1. において特定した疼痛関連分子に対するノックダウンマウスを RNAi 法などによって作製し、それが脳虚血モデル動物における疼痛発症に及ぼす影響について行動薬理学的に解析する。 3.脳卒中疼痛発現における脳・脊髄におけるグリア細胞と炎症性サイトカインの関与:脳虚血モデルマウスにおいて、脳、脊髄レベルでのグリア細胞(アストロサイト、ミクログリア)の活性変化を組織化学的に解析する。さらに、グリア細胞の活性化に関与することが知られるATP 受容体、ケモカイン受容体の阻害剤を用い、虚血ストレス負荷後のグリア細胞活性化制御ならびに、その後の疼痛発現へ及ぼす影響について解析する。さらに、グリア細胞の活性化により誘導される炎症性サイトカインの発現変動を解析するとともに、それらの阻害剤を用いて、疼痛発現への影響についても解析を加える。
|
Research Products
(14 results)